フルマラソンに挑戦することを決めたとき、最初に気になるのが「自分はいったい何時間で走れるのだろう?」という点ではないでしょうか。マラソン予想タイムをあらかじめ把握しておくことは、当日の目標設定や練習メニューの組み立てにおいて、非常に大切なプロセスとなります。
予想タイムが分かれば、無理のないペース配分を計画でき、レース後半の失速を防ぐことにもつながります。この記事では、過去の記録や日々の練習からフルマラソンのタイムを予測する方法を詳しくご紹介します。自分の実力を客観的に知り、目標達成への道筋を明確にしていきましょう。
また、レベル別の目標タイムや達成に必要なトレーニングについても解説します。初心者の方から記録更新を目指す経験者の方まで、納得感のある目標設定を行うためのヒントとして活用してください。現在の走力を正しく分析し、最高の状態でレース当日を迎えましょう。
マラソン予想タイムを過去の記録から計算するおすすめの方法

まずは、5kmや10km、あるいはハーフマラソンの記録を使って、フルマラソンの完走タイムを予測する方法を見ていきましょう。自分の今の走力がフルマラソンに換算するとどのくらいになるのか、代表的な計算式を用いることで客観的な数字が見えてきます。
リーゲル数式を活用したシンプルな予測方法
マラソン予想タイムを算出する際、世界的に最も有名な計算式の一つが「リーゲル数式」です。これは、ある距離のタイムを基にして、別の距離のタイムを予測するための公式です。フルマラソンの場合は、「ハーフマラソンのタイム × 2.09〜2.1」という係数をかけるのが一般的です。
例えば、ハーフマラソンを2時間で走れる人の場合、2時間(120分)× 2.1 = 252分、つまり4時間12分程度がフルマラソンの予想タイムとなります。この係数は、スタミナが十分にあるランナーなら2.06程度に縮まり、逆にスタミナ不足を感じている場合は2.15から2.2程度で見積もるのが現実的です。
あくまで計算上の数値ではありますが、現在の自分のスピードがフルマラソンでどの程度のポテンシャルを持っているのかを知るための、非常に便利な判断基準となります。まずは手元の記録にこの数字を当てはめて、自分の立ち位置を把握してみましょう。
【リーゲル数式による目安】
・ハーフのタイム × 2.1 = フルマラソンの予想タイム
・10kmのタイム × 4.6〜4.8 = フルマラソンの予想タイム
※スタミナに自信がない場合は、係数を少し大きめに設定して計算するのがコツです。
VDOT(ブイドット)理論によるレベル判定
有名な指導者であるジャック・ダニエルズ氏が提唱した「VDOT(ブイドット)」という指標も、マラソン予想タイムを知る上で非常に有効です。これは、走力を数値化(スコア化)したもので、どの距離をどのくらいのタイムで走れるかを一覧表で確認できる仕組みになっています。
VDOTの優れた点は、単にタイムを予測するだけでなく、「そのタイムを目指すために必要な練習ペース」まで導き出してくれることです。例えば、10kmを50分で走れる人のVDOTスコアを調べれば、それに見合うフルマラソンの予想タイムと、練習時のインターバルやジョギングの最適ペースが分かります。
最近では、数値を入力するだけで自動計算してくれるスマホアプリやウェブサイトも多く存在します。自分の現在のベストタイムを入力して、今の自分がどのレベルに位置しているのかを定期的にチェックすることで、モチベーションの維持にも役立つでしょう。
ハーフマラソンの2倍にプラスアルファする考え方
もっと直感的にマラソン予想タイムを把握したい場合は、「ハーフマラソンのタイムを2倍して、そこに10分から20分を足す」というシンプルな考え方もあります。これは多くの市民ランナーが実感値として持っている、非常に分かりやすい目安です。
フルマラソンは後半の30km過ぎから急激にペースが落ちることが多いため、単純にハーフの2倍のタイムで走ることは非常に困難です。そのため、スタミナに自信がある中上級者なら「2倍 + 10分」、完走を目指す初級者なら「2倍 + 20〜30分」程度を見込んでおくと、本番で大きな誤差が出にくくなります。
このプラスアルファの時間は、フルマラソン特有の「壁」への対策ができているかどうかで変わってきます。日頃の練習で長い距離を踏めているランナーほど、この加算時間を短く設定できる傾向にあります。自分の練習量と照らし合わせて、現実的な目標を立ててみましょう。
普段の練習メニューから導き出すフルマラソンの目標設定

過去のレース記録がない場合や、練習環境が変わったばかりのときは、日々のトレーニング内容からマラソン予想タイムを推測しましょう。特にフルマラソンの距離に対応できる持久力が備わっているかどうかを、練習の内容から冷静に分析することが重要です。
30km走の設定ペースから予測する
フルマラソンの準備において、最も本番に近い感覚を得られるのが「30km走」です。この30km走を、どの程度の余裕を持って、どのくらいのペースで走り切れたかが、マラソン予想タイムを占う最大の指標となります。
一般的に、30kmを本番の目標ペースよりも15秒から30秒ほど遅いペースで走り、最後まで余裕が残っていれば、その目標タイムでの完走はかなり現実的です。逆に、30km走の終盤で足が止まってしまったり、フラフラの状態になったりする場合は、本番の目標を少し下方修正する必要があります。
30km走は心身ともに負担が大きい練習ですが、レースの1ヶ月前から3週間前までに行うことで、自分の現在地を正確に知ることができます。この練習での手応えを基に、レース当日のスタートラインに立つ際のペース配分を最終決定しましょう。
30km走を終えた後の疲労感も重要な指標です。翌日に軽いジョギングができる程度の余力があれば、選んだペース設定は適切だったと言えます。
月間走行距離とタイムの関係性
マラソン予想タイムと密接に関係していると言われるのが、月間の走行距離です。もちろん距離がすべてではありませんが、フルマラソンという長丁場を走り切るための「脚の器」を作るには、ある程度の練習量が必要になるのは事実です。
目安として、サブ4(4時間切り)を目指すなら月間150km、サブ3(3時間切り)を目指すなら月間250kmから300km程度の走行距離が一つの基準となります。自分がこれまでどのくらい走ってきたかを振り返ることで、狙えるタイムの範囲が見えてくるはずです。
ただし、急激に距離を増やすと怪我のリスクが高まるため注意が必要です。過去3ヶ月間の平均走行距離を見て、自分がその練習量に見合った目標を立てているかを確認してみましょう。無理な目標設定は、レース中の挫折や怪我の原因になってしまいます。
ビルドアップ走の終盤ペースに注目
練習の後半に向けて徐々にスピードを上げていく「ビルドアップ走」も、マラソン予想タイムを判断する材料になります。特に、15kmから20km程度のビルドアップ走で、最後の5kmをどの程度のスピードまで引き上げられたかに注目してください。
後半にしっかりスピードを上げられるということは、心肺機能と脚の持久力がバランス良く備わっている証拠です。この「終盤の余裕」があるランナーは、フルマラソンの後半でも失速しにくく、計算式で出した予想タイムに近い、あるいはそれ以上の結果を出せる可能性が高まります。
もし後半に失速してしまうようであれば、スタミナ不足が考えられます。その場合は、予想タイムを少し控えめにするか、残りの期間でLSD(長くゆっくり走る練習)を取り入れるなどして、土台となる持久力を強化する戦略に切り替えましょう。
心拍数や年齢から客観的に自分の実力を把握するポイント

タイムや距離といった目に見える数字以外にも、身体の内部データや統計的な要素からマラソン予想タイムを検討することができます。スマートウォッチなどの普及により、現在はより科学的なアプローチで自分の走力を分析することが可能になっています。
最大酸素摂取量(VO2 Max)を活用する
最近のスポーツウォッチに搭載されている「VO2 Max(最大酸素摂取量)」の数値は、マラソン予想タイムを算出する非常に便利なツールです。これは1分間に体重1kgあたりどれだけの酸素を取り込めるかを示す指標で、全身持久力の代名詞とも言えます。
多くのデバイスでは、このVO2 Maxの数値を基に、フルマラソンや5km、10kmの予想タイムを自動で表示してくれます。トレーニングを重ねて心肺機能が向上するとこの数値も上がり、それに応じて予想タイムも更新されていくため、日々の成長を実感する楽しみにもなります。
ただし、ウォッチの予想タイムは「完璧にトレーニングを積んだ場合」の理論値であることが多いです。実際のレースでは、この数値よりも少し余裕を持った目標を立てるのが賢明です。自分の主観的な感覚とウォッチの数値を照らし合わせ、納得のいく目標を見つけましょう。
目標タイムに見合った心拍ゾーンの理解
マラソン予想タイム通りに走るためには、そのペースで走っているときの自分の「心拍数」がどの程度であるかを知ることも重要です。フルマラソンを一定のペースで走り続けるには、心拍数が上がりすぎない「有酸素運動」の範囲を保つ必要があります。
具体的には、最大心拍数の70%から80%程度の負荷で、目標とするレースペースが維持できているかを確認します。もし目標ペースで走っているときに心拍数が85%を超えてしまうようであれば、そのペースを42.195km維持するのは非常に難しいという判断になります。
このように心拍データを用いることで、「根性で走り切れるはずだ」という主観的な思い込みを排し、身体の限界を冷静に見極めることができます。データが示す現実を受け入れ、最後まで笑顔で完走できる適切なペースを見極めていきましょう。
【心拍数とペースの確認ポイント】
・レースペースで走った際、息が上がりすぎていないか?
・心拍数が安定しているか、それとも徐々に上昇し続けているか?
・会話ができる程度の余裕が残っているか?
年齢による衰えを考慮したエイジグレード
マラソンの記録は、残念ながら年齢とともに少しずつ変化していきます。しかし、年齢を考慮した「エイジグレード(年齢別換算)」という考え方を知ることで、自分の記録が同年代の中でどの程度の価値があるのかを正しく評価できるようになります。
若い頃の自己ベストと現在のタイムを単純に比較して落ち込むのではなく、年齢に応じたマラソン予想タイムを設定することは、長く競技を楽しむための知恵です。統計的には、40代以降は1年ごとに数分ずつタイムが変化していくと言われていますが、トレーニング次第でその変化を最小限に抑えることも可能です。
現在の自分の年齢における「平均的なタイム」や「同年代での順位」を調べてみることで、無理のない、しかし挑戦しがいのあるマラソン予想タイムが見えてきます。他人の記録と比較するのではなく、今の自分にとってのベストを目指す姿勢が、素晴らしいレース体験を生んでくれます。
走力レベル別のタイム目安と達成するために必要なペース

マラソン予想タイムを考える際、多くのランナーが意識するのが「サブ○(何時間切り)」という称号です。それぞれのレベルにおいて、1kmあたりどのくらいのペースで走る必要があるのか、具体的な目安を整理しておきましょう。
サブ3(3時間以内)を目指すエリート層の目安
市民ランナーにとって一つの到達点とも言えるサブ3(3時間切り)を達成するには、非常に高いレベルのトレーニングが求められます。マラソン予想タイムとして3時間を掲げるためには、1kmを4分15秒という速いペースで、最初から最後まで駆け抜ける必要があります。
このレベルに到達するためには、ハーフマラソンで1時間25分を切る程度のスピードと、30km以上の距離走を何度もこなす粘り強さが欠かせません。練習でもインターバル走などのスピード練習を週に1〜2回取り入れ、高い心肺機能を維持し続ける努力が必要です。
サブ3はランナー全体の上位わずか数パーセントと言われる狭き門です。まずはマラソン予想タイムを3時間15分程度に設定し、段階的にレベルを上げていくのが現実的です。綿密な計画と、怪我をしないための体調管理が、目標達成のための土台となります。
サブ4(4時間以内)を目指す中級者の目安
サブ4(4時間切り)は、多くの市民ランナーが最初に掲げる大きな目標です。達成のために必要な平均ペースは、1kmあたり5分41秒です。マラソン予想タイムを4時間以内にするためには、日頃のジョギングを1km6分前後で楽にこなせる走力が必要です。
サブ4を目指すなら、ハーフマラソンを1時間50分以内で走れることが一つの目安となります。また、後半の失速を防ぐために、月に1回は20kmから25kmのロングランを行い、長い時間動き続けることに脚を慣らしておくことが非常に重要です。
多くのランナーが30km過ぎで直面する「失速」をいかに最小限に抑えるかが、サブ4達成の成否を分けます。当日は1km5分30秒から5分40秒の一定ペースを刻むことを意識し、前半に貯金を作ろうとしすぎないことが、予想タイム通りにゴールするポイントです。
完走からサブ5を目指す初中級者の目安
フルマラソン初挑戦の方や、5時間切り(サブ5)を目指す方の場合は、まずは「最後まで歩かずに走り切る」ことを目標にしましょう。サブ5に必要なペースは1kmあたり7分6秒です。これは早歩きよりも少し速い程度の、穏やかなジョギングペースです。
マラソン予想タイムを5時間に設定する場合、ハーフマラソンの記録目安は2時間20分から2時間30分程度になります。スピードよりも、まずは「3時間や4時間という長い時間、身体を動かし続けられるか」という耐久力、いわゆるスタミナを養うことに重点を置きましょう。
練習では1km8分程度のゆっくりしたペースで、60分から90分走り続けることから始めます。徐々に時間を延ばしていき、120分程度の運動に慣れてくれば、完走への道は見えてきます。本番ではエイドステーションでの給水をしっかり取りながら、自分のリズムを大切にしましょう。
【レベル別・平均ペース一覧表】
| 目標タイム | 1kmあたりのペース | ハーフの目安タイム |
|---|---|---|
| 3時間(サブ3) | 4分15秒 | 1時間25分 |
| 3.5時間(サブ3.5) | 4分58秒 | 1時間40分 |
| 4時間(サブ4) | 5分41秒 | 1時間50分 |
| 4.5時間(サブ4.5) | 6分24秒 | 2時間05分 |
| 5時間(サブ5) | 7分06秒 | 2時間20分 |
予想タイム通りに走るための当日のコンディション調整

せっかく精度の高いマラソン予想タイムを導き出しても、レース当日の環境や体調が整っていなければ、計画通りに走ることは難しくなります。予想タイムを実現させるために、見落としがちな外部要因や当日の戦略についても確認しておきましょう。
コースの高低差と曲がり角の影響
多くの計算式は、平坦なコースを走ることを前提としています。しかし実際のレースコースには、登り坂や下り坂、そして急なカーブが存在します。特にアップダウンの激しいコースでは、平坦なコースよりも10分から15分ほどタイムが遅くなることも珍しくありません。
マラソン予想タイムを立てる際は、自分が走る大会のコースマップを事前に読み込み、どの地点に難所があるかを把握しておきましょう。坂道が多い場合は、予想タイムを少し控えめに設定するか、あるいは上り坂でのペースダウンをあらかじめ計算に入れておく必要があります。
また、参加人数の多い大きな大会では、スタート直後の渋滞で数分間のタイムロスが発生することもあります。こうしたロスタイムを考慮せず、無理にペースを上げて取り戻そうとすると、後半のスタミナ切れを招きます。余裕を持ったプランニングが、結果的に好タイムにつながります。
気象条件(気温・風・湿度)への対策
マラソンの記録に最も大きな影響を与える外部要因は「気温」です。一般的に、マラソンの理想的な気温は5度から10度程度と言われており、15度を超えるとタイムは徐々に低下し、20度を超える夏日のような状況では大幅なペースダウンを余儀なくされます。
マラソン予想タイムを当日の気温に合わせて微調整することも大切です。暑い日は発汗による脱水や体温上昇が早まるため、当初の予定よりも1kmあたり5秒から10秒ほどペースを落とす決断も必要になります。無理をして目標に固執するよりも、環境に適応することが完走への近道です。
また、向かい風が強いコースもエネルギーを激しく消耗させます。風が強い日は、他のランナーの後ろについて風除けにするなど、知恵を使った走りが求められます。天候をコントロールすることはできませんが、天候に合わせて自分のマラソン予想タイムを柔軟に変えることは可能です。
ネガティブスプリットによる賢いペース配分
マラソン予想タイムを実現するために最も推奨される戦略が、後半を前半より速く走る「ネガティブスプリット」です。多くのランナーは前半に貯金を作ろうと飛ばしすぎてしまいますが、これは後半に大きなタイムロスを生む典型的な失敗パターンです。
予想タイムから逆算したペースを、まずはスタートから30kmまで淡々と維持することを心がけましょう。30km地点で「まだ行ける」という感覚が残っていれば、そこから少しずつペースを上げていきます。この走り方ができれば、終盤に多くのランナーを追い抜くことができ、精神的な充実感も得られます。
逆に、前半で無理をしてしまうと、筋肉に疲労物質が溜まり、35km以降は文字通り「足が棒」になってしまいます。マラソン予想タイムはあくまでトータルでの目標ですから、焦らずにじっくりとレースを組み立てる忍耐力が、最終的な成功を引き寄せます。
マラソン予想タイムを意識して賢く目標を達成するためのまとめ
この記事では、マラソン予想タイムを導き出すための様々なアプローチをご紹介してきました。過去のベストタイムから計算する数式、日々の練習内容から測る実力、そして最新のデバイスが示すデータなど、多角的に自分を見つめ直すことができたのではないでしょうか。
マラソン予想タイムは、単なる未来の数字ではなく、今のあなたが積み上げてきた努力の結果を映し出す鏡のようなものです。客観的なデータに基づいた目標設定は、過度な不安を取り除き、レース当日の走りに自信を与えてくれます。無理のないペース配分を心がけることで、42.195kmという長い距離を攻略する楽しさはさらに深まるでしょう。
もちろん、予想外のトラブルや天候の変化が起こるのもマラソンの醍醐味です。立てた目標に縛られすぎず、その時の自分の身体の声を聞きながら、柔軟に対応することも忘れないでください。事前準備でしっかりとしたマラソン予想タイムを把握し、当日はその計画を信じて一歩ずつゴールへと進んでいきましょう。
あなたのフルマラソンへの挑戦が、納得のいくタイムと最高の笑顔で締めくくられることを心から応援しています。正しい目標設定を武器に、自分史上最高のレースを実現させてください。





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