「健康のためにマラソンを始めたのに、膝が痛くなってしまった…」そんな悩みを抱えるマラソン初心者の方は少なくありません。憧れの大会出場や、日々の健康習慣としてランニングを楽しみたいという気持ちとは裏腹に、膝の痛みが続くと走ること自体が億劫になってしまいますよね。特にマラソン初心者の場合、まだ体が長距離を走ることに慣れていないため、膝に痛みが出やすい傾向があります。
しかし、なぜ膝が痛くなるのか、その原因を正しく理解し、適切な対処と予防を行うことで、痛みは十分に改善できます。この記事では、マラソン初心者が抱えがちな膝の痛みに焦点を当て、その主な原因から、痛くなったときにすぐできる応急処置、そして痛みを再発させないための予防策まで、やさしく、そして詳しく解説していきます。正しい知識を身につけて、膝の痛みを克服し、楽しくランニングを続けていきましょう。
マラソン初心者に多い膝の痛み、その原因とは?

走り始めるとズキズキと痛む膝。その痛みには、いくつかの代表的な原因が考えられます。特に初心者のうちは、体の準備が整っていなかったり、無理なトレーニングを重ねてしまったりすることで、膝に負担がかかりがちです。ここでは、マラソン初心者を悩ませる膝の痛みの主な原因について、詳しく見ていきましょう。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)のメカニズム
ランニングによる膝の痛みで最も代表的なのが「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」、通称「ランナー膝」です。 これは、太ももの外側にある長い靭帯「腸脛靭帯」が、膝の外側の骨(大腿骨外側上顆)と繰り返し擦れることで炎症を起こし、痛みが生じる症状です。 特に、膝の曲げ伸ばしを繰り返すランニング動作は、この摩擦を引き起こしやすくなります。
初心者の場合、筋力がまだ十分でなかったり、ランニングフォームが安定していなかったりするため、着地時の衝撃がうまく吸収されず、腸脛靭帯に過度なストレスがかかりがちです。硬いアスファルトの上を走ることや、下り坂でのランニングも、症状を悪化させる要因となります。 はじめはランニング中に軽い痛みを感じる程度でも、放置すると痛みが強まり、歩行や階段の上り下りといった日常生活にも支障をきたすことがあるため、早めの対処が重要です。
鵞足炎(がそくえん)の症状と原因
膝の内側、お皿の下から5〜7cmほど下の部分が痛む場合は、「鵞足炎(がそくえん)」の可能性があります。 この「鵞足」と呼ばれる場所には、縫工筋(ほうこうきん)、薄筋(はっきん)、半腱様筋(はんけんようきん)という3つの筋肉の腱が、ガチョウの足のように集まって付着しています。
鵞足炎は、これらの筋肉に繰り返し負担がかかることで、腱の付着部分や、その下にある滑液包(かつえきほう)というクッションの役割を果たす組織に炎症が起きて痛みを生じる疾患です。 特に、ランニングやサッカーなど膝の曲げ伸ばしが多いスポーツで発症しやすく、運動時に膝が内側に入ってしまう「ニーイン」というフォームの癖がある人は注意が必要です。 また、急に練習量を増やしたり、自分の足に合わないシューズを履いていたりすることも、発症のリスクを高めます。 症状としては、運動時の痛みのほか、患部を押すと痛む(圧痛)、熱っぽさや腫れが見られることもあります。
筋力不足や柔軟性の低下が引き起こす問題
ランニングは全身運動であり、特に下半身の筋力と柔軟性が重要になります。マラソン初心者の場合、ランニングに必要な筋力がまだ十分に備わっていないことが多く、これが膝の痛みの大きな原因となります。
例えば、太ももの前側にある「大腿四頭筋」は、着地時の衝撃を吸収し、膝関節を安定させる重要な役割を担っています。 この筋肉が弱いと、衝撃を十分に吸収しきれず、膝の関節や靭帯に直接的な負担がかかってしまいます。 また、お尻の筋肉(大臀筋)や太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)も、体を前に進める推進力を生み出し、膝への負担を軽減するのに不可欠です。
さらに、筋肉の柔軟性の低下も問題です。 特に股関節周りやお尻、太ももの筋肉が硬いと、足の動きが制限され、不自然なランニングフォームになりがちです。 これにより、膝にねじれのストレスがかかったり、特定の部位に負担が集中したりして、痛みにつながるのです。
オーバートレーニング(走りすぎ)の危険性
「早く走れるようになりたい」「もっと長い距離を走りたい」という一心で、トレーニングを頑張りすぎてしまうのも、マラソン初心者にありがちな膝痛の原因です。 これは「オーバーユース(使いすぎ)」とも呼ばれ、体の回復が追いつかないほどの負荷をかけ続けることで、筋肉や腱、関節に微細な損傷が蓄積し、炎症や痛みを引き起こします。
初心者の体は、まだ長時間のランニングによる衝撃や負荷に慣れていません。 それにもかかわらず、急に走行距離を伸ばしたり、毎日のように走り続けたりすると、膝周りの組織が悲鳴をあげてしまいます。筋肉痛が治らないうちに次のトレーニングを行うことも、疲労の蓄積につながり、怪我のリスクを高めます。
トレーニング計画には、体を休ませる「休養日」を設けることが非常に重要です。適切な休息をとることで、傷ついた筋組織が修復・強化され、体はより強い負荷に適応できるようになります。焦らず、自分の体の声に耳を傾けながら、段階的に練習量を増やしていくことが、長く楽しく走り続けるための秘訣です。
突然の膝の痛みに!マラソン初心者ができる応急処置とセルフケア

ランニング中や走り終わった後に、突然膝に痛みを感じたら、まずは無理をせず、適切な応急処置を行うことが大切です。初期段階で正しく対処することで、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることができます。ここでは、痛みの直後からできる応急処置と、少し症状が落ち着いてからのセルフケアについて解説します。
基本はRICE処置!痛んだ直後の応急手当
運動中に痛みが発生した場合の応急処置の基本は、「RICE(ライス)処置」として知られています。これは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つの処置の頭文字をとったものです。
まず、痛みを感じたらすぐにランニングを中止し、安静(Rest)にすることが最も重要です。 無理して走り続けると、症状を悪化させるだけです。 次に、患部を冷やします(Ice)。氷のうやビニール袋に入れた氷をタオルで包み、痛みのある部分に15〜20分程度あてて冷やしましょう。 アイシングには、炎症を抑え、痛みを和らげる効果があります。これを1日に数回繰り返します。
圧迫(Compression)は、弾性包帯やテーピングで患部を軽く圧迫し、内出血や腫れを抑えるための処置です。ただし、強く巻きすぎると血行が悪くなるので注意が必要です。最後に、挙上(Elevation)は、横になる際にクッションや台などを使って、患部を心臓より高い位置に保つことです。これにより、腫れの軽減を促します。
痛みが少し和らいだら始めたいストレッチ
急な痛みが少し和らぎ、安静にしていても痛みを感じなくなったら、無理のない範囲でストレッチを始めましょう。 筋肉の柔軟性を高めることで、膝への負担を軽減し、回復を助けることができます。
特に重点的に行いたいのが、膝の痛みの原因となりやすい太ももの前側(大腿四頭筋)、外側(腸脛靭帯周り)、裏側(ハムストリングス)、そしてお尻の筋肉のストレッチです。 例えば、腸脛靭帯炎(ランナー膝)の場合は、太ももの外側やお尻の筋肉を伸ばすストレッチが効果的です。 鵞足炎の場合は、太ももの裏側や内側の筋肉をゆっくりと伸ばしましょう。
ストレッチを行う際は、反動をつけず、ゆっくりと息を吐きながら「痛気持ちいい」と感じる程度に伸ばすのがポイントです。一つのポーズで20〜30秒キープし、それを数セット繰り返します。痛みを感じる場合は、すぐに中止してください。
膝周りの筋肉をほぐすマッサージ方法
ストレッチと合わせて、膝周りの筋肉を優しくマッサージすることも、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげるのに役立ちます。 特に、張っていると感じる部分や、痛みのある場所の周りの筋肉をほぐしていきましょう。
例えば、ランナー膝の場合は、太ももの外側を手のひら全体で圧迫するように、膝からお尻の付け根に向かってゆっくりとマッサージします。 鵞足炎の場合は、膝の内側周辺の筋肉を指の腹で優しく揉みほぐします。
マッサージを行う際は、お風呂上がりなど体が温まっている時に行うとより効果的です。マッサージオイルやクリームを使うと、肌への摩擦を減らすことができます。ストレッチ同様、強い痛みを感じる場合は無理に行わず、専門家のアドバイスを求めるようにしましょう。
医療機関を受診するタイミングと目安
セルフケアを行っても痛みが改善しない場合や、痛みが強い場合、腫れや熱感がひどい場合、また歩行が困難な場合は、自己判断で済ませずに整形外科などの医療機関を受診しましょう。
特に、「2週間以上痛みが続く」「日常生活に支障が出ている」「安静にしていても痛む」といった場合は、早めに専門医に相談することが重要です。 医師の診察を受けることで、痛みの正確な原因を特定し、適切な治療を受けることができます。 治療法は症状によって様々ですが、薬物療法、理学療法士によるリハビリテーション、場合によっては注射などが行われます。
放置することで症状が慢性化し、ランニングを長期間休まなければならなくなる可能性もあります。 早期に適切な診断と治療を受けることが、結果的に早期の回復とランニングへの復帰につながります。
【予防が肝心】マラソンで膝が痛いと感じる前に初心者がすべきこと

膝の痛みは、一度発症してしまうと回復に時間がかかることがあります。だからこそ、痛みが出てから対処するのではなく、日頃から痛みを「予防」する意識を持つことが非常に重要です。特にランニングに体が慣れていない初心者は、予防策を習慣にすることで、怪我のリスクを大幅に減らすことができます。
ウォーミングアップとクールダウンの重要性
トレーニングの前後に行うウォーミングアップとクールダウンは、怪我予防の基本中の基本です。 これらを面倒くさがらずに丁寧に行うことが、膝を守る上で欠かせません。
ウォーミングアップは、本格的なランニングを始める前に心と体の準備を整える役割があります。 まずはウォーキングや軽いジョギングで体を温め、心拍数を徐々に上げて血行を促進します。 その後、動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)を取り入れ、股関節や肩甲骨周りなど、ランニングで使う関節や筋肉を大きく動かして可動域を広げていきましょう。 これにより、筋肉がしなやかになり、急な動きにも対応できるようになります。
一方、クールダウンは、トレーニングで興奮した体を徐々に平常の状態に戻していくための整理運動です。 ランニングの最後は急に止まらず、ゆっくりとしたジョギングからウォーキングへとペースを落としていきます。その後、静的ストレッチ(スタティックストレッチ)で、特に使った太ももやお尻、ふくらはぎなどの筋肉をゆっくりと伸ばし、疲労回復を促しましょう。
膝に負担をかけないための筋力トレーニング
ランニングによる着地の衝撃は、体重の約3〜4倍とも言われています。 この衝撃から膝を守るためには、膝周りを支える筋肉を鍛えることが不可欠です。 筋力トレーニングを日々の習慣に取り入れ、膝への負担を軽減しましょう。
特に重要なのは、太ももの前側(大腿四頭筋)、裏側(ハムストリングス)、お尻(大臀筋)の筋肉です。 スクワットは、これらの筋肉をバランスよく鍛えることができる非常に効果的なトレーニングです。 膝がつま先より前に出ないように意識しながら、お尻を後ろに引くようにゆっくりと腰を落としましょう。
また、ランジもおすすめです。 片足を大きく前に踏み出し、両膝を曲げて腰を落とす動作で、お尻や太ももに効果的に刺激を与えることができます。体幹(腹筋・背筋)を鍛えることも、ランニング中の姿勢を安定させ、膝への負担を減らすことにつながります。 これらのトレーニングを週に2〜3回、無理のない範囲で継続することが大切です。
練習計画の見直しと休養日の設定
マラソン初心者が陥りやすいのが、焦って練習量を増やしすぎてしまうことです。 体がまだランニングの負荷に適応できていない段階で無理をすると、オーバートレーニングとなり、膝痛のリスクが高まります。 自分のレベルに合った、無理のない練習計画を立てることが重要です。
まずは短い距離から始め、週に10%程度の増加を目安に、少しずつ走行距離を伸ばしていきましょう。毎日走るのではなく、週に2〜3回のランニングと、筋トレや他の運動を組み合わせるのがおすすめです。そして、計画には必ず「休養日」を設けましょう。 筋肉は休息中に修復され、より強くなります。休養はトレーニングと同じくらい重要だと考えてください。
膝に少しでも違和感を感じたら、勇気を持って休むことも大切です。痛みは体からのサインです。そのサインを無視せず、体の声に耳を傾けながらトレーニングを進めていきましょう。
自分に合ったランニングシューズの選び方
ランニングシューズは、ランナーにとって最も重要な装備の一つです。自分の足に合っていないシューズや、クッション性が失われた古いシューズを履き続けることは、膝痛の直接的な原因になります。
初心者の方は特に、衝撃をしっかり吸収してくれる「クッション性」の高いモデルを選ぶのがおすすめです。 また、着地時に足元がぐらつかないようにサポートしてくれる「安定性」も重要なポイントです。 かかと部分がしっかりしていて、シューズの中で足がぶれないフィット感のあるものを選びましょう。
シューズを選ぶ際は、専門店のスタッフに相談するのが一番です。自分の足の形や走り方の癖を見てもらい、最適な一足を選んでもらいましょう。試着する際は、実際にランニングで使うソックスを履き、少し店内を歩いたり軽く走ったりして、履き心地を確かめることが大切です。高価なレース用の軽量シューズよりも、まずは膝を守ることを最優先に考えたシューズ選びを心がけましょう。
膝が痛いマラソン初心者のための正しいランニングフォーム

膝への負担を減らすためには、ランニングフォームの見直しが非常に効果的です。 力任せに走ったり、非効率な動きをしたりすると、着地のたびに膝に余計な衝撃が加わってしまいます。ここでは、膝に優しい走り方を身につけるためのポイントを解説します。
着地時の衝撃を和らげる「ミッドフット着地」
着地の仕方は、膝への負担を大きく左右します。かかとから強く着地する「ヒールストライク」は、地面からの衝撃がブレーキとなり、膝に直接伝わりやすい走り方です。
膝への負担を減らすためにおすすめなのが、「ミッドフット着地」です。 これは、足裏全体、もしくはやや前方(足の中央部あたり)で着地する方法です。 ミッドフット着地を意識すると、体の真下に近い位置で着地しやすくなり、足首やふくらはぎの筋肉をうまく使って衝撃を分散させることができます。
最初から完璧にやろうとすると難しいかもしれませんが、まずは「体の真下で、そっと着地する」というイメージを持つことから始めてみましょう。 ベタベタと音を立てるのではなく、忍び足のように静かに走ることを意識するだけでも、着地の衝撃はかなり和らぎます。
正しい姿勢と体幹の使い方
美しいランニングフォームの土台となるのが、正しい姿勢です。背中が丸まっていたり、逆に腰が反りすぎていたりすると、体の軸がぶれてしまい、着地が不安定になって膝に余計な負担がかかります。
まずは、頭のてっぺんから一本の糸で吊られているようなイメージで、背筋をまっすぐに伸ばしましょう。 視線は足元ではなく、自然にまっすぐ前を向きます。そして、体を軽く前傾させるのがポイントです。 この時、腰から折るのではなく、足首のあたりから体全体を一本の棒のように傾けることを意識してください。これにより、重心が自然と前方に移動し、スムーズな走りにつながります。
この正しい姿勢をキープするために不可欠なのが「体幹」の力です。腹筋や背筋といった体幹の筋肉がしっかりしていると、上半身がぶれずに安定し、効率的な走りが可能になります。
ピッチ(歩数)を意識して負担を減らす
歩幅(ストライド)を大きくして走ろうとすると、足が体の前方で着地しやすくなり、結果的にブレーキをかけるような形になって膝への負担が増加します。 速く走ろうとして大股になるのは、初心者によく見られる傾向ですが、これは怪我のリスクを高める走り方です。
膝への負担を減らすためには、歩幅を広げるのではなく、「ピッチ(1分間の歩数)」を増やすことを意識してみましょう。目安としては、1分間に180歩前後が理想的とされています。ピッチを上げると、自然と一歩あたりの歩幅が小さくなり、体の真下に近い位置で着地しやすくなります。これにより、上下の動きが少なくなり、地面からの衝撃を効率よく前進する力に変えることができます。
スマートフォンアプリやランニングウォッチには、ピッチを計測する機能がついているものも多いので、活用してみるのも良いでしょう。まずは今の自分のピッチを確認し、少しずつリズムを上げていく練習をしてみてください。
腕振りと上半身の連動
ランニングは足だけでなく、上半身の動きも非常に重要です。特に「腕振り」は、下半身の動きをリードし、リズムを生み出し、推進力をサポートする大切な役割を担っています。
腕を振る際は、肩の力を抜き、リラックスした状態を保ちます。肘を軽く曲げ、前後にリズミカルに振ることを意識しましょう。この時、腕を体の前で交差させるように振るのではなく、体の側面に沿ってまっすぐ後ろに引くイメージが大切です。後ろに引くことで、連動して骨盤が動き、足がスムーズに前に出やすくなります。
腕振りは、先ほど説明したピッチとも連動しています。腕振りのリズムを速くすれば、足の回転も自然と速くなります。上半身と下半身がうまく連動することで、体全体を使った効率的で、かつ膝への負担が少ないフォームが身についていくのです。
膝の痛みを軽減!マラソン初心者におすすめのグッズ選び

適切なグッズを選ぶことも、膝の痛みを予防・軽減するための重要な要素です。特に、ランニングの衝撃から体を守るシューズや、関節の動きをサポートするサポーターは、初心者にとって心強い味方となります。自分に合ったグッズを賢く活用し、快適なランニングライフを送りましょう。
初心者向けランニングシューズの選び方とポイント
前述の通り、ランニングシューズは膝を守るための最重要アイテムです。 特に初心者のうちは、速く走るための軽量なモデルよりも、膝への負担を軽減することを第一に考えたシューズ選びが大切です。
選ぶ際の最大のポイントは「クッション性」です。 着地時の衝撃をミッドソール(靴底の中間層)がしっかりと吸収してくれるモデルを選びましょう。 各メーカーからクッション性を重視したモデルが多数発売されているので、店員さんに相談してみるのが良いでしょう。
次に重要なのが「安定性(サポート性)」です。 着地時に足が内側に倒れ込む「オーバープロネーション」という癖がある人は、膝にねじれのストレスがかかりやすくなります。 こうした癖を補正し、かかと周りをしっかり固定して足元のぐらつきを抑えてくれる安定性の高いモデルを選ぶと、フォームが安定し膝への負担が減ります。
サイズ選びも重要です。つま先に1cm程度の余裕があるサイズを選び、必ず両足で試着し、軽く動いてフィット感を確かめましょう。
膝用サポーターの効果と選び方
膝に不安がある場合や、すでに軽い痛みを感じている場合には、膝用サポーターの着用も有効な手段です。 サポーターには、膝関節の動きを安定させ、ぐらつきを抑える効果があります。 これにより、ランニングフォームが安定し、膝にかかる負担や特定の筋肉へのストレスを軽減することができます。
また、サポーターによる適度な圧迫は、筋肉の無駄な振動を抑えたり、血行を促進したりする効果も期待できます。 心理的な安心感を得られるというメリットもあります。
膝用サポーターには様々な種類があります。膝全体を覆うタイプ、お皿の周りをサポートするタイプ、腸脛靭帯炎など特定の症状に特化したバンドタイプなどがあります。 自分の痛みの場所や目的に合わせて選ぶことが大切です。 選ぶ際は、動きを妨げないように軽量で通気性の良い素材のものを選ぶと、長時間のランニングでも快適に使用できます。
インソールの活用で足元からサポート
ランニングシューズにもともと入っているインソール(中敷き)を、より高機能なものに交換することも、膝の痛みの予防・改善に役立ちます。市販のランニング用インソールには、衝撃吸収性をさらに高めたり、足裏のアーチをサポートして足のアライメント(骨格の配列)を整えたりする機能があります。
特に、扁平足の人や、足が内側に倒れ込みやすい(オーバープロネーション)傾向がある人は、アーチサポート機能のあるインソールを使うことで、着地が安定し、膝へのねじれストレスを軽減できる場合があります。
インソールも様々な種類があるため、どれを選べば良いか迷うかもしれません。ランニングシューズ専門店などで足の状態を計測してもらい、自分の足に合ったインソールを推薦してもらうのが良いでしょう。シューズとインソールをセットで考えることで、より効果的に膝への負担を軽減することができます。
まとめ マラソン初心者が膝の痛みを克服し、楽しく走り続けるために

この記事では、マラソン初心者が直面しがちな膝の痛みについて、その原因から対処法、そして最も重要な予防策までを詳しく解説しました。
膝が痛くなる主な原因には、膝の外側が痛む「腸脛靭帯炎(ランナー膝)」や内側が痛む「鵞足炎」、そして根本的な要因である「筋力不足」や「オーバートレーニング」がありました。もし痛みが出てしまったら、まずはRICE処置で応急手当をし、痛みが引いたらストレッチやマッサージでケアすることが大切です。そして、痛みが長引く場合は迷わず専門医に相談しましょう。
しかし、何よりも大切なのは痛みを未然に防ぐことです。練習前後のウォーミングアップとクールダウンを徹底し、スクワットなどの筋力トレーニングで膝を支える力をつけ、無理のない練習計画を立てること。そして、自分の足に合ったクッション性と安定性の高いシューズを選ぶこと。これらの基本的な予防策を地道に続けることが、膝の痛みを遠ざける一番の近道です。
膝の痛みを正しく理解し、適切に対処・予防することで、ランニングはもっと安全で楽しいものになります。焦らず、自分の体と向き合いながら、一歩一歩ステップアップしていきましょう。



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