フルマラソンやハーフマラソンに挑戦する際、パフォーマンスを大きく左右するのが水分補給です。単に喉が渇いたから飲むのではなく、適切なタイミングで「何を飲むか」を意識することで、後半の失速を防ぎ、目標タイムの達成に近づくことができます。
この記事では、マラソンでおすすめのドリンクについて、成分や種類、レースでの具体的な活用法を詳しく紹介します。初心者の方から記録更新を狙うランナーまで、役立つ情報が満載です。最後まで読んで、自分にぴったりのドリンク選びをマスターしましょう。
水分補給は、ただ水分を補うだけでなく、エネルギーの補給や筋肉の疲労軽減など、多くの役割を担っています。適切な知識を持ってレースに臨むことで、42.195kmという長い距離をより安全に、そして快適に走り抜くことができるようになります。
マラソン中のドリンク選びでおすすめの基準と知っておきたい種類

マラソンを完走するためには、体内の水分とミネラル、そしてエネルギーのバランスを維持することが不可欠です。ドリンク選びには明確な基準があり、状況に合わせて使い分けるのが理想的です。ここでは、ドリンクの基本となる種類について詳しく見ていきましょう。
吸収効率を左右するアイソトニックとハイポトニックの違い
スポーツドリンクには大きく分けて「アイソトニック」と「ハイポトニック」の2種類があります。アイソトニックドリンクは、体液とほぼ同じ浸透圧(しんとうあつ)で作られており、安静時や運動前などの吸収に優れています。ポカリスエットなどが代表的です。
一方のハイポトニックドリンクは、体液よりも低い浸透圧で作られています。運動中や大量に汗をかいた後は、体液が薄くなっているため、アイソトニックよりもハイポトニックの方が胃腸への負担が少なく、素早く水分を吸収できるというメリットがあります。
マラソンレースの本番では、後半になるほど胃腸の機能が低下しやすいため、ハイポトニックドリンクを選ぶのがおすすめです。市販のアイソトニック飲料を水で2倍程度に薄めることでも、簡易的にハイポトニックに近い状態を作ることが可能です。
エネルギー補給に欠かせない糖質(炭水化物)の含有量
フルマラソンでは約2,500kcal以上のエネルギーを消費します。体内に蓄えられているグリコーゲン(エネルギー源)だけでは足りなくなるため、ドリンクからも糖質を補う必要があります。糖質の濃度が高すぎると吸収が遅れ、低すぎるとエネルギー不足になります。
一般的に、運動中のドリンクに含まれる糖質濃度は4%から8%程度が適切とされています。最近では、高濃度でも素早くエネルギーに変わる「マルトデキストリン」などを含むドリンクも人気です。これはデンプンを分解したもので、胃への負担が少ないのが特徴です。
完走を目指すランナーにとって、ドリンクは水分であると同時に「エネルギーの源」でもあります。特に30km以降の「壁」を乗り越えるためには、適切な糖質配合のドリンクを意識的に選ぶことが、失速を防ぐ重要なポイントとなります。
筋肉のダメージをケアするBCAAやクエン酸の役割
長距離を走ると筋肉のタンパク質が分解され、ダメージが蓄積します。これを抑えるために有効なのが「BCAA」と呼ばれる必須アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)です。BCAAが含まれたドリンクを飲むことで、筋肉の損傷を軽減し、疲労感の緩和が期待できます。
また、クエン酸も重要な成分の一つです。クエン酸はエネルギー代謝を円滑にする働きがあり、運動中のエネルギー生成をサポートしてくれます。酸味があることで口の中がさっぱりし、長時間の走行で疲れた精神的なリフレッシュにも役立ちます。
多くのスポーツドリンクにはこれらが配合されていますが、含有量は製品によって異なります。足の痛みや疲労が心配な方は、アミノ酸含有量の高いドリンクを優先的に選ぶと良いでしょう。成分表示を確認する習慣をつけるのがおすすめです。
ドリンク選びの3つのポイント
1. 浸透圧を確認する(アイソトニックかハイポトニックか)
2. 糖質の種類と濃度をチェックしてエネルギー源を確保する
3. BCAAやクエン酸などの機能性成分が含まれているか見る
走る前から終わった後まで!マラソンの水分補給に最適なタイミング

ドリンクを選ぶのと同様に重要なのが、飲む「タイミング」です。マラソン当日の朝からレース後までの水分戦略を立てることで、脱水症状やパフォーマンスの低下を未然に防ぐことができます。時間軸に沿った具体的な補給方法を解説します。
レース開始前に行う「ウォーターローディング」の方法
レースが始まる前から水分補給の戦いは始まっています。これを「ウォーターローディング」と呼びます。具体的には、レースの数日前から1日1リットルから1.5リットル程度の水分を、数回に分けて少しずつ摂取し、体内の水分量を満たしておく方法です。
当日の朝も重要です。スタートの2時間前までに500ml程度のドリンクを飲み終えるようにしましょう。直前に一気に飲むと尿意を催す原因になるため、コップ1杯分(約200ml)を30分おきに飲むなど、こまめに摂取するのがコツです。
また、スタートの15分から30分前にも100mlから200ml程度を一口ずつ飲んでおくと、序盤の脱水を防ぐことができます。この時は、エネルギー効率を高めるために糖質を含んだスポーツドリンクを選ぶのが最も効果的と言えます。
レース中の基本ルールは「喉が渇く前に飲む」こと
マラソン走行中は、喉の渇きを感じた時点ですでに軽度の脱水が始まっていると言われています。そのため、コース上のエイドステーション(給水所)はすべて利用するつもりで、計画的にドリンクを摂取することが非常に重要です。
1回の給水量は100mlから200ml程度が目安です。あまりに大量に飲むと、走っている時の振動で胃がタプタプしてしまい、脇腹の痛みや不快感に繋がることがあります。一口含んでゆっくり飲み込むという動作を繰り返しましょう。
気温が高い日や湿度が低い日は、自覚症状がなくても汗が蒸発して水分が失われています。周囲のペースに流されず、自分の決めたタイミングで確実に補給を行うことが、後半まで体力を温存するための確実な方法です。
ゴール後のリカバリーを早めるためのアフターケア
完走直後の体は、水分とエネルギーが枯渇し、筋肉が大きなダメージを負った状態です。まずは失われた水分を速やかに補いましょう。ゴール後すぐにスポーツドリンクを飲むことで、胃腸をいたわりながらスムーズに補給を行うことができます。
このタイミングでは、筋肉の修復を早めるために、アミノ酸やタンパク質を含むドリンクが特におすすめです。また、内臓も疲れているため、冷たすぎる飲み物よりも、常温に近いものの方が体への負担を軽減し、吸収を穏やかにしてくれます。
レースが終わってから数時間は、尿の色をチェックしてみてください。色が濃い場合はまだ水分が不足しているサインです。透明に近い色になるまで、定期的に水分を摂り続けることで、翌日以降の筋肉痛や疲労の残り方が大きく変わります。
市販品から厳選!マラソンにおすすめのドリンク製品とその特徴

ドラッグストアやスポーツ用品店には、多種多様なスポーツドリンクが並んでいます。それぞれの製品には特徴があり、目的に応じて選ぶことが大切です。ここでは、多くのランナーに支持されているおすすめのドリンクを具体的に紹介します。
水分補給の定番!ポカリスエットとアクエリアスの使い分け
最も馴染み深い「ポカリスエット」は、体液に近い成分バランスを持つアイソトニック飲料です。糖質もしっかり含まれているため、レース前のエネルギー蓄積や、レース後のエネルギー補給に向いています。迷った時のスタンダードな選択肢です。
一方の「アクエリアス」は、アミノ酸やクエン酸が配合されているのが特徴です。また、多くのマラソン大会のエイドステーションで公式ドリンクとして採用されています。普段の練習から飲み慣れておくことで、本番でも胃腸のトラブルなく安心して飲むことができます。
これら定番製品は、どこでも手に入る安心感があります。もしレース中に「味が濃すぎる」と感じた場合は、一緒に提供される水と交互に飲むことで、体内の浸透圧バランスを調整することができます。自分なりの「黄金比」を見つけてみてください。
運動中の脂肪燃焼と筋肉維持に!アミノバリューとVAAM
「アミノバリュー」は、筋肉のエネルギー源となるBCAAを高含有しているドリンクです。4000mgものBCAAが配合されているタイプもあり、長距離走行による筋肉の分解を抑えたいランナーに最適です。持久力を高めたい時の強い味方になります。
「VAAM(ヴァーム)」は、スズメバチのスタミナに着目した独自のアミノ酸混合物(V.A.A.M.)を含んでいます。脂肪をエネルギーに変える力をサポートしてくれるため、エネルギー切れを防ぎたい方や、ダイエットを兼ねて走る方にも適しています。
これらのアミノ酸系ドリンクは、独特の風味がある場合があります。いきなり本番で使うのではなく、練習の中で一度試してみて、自分の口に合うか、飲んだ後に胃に不快感が出ないかを確認しておくことが大切です。
エリートランナーも愛用するモルテンとメダリストの威力
最近のトップランナーがこぞって使用しているのが「MAURTEN(モルテン)」です。ハイドロゲル技術により、高濃度の糖質を効率よく小腸へ届けることができます。非常に高価ですが、胃腸への負担が極めて低く、後半のエネルギー切れを強力に防いでくれます。
また、「メダリスト」はクエン酸の含有量が非常に多く、疲労回復に特化した製品として有名です。粉末タイプが多く、自分好みの濃度に調整できるのが魅力です。酸味が強いため、レース中の眠気覚ましやリフレッシュ効果も期待できます。
これらの高機能ドリンクは、ここぞという勝負レースで取り入れるのがおすすめです。特に30kmを過ぎてからエネルギー切れを感じやすいランナーは、モルテンのような革新的なドリンクを試してみる価値が十分にあります。
高機能ドリンクは事前に試飲を!
モルテンなどは独特の食感(とろみ)があるため、初めて飲むと驚くことがあります。高価なものほど、必ず練習で一度は試して、自分の体に合うかどうかを確かめましょう。
レース本番で失敗しないためのドリンクの飲み方と工夫

どんなに良いドリンクを選んでも、飲み方を間違えると十分な効果が得られません。マラソンレースという過酷な状況下で、効率よく安全に水分を摂取するための具体的なテクニックを紹介します。ちょっとしたコツで快適さが大きく変わります。
走りながら上手に飲む「カップの潰し方」テクニック
給水所で差し出される紙コップのドリンクを、走りながら飲むのは意外と難しいものです。そのまま口を付けると、鼻に入ったり、顔にかかったりしてしまいます。そこで試してほしいのが、コップの縁を指でつまんで細長く潰して飲む方法です。
コップの上部を折って注ぎ口を小さく作ることで、走りの振動があっても中身がこぼれにくくなり、少しずつ口に流し込むことができます。一度に飲み干そうとせず、数回に分けて少量ずつ喉に流すのが、むせないためのポイントです。
また、飲み終わったコップを投げ捨てず、指定のゴミ箱に確実に捨てることもマナーです。ゴミ箱が遠い場合は、しばらく手に持って走り、次のゴミ箱まで運びましょう。こうした心の余裕が、リズムの良い走行にも繋がっていきます。
エイドステーションの混雑を避ける立ち回り方
大きな大会の給水所は非常に混雑します。手前のテーブルは人が密集しやすいため、あえて奥のテーブルまで進んでから取るのがスマートな方法です。奥のテーブルの方が空いていることが多く、安全にドリンクを受け取ることができます。
ドリンクを取る際は、周囲のランナーと接触しないよう、斜め後ろを確認してから進路を変えましょう。急に止まったり、横にスライドしたりするのは転倒の原因になり危険です。手を挙げて「取ります」という合図を送るのも有効な手段です。
もし混雑がひどすぎて飲み損ねてしまった場合は、無理に逆走して戻るのではなく、次の給水ポイントを確実に取るように切り替えましょう。そのためにも、コースマップで給水所が何キロおきにあるかを事前に把握しておくことが大切です。
マイボトルやサプリメントを活用した個別対策
大会によっては「マイボトル」を置ける場合もありますが、一般ランナーは自分でドリンクを携帯することもあります。ウエストポーチに小さなボトルを入れておけば、自分の好きなタイミングで、自分に合ったドリンク(自作のスペシャルドリンクなど)を飲むことが可能です。
また、エイドのドリンクだけでなく、濃縮された「ジェル」を併用するのもおすすめです。ジェルを口に含んだ後に、エイドの水で流し込むようにすると、エネルギーと水分を同時に、かつ効率的に補給できます。ジェルの甘さを水でリセットできるのも利点です。
最近では、水に溶かすだけで経口補水液が作れるタブレットなども販売されています。これらをレース中に活用することで、市販のスポーツドリンクだけでは補いきれない電解質(塩分など)を補強し、足つり予防に役立てるランナーも増えています。
本番で役立つ給水テクニックまとめ
・紙コップは上部を潰して「注ぎ口」を作る
・混雑している手前を避け、奥のテーブルでドリンクを取る
・ジェルを飲んだ直後に水を飲み、吸収を早める
ドリンク補給で注意すべきポイントと脱水・足つり対策

水分補給は重要ですが、ただ飲めば良いというわけではありません。間違った補給方法は、逆に体調を崩す原因になることもあります。安全に走り切るために、特に注意すべきリスクと、その対策について解説します。
足つりの原因は塩分不足!電解質の重要性
マラソン後半に多くのランナーを悩ませる「足つり」は、筋肉の疲労だけでなく、体内の「電解質(特にナトリウムやマグネシウム)」のバランスが崩れることで起こります。水だけを飲み続けていると、血中の塩分濃度が下がり、さらに足がつりやすくなります。
そのため、おすすめなのが「経口補水液」や「塩分濃度の高いスポーツドリンク」の活用です。特に汗を大量にかく場面では、水ではなく塩分が含まれたドリンクを選ぶことが鉄則です。市販のドリンクに加えて、塩飴や塩タブレットを併用するのも非常に効果的です。
マグネシウムが含まれているドリンクも、筋肉の収縮を正常に保つために役立ちます。もし足がピクピクし始めたら、それは電解質不足のサインかもしれません。早めに塩分と水分をセットで補給し、症状が悪化するのを防ぎましょう。
飲み過ぎに注意!「低ナトリウム血症(水中毒)」のリスク
意外かもしれませんが、水分の「摂りすぎ」も危険です。短時間に大量の水を飲むと、血液中のナトリウム濃度が異常に低くなり、「低ナトリウム血症(水中毒)」を引き起こすことがあります。頭痛や吐き気、ひどい場合には意識障害を招くこともあります。
これは、一生懸命に給水しようとする初心者ランナーや、ゆっくり長い時間をかけて走るランナーに起こりやすいと言われています。自分の発汗量以上に水分を摂りすぎて、お腹がチャプチャプ鳴るような状態は、補給のペースが速すぎる証拠です。
大切なのは「適量」を知ることです。体重がレース前後で2%以上減らないようにするのが理想ですが、逆に増えている場合は飲み過ぎの可能性があります。自分の発汗傾向を練習中に把握し、適切な量を少しずつ摂取する習慣をつけましょう。
胃腸トラブルを防ぐためのドリンクの温度
夏のレースなどでは冷たいドリンクが美味しく感じられますが、冷えすぎた飲料は胃腸を刺激し、腹痛や下痢の原因になります。また、内臓が冷えることで消化吸収能力が落ち、エネルギー不足に陥るという悪循環を招くこともあります。
理想的な温度は5度から15度程度とされています。エイドステーションで提供されるドリンクは適切に管理されていることが多いですが、自分で用意する場合はキンキンに冷やしすぎないように注意しましょう。一口ずつゆっくり飲むことで、口の中で少し温度を上げてから飲み込むのも一つのテクニックです。
もしレース中に胃がムカムカしてドリンクを受け付けなくなった場合は、無理に飲もうとせず、口をゆすぐだけでも効果があります。また、真水で顔や首筋を冷やすことで体温を下げ、内臓の負担を軽くしてから、再び少量ずつの補給を試みてください。
| 症状 | 原因 | ドリンクでの対策 |
|---|---|---|
| 足がつる | 塩分(ナトリウム)・マグネシウム不足 | 経口補水液、塩分配合ドリンクの摂取 |
| 吐き気・頭痛 | 水の摂りすぎによる低ナトリウム血症 | 水だけでなく、塩分入りのドリンクを飲む |
| お腹の痛み | ドリンクの温度が低すぎる、一気飲み | 常温に近い温度で、少量ずつゆっくり飲む |
マラソンでおすすめのドリンク選びと補給方法のまとめ
マラソンを成功させるためのドリンク選びは、単なる喉の渇きを癒やす手段ではなく、戦略的な「補給」の一部です。まず自分の走る目的や体質に合わせて、アイソトニックやハイポトニック、アミノ酸含有量などの基準でドリンクを選ぶことから始めましょう。
レース前からの「ウォーターローディング」で体内の水分を満たし、レース中は「喉が渇く前に少しずつ」飲むことが、脱水や足つりを防ぐための最大の防御策となります。また、モルテンやメダリストのような高機能ドリンクを勝負どころで活用するのも、記録を狙う上では有効な選択です。
ただし、どんなに評判の良いドリンクでも、当日の体調や相性によって効果は変わります。必ず普段の練習から、今回紹介した飲み方や製品を試しておきましょう。自分の体に合う「おすすめの一本」を見つけることが、完走への一番の近道です。
水分補給を制する者は、マラソンを制すると言っても過言ではありません。適切な知識と準備を持って、万全の状態でスタートラインに立ちましょう。あなたのマラソンライフが、より豊かで感動的なものになることを応援しています。





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