フルマラソンという過酷な挑戦において、最後まで走り抜くための大きな要素となるのが「エネルギー管理」です。完走を目指す初心者の方から自己ベスト更新を狙うランナーまで、共通して避けては通れないのが、走行中のエネルギー切れによる失速ではないでしょうか。
特に「30キロの壁」と呼ばれる急激なペースダウンは、体内のエネルギーが枯渇することが主な原因の一つとされています。そのため、マラソンの栄養補給をレース中に適切に行うことは、単なる食事以上の意味を持ち、完走へと導くための重要な戦略となります。
この記事では、レース中に何をどのタイミングで摂取すべきか、具体的なアイテム選びやトラブルを防ぐコツを詳しく解説します。初めてフルマラソンに挑戦する方も、栄養補給の基本をマスターして、自信を持ってスタートラインに立ちましょう。
マラソン中に栄養補給がレースの結果を左右する理由

マラソンは数あるスポーツの中でも、消費エネルギーが極めて大きい競技です。一般的にフルマラソンで消費されるエネルギーは、体重やペースにもよりますが約2,500〜3,000キロカロリーと言われています。これだけのエネルギーを、体内に蓄えられた分だけで賄うのは非常に困難です。
体の中に貯蔵できる糖質(グリコーゲン)の量には限界があり、フルマラソンを走り切るにはどうしても不足してしまいます。この不足分を補うのがレース中の栄養補給であり、適切な摂取がパフォーマンスの維持に直結するのです。
グリコーゲン枯渇と「30キロの壁」の関係
人間の体は、主に糖質と脂肪をエネルギー源として動いています。その中でも、高強度の運動時に優先的に使われるのが糖質(グリコーゲン)です。しかし、筋肉や肝臓に蓄えられるグリコーゲンの量は限られており、通常は2時間から3時間程度の運動で底をついてしまいます。
このエネルギー源が尽きかけた状態がいわゆる「ガス欠」であり、多くのランナーが苦しむ「30キロの壁」の正体です。エネルギーが足りなくなると、体は無理に動こうとしても動かなくなり、精神的にも強い疲労感に襲われます。これを防ぐには、枯渇する前に外からエネルギーを足してあげる必要があります。
あらかじめ体内にエネルギーを貯める「カーボローディング」も有効ですが、それだけで42.195キロを走り切るのは難しいのが現実です。だからこそ、レース中の計画的な補給が、後半の粘りを生むための土台となるのです。
脳のエネルギー不足による集中力低下の防止
栄養補給は筋肉を動かすためだけではありません。脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖であるため、体内の糖質が不足すると脳への供給も滞ってしまいます。脳がエネルギー不足になると、判断力が鈍ったり、強い眠気に襲われたり、走る意欲そのものが減退してしまいます。
集中力が切れると、フォームが乱れて怪我のリスクが高まったり、給水所でのトラブルを招いたりすることもあります。レース後半に「もう歩きたい」「苦しい」と強く感じるのは、メンタルの問題だけでなく、実は脳のエネルギー不足が原因であることも多いのです。
適切なタイミングで糖質を摂取することで、脳に「エネルギーはまだあるから大丈夫だ」という信号を送り続けることができます。これにより、最後まで高い集中力を維持し、自分の走りに集中できる環境を整えることが可能になります。
内臓疲労や脱水を防ぐコンディショニング
レース中の栄養補給は、単にカロリーを摂るだけでなく、体調を安定させる役割も担っています。激しい運動を続けると、血液が筋肉に優先的に送られるため、消化器官への血流が減少します。これが原因で内臓の機能が低下し、いわゆる「内臓疲労」を引き起こします。
一度に大量の補給食を摂ると内臓に負担がかかりますが、少量ずつ小まめに摂取することで、血糖値の急激な変化を抑え、胃腸へのダメージを最小限に留めることができます。また、電解質(ナトリウムやカリウムなど)を含んだ補給食を摂ることは、脱水症状や足のつりを防ぐためにも不可欠です。
レース中の栄養補給を戦略的に行うことで、体のメカニズムをサポートし、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。完走という目標を達成するためには、筋肉を鍛えることと同じくらい、体内のコンディションを整える補給の知識が求められます。
レース中に摂取すべき栄養素の種類と役割

マラソン中に摂取する栄養素は、目的に応じて選ぶ必要があります。単に「お腹が空いたから食べる」のではなく、今の自分の体に何が必要かを考えて選ぶのがスマートなランナーの補給術です。
主に意識すべきは、エネルギー源となる糖質、筋肉のダメージを抑えるアミノ酸、そして体の機能を維持する電解質です。これらをバランスよく組み合わせることが、最後まで安定した走りを続けるためのポイントとなります。
エネルギー源として最も重要な「糖質」
マラソンにおいて最も優先すべき栄養素は糖質(炭水化物)です。糖質は素早くエネルギーに変換されるため、レース中の即効性を求める場面で真価を発揮します。市販の「エナジージェル」などは、この糖質を濃縮したもので、効率よくカロリーを摂取できるように設計されています。
糖質にはいくつかの種類があり、ブドウ糖やマルトデキストリンなどは吸収が早いという特徴があります。一方で、パラチノースのようにゆっくりと吸収されるタイプもあります。最近の補給食は、これらをミックスして「速攻性と持続性」の両立を図っているものが増えています。
摂取量の目安としては、1時間あたり30g〜60g程度の糖質を摂ることが推奨されています。これをジェルの個数に換算すると、おおよそ1時間に1本ペースとなります。一度にたくさん摂るのではなく、こまめに補給することで血糖値を安定させ、エネルギー切れを防ぐことができます。
足のつりや脱水を防ぐ「電解質(ミネラル)」
汗と一緒に体外へ流れ出してしまうのが、ナトリウムやカリウム、マグネシウムなどの電解質です。これらが不足すると、細胞内の水分バランスが崩れ、筋肉が正常に収縮できなくなります。これが、ランナーを悩ませる「足のつり」や「こむら返り」の大きな原因です。
特に気温が高い日のレースでは、水だけを飲んでいると血液中のナトリウム濃度が低くなりすぎてしまい、「低ナトリウム血症」という危険な状態になることもあります。喉が渇いたからといって真水だけを飲み続けるのは避け、必ず塩分も一緒に摂るようにしましょう。
補給食の中には、電解質を強化したジェルやタブレットがあります。また、給水所に用意されているスポーツドリンクにも電解質が含まれています。足が攣りやすい自覚がある方は、特にマグネシウムが含まれたサプリメントを中盤以降に取り入れるのが効果的です。
筋肉のダメージと疲労感を軽減する「BCAA(アミノ酸)」
BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)は、筋肉を構成する必須アミノ酸の一部です。長距離を走ると、体はエネルギーを作るために自分の筋肉を分解し始めてしまいます。これが筋肉疲労やダメージの蓄積につながりますが、BCAAを摂取することでこの分解を抑制できます。
また、BCAAには脳が感じる疲労感(中枢性疲労)を軽減する効果も期待されています。レースの序盤や中盤に摂取しておくことで、後半のひどい疲れを先回りしてケアすることができるのです。粉末タイプやゼリータイプなど、携帯しやすいものを選びましょう。
アミノ酸は糖質のように即座に力が出るわけではありませんが、レース後のリカバリー(回復)にも大きく影響します。翌日以降の筋肉痛を軽くするためにも、レース中からアミノ酸を補給しておくことは、賢い選択と言えるでしょう。
集中力を高めて最後の一踏ん張りを支える「カフェイン」
レース後半の苦しい時間帯に頼りになるのがカフェインです。カフェインには覚醒作用があり、脳が感じる疲労を麻痺させてくれる効果があります。また、脂肪の燃焼を促進し、エネルギー効率を高める働きもあると言われています。
多くのランナーは、30キロを過ぎたあたりの最もきつい場面で、カフェイン入りのジェルを使用します。気持ちがシャキッとして、もう一度前を向く活力が湧いてくるのを感じられるはずです。ただし、カフェインには利尿作用があるため、摂りすぎるとトイレが近くなる可能性がある点には注意が必要です。
普段からコーヒーなどをよく飲む方は耐性ができていることもありますが、レース中という特殊な環境下では効果が強く出すぎることもあります。カフェイン入りのアイテムは、ここぞという時の「とっておき」として、タイミングを見極めて使うのがおすすめです。
完走を目指すための栄養補給スケジュール

「いつ、何を食べるか」というスケジュールをあらかじめ決めておくことは、レースを成功させるための大きな鍵です。走ることに夢中になると、ついつい補給を忘れてしまいがちですが、お腹が空いてからでは間に合いません。
基本的な考え方は「早め早めの摂取」です。体内のエネルギーが尽きる前に補充を開始し、ゴールまで一定のレベルを保つことを目指します。ここでは、時間や距離を目安にした標準的なスケジュールを紹介します。
【補給スケジュールの基本パターン】
・スタート前(30分〜1時間前):軽めの糖質とアミノ酸
・10km地点:1回目のエナジージェル
・20km地点:2回目のエナジージェル(電解質入り)
・25km〜30km地点:アミノ酸や足つり対策サプリ
・35km地点:カフェイン入りのエナジージェル
スタート前から10キロまでの「先行投資」補給
栄養補給は、実はスタート前から始まっています。朝食はレースの3時間前までに済ませるのが理想ですが、スタート直前にもエネルギーを少し足しておくと安心です。ゼリー飲料やバナナなど、消化が良くすぐに力になるものを軽く摂っておきましょう。
走り始めて最初の10キロは、まだ元気が残っている状態です。しかし、ここで「まだ大丈夫」と補給を後回しにするのは危険です。10キロ地点を目安に、最初のジェルを投入しましょう。この段階で摂るエネルギーが、中盤以降の余裕を生み出します。
最初の補給は、なるべく癖のない味のものを選ぶと失敗がありません。まだ胃腸が元気なうちに、しっかりとベースとなるエネルギーを体に覚え込ませるイメージで摂取しましょう。給水所の水と一緒に流し込むと、吸収がスムーズになります。
20キロから30キロまでの中盤戦を乗り切るコツ
ハーフ地点を過ぎると、徐々に体内のグリコーゲンが減り始め、筋肉の疲労も感じてくる頃です。この時間帯は、エネルギーの補充だけでなく、足のつり対策を意識した補給を行いましょう。ナトリウムなどのミネラルが豊富なアイテムを選ぶのがコツです。
20キロ地点で2本目のジェルを摂り、さらに必要に応じて塩分タブレットやマグネシウムのサプリメントを併用します。この中盤の補給を丁寧に行うことで、魔の30キロ地点での失速を大幅に軽減できる可能性が高まります。
また、飽きを防ぐために味に変化をつけるのも有効です。甘いジェルばかりだと口の中がベタついて不快に感じることがあるため、少し酸味のあるものや、塩気が強いものを用意しておくと、気分転換にもなります。単調な作業になりがちな中盤を、味覚の刺激で乗り切りましょう。
35キロ以降の「ラストスパート」を支える補給
残り7キロ前後、体力の限界が近づくこの局面では、速攻性と精神的なブーストが必要です。ここで登場するのがカフェイン入りの補給食です。重くなった体を無理やり動かすのではなく、脳を刺激して「まだいける」という感覚を引き出します。
35キロ付近で最後のジェルを摂りましょう。この時は、喉を通りやすいさらっとしたタイプがおすすめです。疲労がピークに達すると、噛むことや飲み込むこと自体が億劫になりますが、最後の力を振り絞るための燃料だと割り切って摂取します。
また、この付近の給水所では、大会側が提供する「私設エイド」や特産品が並ぶこともあります。しかし、胃腸が弱っている可能性が高いため、初めて見る食べ物に手を出すのは慎重にしましょう。基本は自分で用意した、使い慣れたアイテムでゴールを目指すのが確実です。
給水所を最大限に活用するタイミング
レース中の補給食を摂るタイミングは、必ず「給水所の直前」にするのが鉄則です。多くのエナジージェルは非常に濃度が高く、そのまま飲むと喉が渇いたり、胃に負担がかかったりします。ジェルの後に水で追いかけることで、適切な濃度で胃に届けられます。
給水所では「水」と「スポーツドリンク」が用意されていることが多いですが、ジェルを飲んだ直後は「水」を選ぶのが無難です。スポーツドリンクとジェルの両方を摂ると、糖分の濃度が高くなりすぎてしまい、かえって吸収が遅れる原因になることがあるためです。
また、給水所で立ち止まってしまうと、再び走り出すのが辛くなります。走りながら、あるいは歩きながらでもスムーズに飲めるように練習しておくことが大切です。コップを少しつぶして飲み口を狭くすると、こぼさずに飲むことができます。
補給食の選び方とおすすめのアイテム

現在、市販されているマラソン用の補給食は非常に種類が豊富です。どれを選べばいいか迷ってしまうかもしれませんが、選ぶ基準は「持ち運びやすさ」「摂取のしやすさ」、そして何より「自分の口に合うか」です。
レース中は極限状態になるため、普段は気にならない些細な味の好みや食感が、ストレスになることがあります。ここでは、代表的な補給食のタイプとその特徴を解説します。
エナジージェルの特徴とメリット
マラソン補給食の王道といえば、エナジージェルです。手のひらサイズのパウチに、おにぎり1個分相当(約100〜120kcal)のエネルギーが凝縮されています。軽くてかさばらないため、ランニングパンツのポケットやポーチに数本入れておけるのが最大のメリットです。
テクスチャーはドロっとした重めのものから、飲料に近いさらっとしたものまで様々です。レース前半は重めのジェルでも大丈夫ですが、後半は喉を通りやすい低粘度タイプが重宝されます。また、キャップ付きのタイプなら、数回に分けて少しずつ摂ることも可能です。
味のバリエーションも豊富で、ピーチやリンゴといったフルーツ系、コーラやコーヒーといった嗜好品系などがあります。最近では、甘さを抑えたものや、和菓子のように「あんこ」をベースにしたジェルも人気を集めています。自分の好みに合ったものを数種類組み合わせてみましょう。
メモ:ジェルのパッケージを開ける際は、ゴミを落とさないように注意しましょう。最近は切り口が切り離されない設計のものも多いので、そういったタイプを選ぶのもマナーの一つです。
グミ・タブレットタイプの活用法
ジェルばかりだと飽きてしまうという方や、何かを「噛む」ことでリズムを作りたい方には、グミやタブレットタイプが向いています。噛む動作は脳を活性化させる効果もあり、単調な走りに変化を与えてくれます。
タブレットタイプは、特に塩分補給に特化したものが多く、ラムネのように口の中で溶けるため、走りながらでも手軽に摂取できます。暑い時期のレースでは、数キロおきに塩分タブレットを口に含むことで、足のトラブルを効果的に予防できます。
一方、グミタイプは腹持ちが良く、ジェルよりも「食べた感」が得られるのが特徴です。ただし、呼吸が荒くなっている時に食べると喉に詰まらせる危険があるため、摂取する際は十分に注意し、必ず水と一緒に摂るようにしてください。
マグネシウムや足つり専用サプリメント
「いつも30キロ付近で足が攣ってしまう」という悩みを持つランナーにとって、マグネシウムを配合した専用サプリメントは必須アイテムと言えます。マグネシウムは筋肉の収縮をスムーズにする役割があり、不足すると痙攣を引き起こしやすくなります。
液状のショットタイプや、水なしで飲める顆粒タイプが一般的です。これらは非常に即効性が高いとされており、足に違和感を覚えた瞬間に摂取することで、最悪の事態を回避できることがあります。お守り代わりに1つポーチに忍ばせておくと、精神的な安心感にも繋がります。
ただし、マグネシウム系のサプリメントは独特の苦味やエグ味があるものが多いため、初めて使う場合は注意が必要です。また、一度に大量に摂取するとお腹が緩くなることもあるので、事前に練習で試して自分の適量を知っておくことが肝心です。
大会エイド(給食)の賢い利用の仕方
多くの大会では、コース上のエイドステーションで食べ物が提供されます。バナナやオレンジといった果物、チョコレートや飴、さらには地元の名産品(お餅やうどん、パンなど)が並ぶこともあります。これらも貴重な栄養源となります。
バナナは消化が良く、カリウムも豊富なので非常におすすめの給食です。一方で、パンやクッキーなどの乾いた食べ物は、口の中の水分を奪い、飲み込むのが大変になることがあります。エイドの食べ物を利用する際も、基本的には「水分と一緒に摂る」ことを忘れないでください。
注意点として、大会の給食だけに頼りすぎるのは危険です。後ろの方のランナーになると、人気の食べ物が品切れになっていることもあるからです。自分のコンディションを維持するための「最低限の補給食」は必ず持参し、大会エイドは「楽しみ」や「プラスアルファ」として捉えるのが完走への近道です。
トラブルを防ぐための栄養補給の注意点

どれほど優れた補給食を用意しても、使い方を間違えると逆効果になってしまうことがあります。レース中の体は非常にデリケートです。普段なら何でもない食べ物が、激しい運動中には思わぬトラブルを引き起こすことも珍しくありません。
ここでは、栄養補給にまつわるよくある失敗例と、それを防ぐための重要な注意点についてお伝えします。事前の準備と心構えで、トラブルの芽を摘んでおきましょう。
「初めてのアイテム」を本番で使わない
最も基本的でありながら、最も守られていないルールが「レース当日に初めての補給食を試さない」ということです。どんなに評判の良い高価なジェルでも、自分の胃腸に合うかどうかは個人差があります。本番で初めて飲んで、味が受け付けなかったり、胃がムカムカしたりしては目も当てられません。
補給食のテストは、必ずトレーニングの段階で行いましょう。特に20キロ以上のロング走を行う際に、本番と同じタイミングで摂取してみて、味の感じ方や消化具合を確認しておくことが大切です。「走っている最中でもスムーズに開けられるか」といった操作性の確認も忘れずに行いましょう。
また、アレルギーや添加物への反応も確認しておくべきポイントです。練習で試して問題がなかったアイテムだけを本番のラインナップに加えることで、当日の不安要素を一つ消すことができます。自分にとっての「定番」を見つけることも、ランニングの楽しみの一つです。
胃腸トラブル(内臓疲労)を回避する方法
マラソン後半に多いのが、胃が食べ物を受け付けなくなる「内臓疲労」です。これは長時間走り続けることで内臓への血流が減り、消化能力が著しく落ちるために起こります。無理に流し込もうとすると、吐き気や腹痛を招く恐れがあります。
これを防ぐには、一度に大量に摂るのではなく「少量多回数」を意識することです。例えば1本のジェルを一度に飲み干すのではなく、数キロに分けて少しずつ口に含むだけで、胃への衝撃をかなり和らげることができます。また、冷たすぎる飲み物の摂りすぎも内臓を冷やして機能を低下させるため注意が必要です。
もし胃がムカムカしてしまったら、一旦固形物や濃厚なジェルの摂取を控え、水やスポーツドリンクのみに切り替えて様子を見ましょう。少しペースを落として呼吸を整えると、血流が内臓に戻り、再び補給ができるようになることもあります。
補給食の携帯方法と取り出しやすさの工夫
補給食をどこに持つかも重要な戦略です。ランニングパンツのポケットに無造作に入れていると、走る振動で揺れてストレスになったり、取り出すのに苦労してペースを乱したりすることがあります。専用のランニングベルトや、収納力の高いポーチを活用するのが一般的です。
おすすめは、摂取する順番に並べて収納しておくことです。10キロ用、20キロ用と場所を決めておけば、疲労困憊の状態でも迷わずに必要なアイテムを手に取ることができます。また、ジェルの飲み口をあらかじめ少し切り込みを入れておいたり、テープで連結して剥がしやすくしたりといった工夫をするランナーもいます。
最近のウェアは、腰回りにメッシュポケットが複数付いているタイプも増えており、揺れにくく取り出しやすいため非常に便利です。自分の装備に合わせて、スムーズに「ブラインド(見なくても)」で補給ができる状態を作っておきましょう。
血糖値の急上昇・急降下(インスリンショック)に注意
空腹状態でいきなり高濃度の糖質を摂ると、血糖値が急激に上昇します。すると体はそれを下げようとして「インスリン」というホルモンを大量に分泌し、今度は逆に血糖値が下がりすぎてしまうことがあります。これをインスリンショック(反応性低血糖)と呼びます。
この状態になると、かえって体がだるくなったり、力が抜けるような感覚に陥ったりすることがあります。これを防ぐには、やはり「空腹になる前に補給を始める」ことが最も効果的です。エネルギーが十分にあるうちから、少しずつ糖質を足していくことで、血糖値のカーブを緩やかに保つことができます。
また、吸収がゆっくりなタイプの糖質(パラチノースなど)を含む補給食を選ぶことも有効です。血糖値の安定は、メンタルの安定にも繋がります。一定のペースでエネルギーを供給し続けることが、最後まで「切れない」走りへと繋がります。
まとめ:マラソンはレース中の栄養補給で完走へと近づく
マラソンにおける栄養補給は、完走というパズルを完成させるために欠かせない最後のピースのようなものです。どれだけ厳しい練習を積んできても、レース中のエネルギー管理を怠れば、本来の力を出し切ることはできません。マラソンで栄養補給をレース中に適切に行うことは、もはやランナーの義務とも言えるでしょう。
まず大切なのは、自分の体の声を聞き、エネルギーが枯渇する前に先手を打つことです。10キロごとの定期的なジェル摂取や、電解質の補給をスケジュール化し、機械的に実行する勇気を持ちましょう。そして、そのアイテムは必ず事前に練習で試し、自分に合うものだけを選んでください。
最後に、栄養補給の要点を整理します。
| 摂取のタイミング | 主な目的 | おすすめの成分 |
|---|---|---|
| スタート前〜序盤 | エネルギーの貯蔵 | 糖質(マルトデキストリンなど) |
| 中盤(20〜30km) | 足つり・疲労対策 | 電解質(塩分・Mg)、アミノ酸 |
| 終盤(35km〜) | ラストスパート | カフェイン、高濃度糖質ジェル |
正しい知識を持って、計画的に補給を行うことで、恐怖の「30キロの壁」を乗り越え、笑顔でフィニッシュラインを越えられるはずです。次のレースでは、ぜひこの記事で紹介した補給戦略を取り入れて、自己ベスト更新や目標の完走を掴み取ってください。




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