「初めてのマラソン、どれくらいの速さで走ればいいの?」
「完走したいけれど、途中でバテてしまわないか心配……」
マラソンに挑戦しようと決めたものの、ペース配分がわからずに不安を感じていませんか。42.195kmという長い距離を走り切るためには、速く走ることよりも、自分に合った適切なペースを守り続けることが何より大切です。
この記事では、マラソン初心者が知っておくべきペースの基本から、目標タイム別の具体的な設定、そしてレース本番で失敗しないためのコツまでをやさしく解説します。無理のないペースを見つけて、笑顔でフィニッシュラインを目指しましょう。
マラソンのペース設定で初心者がまず知っておくべき基本

マラソンの練習を始めると、「キロ〇分」という言葉をよく耳にするようになります。まずはこの独特な表現に慣れることから始めましょう。そして、初心者が目指すべき理想的な走り方について解説します。
「1kmを何分で走るか」がペースの基準
日常生活で車のスピードなどを表すときは「時速(km/h)」を使いますが、ランニングの世界では「1km走るのに何分かかるか」で速さを表します。これを「ペース」と呼びます。たとえば、「キロ7分(7:00/km)」と言えば、1kmを7分かけて走る速さのことです。
数字が小さくなるほど速く、大きくなるほどゆっくりになります。最初はピンとこないかもしれませんが、スマートフォンのアプリやランニングウォッチを使うと、「現在のペース:6分30秒/km」のように表示されるので、すぐに感覚がつかめるようになります。
初心者に一番おすすめなのは「イーブンペース」
マラソンの走り方には大きく分けて3つのパターンがあります。前半に貯金を作る「ポジティブスプリット」、後半にペースを上げる「ネガティブスプリット」、そして最初から最後まで一定のペースで走る「イーブンペース」です。
初心者の方に強くおすすめしたいのが、この「イーブンペース」です。体力の消耗を最小限に抑えられ、計画的にレースを進めることができるからです。前半に飛ばしすぎると後半で急激に足が止まってしまうリスクが高いため、一定のリズムを刻むことを意識しましょう。
「周りにつられて速くなる」のが最大の失敗原因
大会当日は、独特の興奮と熱気に包まれます。スタートの号砲が鳴ると、周りのランナーが一斉に飛び出していくため、自分もつられて普段より速いペースで走ってしまいがちです。これは多くの初心者が陥る典型的な失敗パターンです。
「今日は調子がいいかも!」と勘違いしてしまうことが多いのですが、実はアドレナリンが出ているだけというケースがほとんどです。前半のオーバーペースは、30km以降に何倍もの苦しさとなって返ってきます。「遅すぎるかな?」と思うくらいのゆったりしたペースで入るのが、完走への近道です。
初心者が目指すべき目標タイム別の推奨ペース配分

自分の実力や目標に合わせて、どれくらいのペースを設定すればよいのかを見ていきましょう。ここでは、初心者の方が目標にしやすい4つのパターンに分けて、具体的な数値とともに解説します。
まずはここから!「完走(制限時間内)」を目指すペース
初めてのマラソンでは、タイムよりも「制限時間内にゴールすること」が立派な目標です。多くの大会では6時間〜7時間の制限時間が設けられています。たとえば6時間で完走する場合、単純計算では1kmを「8分30秒」程度で進めばゴールできます。
これは、早歩きに少し毛が生えたくらいのジョギングペースです。途中で給水所に寄ったり、トイレに行ったりする時間を考慮しても、ずっと走り続ける必要はありません。きつくなったら歩いても大丈夫です。焦らず、一歩一歩前に進むことを最優先にしましょう。
多くの人が目指す第一関門「サブ5(5時間切り)」
「サブ5」とは、5時間未満で完走することを指します。これは初心者が最初に目指す具体的なタイムとして非常にポピュラーです。達成するために必要な平均ペースは「1kmあたり7分06秒」です。
このペースは、会話ができるくらいのゆったりとしたジョギングの速さです。ただし、給水や後半の疲れを考慮すると、実質的には「キロ6分50秒〜7分00秒」あたりを目安に走ると安心です。止まらずにゆっくり走り続けるスタミナが求められます。
メモ:サブ5を達成すると、ランナーとしての自信が大きくつきます。無理なく継続して練習すれば、誰でも到達可能な目標です。
脱初心者へのステップアップ「サブ4.5(4時間半切り)」
サブ5より少し高い目標、それが4時間30分切りです。必要な平均ペースは「1kmあたり6分23秒」となります。このレベルになると、ただゆっくり走るだけでなく、ある程度のリズム感と、最後まで歩かない粘り強さが必要になってきます。
練習の中に、少し息が弾むくらいのペース走を取り入れるなどして、スピードの基礎を作る必要があります。男性の平均タイムに近い水準でもあり、達成できれば「脱初心者」と言っても過言ではありません。
初心者の大きな勲章「サブ4(4時間切り)」
市民ランナーの大きな目標の一つが「サブ4」です。これは1kmを平均「5分40秒」で走り続ける必要があります。初心者にとってはかなり高いハードルですが、運動経験がある方や、しっかり練習を積んだ方が初マラソンで達成することも珍しくありません。
キロ5分40秒は、ジョギングというよりもしっかりとした「ランニング」の速度です。このペースを4時間維持するには、十分な走り込みとペース感覚の養成が不可欠です。まずはハーフマラソンなどで実力を試してから挑戦することをおすすめします。
自分に合ったマラソンペースを見つけるための練習方法

目標のペースが決まったら、その速さを体に覚え込ませる練習が必要です。また、自分にとって無理のないペースがどれくらいなのかを知ることも大切です。効果的な3つの練習法を紹介します。
おしゃべりできる速さで走る「ニコニコペース」
自分に最適な基本ペースを見つける簡単な方法があります。それは「笑顔でおしゃべりができる速さ」で走ることです。これを「ニコニコペース」と呼ぶこともあります。隣の人と会話をしていて息が切れるようなら、それは速すぎます。
心拍数が上がりすぎないこの強度は、脂肪燃焼効率が良く、長く走り続けるための土台作りに最適です。まずは時計を見ずに、この体感だけを頼りに走ってみてください。その時のペースが、今のあなたにとっての無理のない巡航速度です。
スタミナを養う「LSD(ロング・スロー・ディスタンス)」
マラソン後半の失速を防ぐためには、長い時間体を動かし続けるスタミナが必要です。そこでおすすめなのが「LSD」というトレーニングです。これは、普段のジョギングよりもさらにゆっくりしたペースで、長い時間(90分〜120分以上)走る練習です。
ペースは気にせず、とにかく止まらずに時間を稼ぐことが目的です。ゆっくり走ることで毛細血管が発達し、全身に酸素を運ぶ能力が向上します。「こんなに遅くていいの?」と思うくらいで構いません。週末などに時間を作って取り組んでみましょう。
目標ペースを体に記憶させる「ペース走」
大会が近づいてきたら、目標とするレースペースで走る練習「ペース走」を取り入れましょう。たとえばサブ5を目指すなら、キロ7分のペースで5km〜10km程度を走ってみます。
最初は時計を頻繁に見ながら調整しても構いませんが、徐々に体感だけでペースを刻めるようにするのが理想です。「この腕の振り、この呼吸のリズムならキロ7分だ」という感覚を体に刷り込ませておくことで、本番でも無意識にペースを守れるようになります。
レース本番でペースを守るための具体的なコツと対策

いよいよ本番。練習通りのペースで走るためには、いくつかの具体的なテクニックがあります。これらを知っているだけで、レース展開がぐっと楽になります。
ペース表(ペースバンド)を身につける
目標タイムごとの通過時間を書いた紙やリストバンドを「ペース表」や「ペースバンド」と呼びます。これを手首に巻いて走るのが非常に効果的です。「5km地点は何分で通過すればいいか」が一目でわかるため、計算する必要がなくなります。
大会のウェブサイトでダウンロードできたり、スポーツショップで配布されていたりすることもありますが、自分で手書きしてテープで貼るだけでも十分です。こまめに通過タイムを確認することで、ペースの遅れや進みすぎにすぐ気づくことができます。
GPSウォッチやアプリを活用する
最近のランニングウォッチ(GPSウォッチ)は非常に高機能です。1kmごとに自動でラップタイム(その1kmにかかった時間)を教えてくれる機能は、ペース管理の強力な味方になります。
ただし、GPSの数値に一喜一憂しすぎるのも禁物です。ビル街やトンネルでは誤差が出ることがあるため、あくまで目安として使いましょう。「1kmごとの振動でペースを確認し、修正する」という使い方がおすすめです。スマートフォンのアプリでも同様の機能が使えます。
大会の「ペースランナー」についていく
多くの大きな大会では、目立つ風船やビブスをつけた「ペースランナー(ペーサー)」が走っています。「4時間」「5時間」など、目標タイムごとに設定されたペースで正確に走ってくれる、頼れる存在です。
自分の目標タイムのペーサーを見つけたら、その後ろについて走るだけで、自分でペースを作る必要がなくなります。風よけにもなるため、体力を温存できます。ただし、給水所などで混雑することもあるので、適度な距離を保ってついていきましょう。
給水所でのロスタイムを計算に入れておく
イーブンペースを目指すといっても、給水所ではどうしてもペースが落ちます。紙コップを取って飲み、呼吸を整えるためには、歩くに近い速度になることもあるでしょう。これを「失敗」と捉える必要はありません。
最初から「給水所では数十秒ロスする」と割り切って計画を立てておくと、気持ちに余裕が生まれます。給水後の1kmが少し遅くなっても、慌ててダッシュで取り戻そうとしないでください。ゆっくりと元のリズムに戻していくのが正解です。
30kmの壁を乗り越えるための後半のペース管理術

マラソンには「30kmの壁」という言葉があります。順調に走っていたのに、30kmを過ぎたあたりで急激に足が重くなり、ペースが落ちてしまう現象です。この壁を乗り越え、最後まで走り切るための対策をお伝えします。
なぜ30kmでペースが落ちるのかを知る
最大の原因は、体内のエネルギー(グリコーゲン)切れです。人間の体が蓄えられる糖質の量には限界があり、フルマラソンを走り切るには足りないと言われています。そのため、30km付近でガソリン欠の状態になり、脳が「これ以上動くな」と指令を出すのです。
これを防ぐには、レース中にジェルなどの補給食を早めに摂ることが重要です。「疲れてから」ではなく、10kmごとなど決めたタイミングでエネルギーをチャージし続けることで、急激なペースダウンを防ぐことができます。
「あと〇km」ではなく「次の5km」だけを考える
30km地点で「あと12kmもある」と考えると、精神的に押しつぶされそうになります。足が痛くてペースが維持できなくなったときは、思考を切り替えましょう。「とりあえず次の給水所まで」「次の5kmだけ頑張ろう」と、目標を細かく区切るのです。
メンタルとペースは密接に関係しています。気持ちが切れるとペースも一気に落ちます。小さな目標をクリアし続けることで、気づけばゴールが目の前まで迫っているはずです。
戦略的な「ラン&ウォーク」に切り替える
どうしても走り続けるのが辛くなったら、無理に走ろうとしてフォームを崩すよりも、「戦略的に歩く」ことを選びましょう。たとえば「1km走って1分歩く」や「電柱2本分歩いて走る」といったルールを決めます。
歩くことはリタイアではありません。筋肉を少し休ませることで回復し、また走れるようになることもあります。ズルズルとペースが落ち続けるより、メリハリをつけて進むほうが結果的に速くゴールできることも多いのです。
まとめ:マラソンペースを制して初心者でも笑顔でゴールしよう
マラソンのペースについて、初心者の方が知っておくべきポイントを解説してきました。最後に、重要な要点を振り返ってみましょう。
- ペースの基準:「1kmを何分で走るか」で管理する。
- 基本戦略:初心者は一定の速さを保つ「イーブンペース」が最強。
- 目標設定:完走狙いならキロ8分30秒、サブ5ならキロ7分が目安。
- 練習方法:「ニコニコペース」や「LSD」で基礎体力をつける。
- 本番のコツ:スタート直後は意識してゆっくり入り、ペース表を活用する。
- 後半対策:エネルギー補給を忘れず、辛い時は戦略的に歩いてもOK。
最初はペースを守るのが難しく感じるかもしれませんが、練習を重ねるうちに「自分のリズム」がつかめるようになります。大切なのは、周りのランナーと競うことではなく、昨日の自分や設定した目標と向き合うことです。
適切なペース配分さえできれば、フルマラソンは決して怖いものではありません。苦しい時間帯も必ずありますが、それを乗り越えてフィニッシュラインを超えた瞬間の達成感は、何物にも代えがたいものです。あなたに合ったペースを見つけ、最高のマラソンデビューを飾ってください。




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