「6月にマラソン大会なんてあるの?」「梅雨の時期はどうやって練習すればいい?」そんな疑問をお持ちのランナーは多いのではないでしょうか。日本では6月といえば梅雨入りし、湿気が多く蒸し暑い日が続くため、マラソンには不向きな季節と思われがちです。
しかし、実は北海道や標高の高い高原エリアでは、この時期だからこそ楽しめる魅力的な大会が数多く開催されています。また、秋の主要なフルマラソン大会に向けた「基礎作り」や「暑熱順化(しょねつじゅんか)」のためにも、6月の過ごし方は非常に重要です。
この記事では、6月のマラソン大会の選び方から、雨や暑さに負けないウェア選び、そして効果的なトレーニング方法までを詳しく解説します。
6月のマラソン大会の特徴とエントリーのポイント

6月は日本の多くの地域で梅雨入りするため、ロードレースのオフシーズンと捉えられることが多いですが、ランナーにとっては非常に重要な「切り替え」の時期でもあります。この時期の大会には独自の魅力があり、選び方ひとつでランニングライフが大きく充実します。
雨対策と暑さ対策の両方が必要な難しい季節
6月の気候は、ランナーにとって最も判断が難しい時期の一つと言えます。梅雨前線の影響で雨の日が多くなる一方で、晴れ間が出ると気温が30度近くまで上昇し、真夏のような暑さになることもあるからです。特に注意が必要なのが湿度です。気温がそこまで高くなくても湿度が80%を超えると、汗が蒸発しにくくなり、体温調整がスムーズにいかなくなります。そのため、6月の大会に参加する場合は、低温の雨に打たれて体が冷える「低体温症」のリスクと、高温多湿による「熱中症」のリスク、この相反する2つの対策を同時に準備しておく必要があります。大会当日の天気予報を細かくチェックし、スタート直前までウェアの調整ができる準備をしておくことが、6月のレースを攻略する最初の一歩となります。
北海道や高原など涼しい地域の大会が圧倒的に人気
本州が梅雨空に覆われる6月ですが、北海道には梅雨がない(または非常に短い)と言われています。そのため、この時期は北海道で開催されるマラソン大会が非常に活況を呈します。新緑が美しい季節に、爽やかな風を感じながら走ることができる北海道の大会は、全国のランナーから「旅ラン」の目的地として大人気です。また、本州であっても標高が高い高原エリア(長野県や岐阜県の山間部など)では、平地よりも気温が低く、快適に走れる大会が開催されています。これらの大会は、避暑を兼ねて旅行気分で参加できるため、家族や友人を誘ってのエントリーにも最適です。ただし、人気大会はすぐに定員に達することもあるため、早めの情報収集が欠かせません。
秋のメイン大会に向けた「脚作り」として活用
多くの市民ランナーにとって、最大の目標は10月から12月にかけて開催される都市型の大規模フルマラソンではないでしょうか。6月の大会は、そうした秋の本番に向けた「ステップアップ」として位置づけられることが多いです。例えば、秋にフルマラソン完走を目指すなら、6月にはハーフマラソンや10kmの大会に出て、スピード感覚を養ったり、レースの雰囲気に慣れておいたりするのが効果的です。また、あえて起伏の激しいコースや、長距離を走るウルトラマラソンに挑戦することで、精神力とスタミナの土台(ベース)を作るランナーもいます。タイムを狙うというよりは、現在の走力を確認し、夏場のトレーニング課題を見つけるための「模試」のような感覚で活用するのがおすすめです。
エントリー時期はいつ頃?早めの計画が大切
6月に開催される大会のエントリーは、一般的に半年前の12月から年明けの1月、2月頃に開始されることが多いです。特に北海道の人気大会や、リゾート地で開催されるイベント性の高い大会は、エントリー開始から数日で定員が埋まってしまうことも珍しくありません。また、6月は大会参加だけでなく、秋開催の人気大会(東京マラソン、大阪マラソン、横浜マラソンなど)のエントリー抽選が始まる時期でもあります。つまり、6月は「走る」だけでなく、年間のレーススケジュールを確定させるための「事務手続き」も忙しい月なのです。うっかりエントリーを忘れてしまうと、秋の目標を失ってしまうことにもなりかねませんので、カレンダーに予定を書き込み、計画的に行動しましょう。
6月におすすめの注目マラソン大会【北海道・避暑地】

湿度の高い本州を脱出して、快適な環境で走りたいランナーにおすすめの大会をご紹介します。どれも景色が良く、旅行とセットで楽しめる素晴らしい大会ばかりです。
新緑の北海道を走る!千歳JAL国際マラソン
北海道の玄関口、新千歳空港からアクセス抜群の場所で開催される「千歳JAL国際マラソン」は、6月の定番とも言える超人気大会です。この大会の最大の特徴は、コースの大部分が未舗装の林道(森林コース)であることです。アスファルトからの照り返しがないため、通常のロードレースよりも体感温度が涼しく、木漏れ日の中を駆け抜ける爽快感は格別です。また、新緑のトンネルが続くコースは目に優しく、マイナスイオンをたっぷり浴びながら走ることができます。土の地面は脚への衝撃を和らげてくれるため、怪我のリスクを抑えながら長い距離を走りたいランナーにも適しています。ゴール後には北海道グルメを楽しめるブースも充実しており、まさに「北海道ラン」の醍醐味を凝縮したような大会です。
絶景と厳しさが魅力!飛騨高山ウルトラマラソン
岐阜県高山市で開催される「飛騨高山ウルトラマラソン」は、その過酷さと絶景で知られる名物大会です。100kmと71kmの部があり、累積標高差は非常に大きく、いくつもの峠を越えるハードなコース設定となっています。しかし、苦しい坂道を登り切った先には、北アルプスの雄大な山々や、日本の原風景とも言える美しい里山の景色が待っています。さらに、世界遺産・白川郷の合掌造り集落(コース設定による)や、古い町並みを走ることができるのも大きな魅力です。6月の高山は日中の気温が上がることがありますが、早朝のスタート時はひんやりとしています。地域住民の温かい応援やおもてなしも評判で、完走した時の達成感は一生の思い出になることでしょう。自分の限界に挑戦したいランナーにおすすめです。
観光とランを両立!函館マラソン
北海道新幹線の開通によりアクセスが向上した函館市で開催される「函館マラソン」も、6月下旬から7月上旬にかけて開催される人気の大会です。ハーフマラソンとフルマラソンの部があり、特にフルマラソンは「日本一過酷なファンラン」というキャッチコピーがつくほど、アップダウンのある走りごたえのあるコースです。函館山や津軽海峡、歴史的な赤レンガ倉庫群など、函館の主要な観光スポットを巡るコース設定は走っていて飽きることがありません。そして何より楽しみなのがエイドステーション(給水所)です。海鮮丼や塩ラーメン、メロンなど、北海道ならではの豪華な給食が提供されることで有名です。記録を狙うシリアスランナーから、食と観光を楽しみたいファンランナーまで、幅広い層が楽しめるお祭りのような大会です。
「さくらんぼ」を堪能!果樹王国ひがしねさくらんぼマラソン
山形県東根市で開催されるこの大会は、その名の通り「さくらんぼ」が旬を迎える6月に開催されます。参加賞として高級さくらんぼ「佐藤錦」がもらえるだけでなく、コース上のエイドステーションでもさくらんぼが振る舞われるという、フルーツ好きにはたまらない大会です。また、ゲストランナーが豪華であることや、自衛隊の駐屯地内を走れる珍しいコース設定も話題を集めています。コースは比較的フラットで走りやすく、ハーフマラソンの自己ベスト更新を狙うランナーも多く参加します。地元の方々の熱心な応援とおもてなしの心が感じられる温かい大会であり、全国から多くのリピーターが訪れます。走り終わった後は山形の名湯で汗を流し、美味しいお蕎麦や日本酒を楽しむのも良いでしょう。
梅雨時期でも快適に!6月のランニングウェアとアイテム選び

雨が多く、湿度が高い6月のランニングを快適にする鍵は、ウェアとアイテム選びにあります。不快感を減らし、トラブルを防ぐための装備を整えましょう。
濡れても重くならない撥水・速乾ウェアの重要性
雨の日のランニングで最も避けるべきなのは、綿(コットン)素材のウェアです。綿は水分を吸うと重くなり、肌に張り付いて体温を奪う原因になります。6月は必ずポリエステルなどの化学繊維で作られた「吸汗速乾性」の高いウェアを選びましょう。さらに一歩進んでおすすめしたいのが、「撥水(はっすい)加工」が施されたウェアです。完全防水のレインコートは内側が蒸れて汗だくになってしまうことが多いですが、撥水加工の薄手ウィンドブレーカーやシャツなら、通気性を保ちながら小雨を弾いてくれます。ウェアが水分を含まなければ、身体の冷えも防げますし、重さによるストレスも軽減されます。「濡れることを前提」にしつつ、いかに肌離れの良い状態をキープできるかがポイントです。
雨の侵入を防ぐキャップとサングラスの効果
雨の日のランニングで実は一番のストレスになるのが、「顔や目に雨がかかること」です。雨粒が目に入ると視界が悪くなるだけでなく、無意識に目を細めたり瞬きが増えたりして、顔の筋肉が疲れ、それが全身の疲労感に繋がります。そこで必須アイテムとなるのが、ツバの長いランニングキャップです。キャップのツバが屋根の役割を果たし、雨が直接顔にかかるのを防いでくれます。さらに、色が薄めのスポーツサングラスを併用すると完璧です。サングラスは雨粒や風から目を物理的に守ってくれるため、雨天時でも集中力を切らさずに走ることができます。視界がクリアであることは、スリップなどの危険回避にも役立ちますので、6月のランニングにはキャップとサングラスをセットで用意しましょう。
靴擦れやマメを防ぐソックスとケア用品
雨でシューズの中が濡れると、皮膚がふやけて柔らかくなり、普段よりも靴擦れやマメ(水ぶくれ)ができやすくなります。これを防ぐためには、ソックス選びが重要です。おすすめは「5本指ソックス」です。指と指の間の摩擦が減り、それぞれの指が独立しているため蒸れも軽減されます。また、素材としては「和紙」を使ったソックスや、ドライ機能の高いスポーツ専用ソックスを選びましょう。さらに事前のケアとして、足の指や裏、踵など、摩擦が起きやすい部分に「ワセリン」や「皮膚保護クリーム」をたっぷりと塗っておくことを強くおすすめします。クリームが油膜となって水を弾き、皮膚を摩擦から守ってくれます。このひと手間で、レース後半の足の痛みが劇的に変わります。
スマホや貴重品を守る防水ポーチの活用
最近はスマートフォンを持って走るランナーがほとんどですが、6月の突然の雨による水没故障は絶対に避けたいところです。ジップロックなどの密閉袋に入れるのも一つの手ですが、操作性や耐久性を考えると、専用の「防水ポーチ」を用意するのがベストです。ランニング用の防水ポーチは、身体にフィットして揺れにくい構造になっており、タッチパネル操作が可能な透明窓がついているものも多くあります。また、車のスマートキーなども水に弱いため、防水対策は必須です。ポーチだけでなく、リュック自体に防水カバーがついているものや、ロールトップ式の防水バッグ(ドライバッグ)を活用するのも良いでしょう。「中身は絶対に濡らさない」という安心感があれば、雨の中のランニングも心置きなく楽しめます。
湿気に負けない!6月の効果的なトレーニング方法

「外を走りたくても雨で走れない」という日が増える6月。しかし、工夫次第で非常に質の高いトレーニングが可能です。夏本番を迎える前の準備期間として、この時期ならではの練習に取り組みましょう。
雨の日はジムを活用!トレッドミルでの練習法
雨が強くて外に出るのが危険な場合や、どうしても濡れたくない日は、スポーツジムのトレッドミル(ランニングマシン)を積極的に活用しましょう。「景色が変わらなくて飽きる」という声も聞かれますが、トレッドミルには「一定のペースを正確に刻める」「傾斜をつけて坂道練習ができる」という大きなメリットがあります。例えば、傾斜を1〜2%つけることで、空気抵抗がない室内でも屋外と同じような負荷をかけることができます。また、足元が安定しているため、ランニングフォームの確認や改善に集中するのに最適な環境です。鏡で自分の走りを見ながら、腕振りや着地を確認する技術練習の時間に充てましょう。冷房の効いた環境なら、熱中症のリスクを抑えつつ質の高い練習ができます。
短時間で心肺機能を高めるインターバル走
梅雨の合間の晴れ間は湿度が高く、長時間走り続ける「LSD(ロング・スロー・ディスタンス)」のような練習は体への負担が大きすぎることがあります。そこで6月におすすめなのが、短時間で高い効果が得られる「インターバル走」などのスピード練習です。「1kmを全力の8割で走り、2分休む」を5本繰り返すといったメニューなら、トータルの時間は短くても心肺機能(VO2Max)を効率よく向上させることができます。短い時間で集中して追い込むことで、暑さによるダメージを最小限に抑えつつ、秋のレースに向けたスピードの土台を作ることができます。ダラダラと長く走るのではなく、「短く、太く」を意識したメリハリのある練習に切り替えましょう。
あえて雨の中を走る「シャワーラン」のメリット
小雨程度であれば、あえて外に出て走る「シャワーラン」もおすすめです。6月は気温が高くなってくる時期なので、雨が天然の冷却シャワーとなり、晴れている日よりも体温上昇を抑えて快適に走れることがあります。また、雨の中を走ることはメンタルトレーニングにもなります。マラソン大会当日は晴れるとは限りません。練習で雨の不快感や、濡れた路面の滑りやすさ、ウェアの重さなどを経験しておけば、本番で雨が降っても「経験済みだから大丈夫」と落ち着いて対応できます。ただし、視界が悪いため車や自転車には十分注意し、明るい色のウェアを着て自分の存在をアピールするようにしてください。走り終わった後はすぐにお風呂に入って体を温めるケアも忘れずに。
暑熱順化(しょねつじゅんか)を意識した体づくり
6月のトレーニングで最も意識すべきキーワードが「暑熱順化(しょねつじゅんか)」です。これは、本格的な夏が来る前に、体を暑さに慣れさせることを指します。人間の体は、暑さに慣れていないと汗をうまくかけず、体内に熱がこもって熱中症になりやすくなります。6月のうちから少しずつ汗をかく習慣をつけることで、血液の循環が良くなり、塩分濃度の低いサラサラとした汗をかけるようになります。具体的な方法としては、気温が高めの時間帯にあえてウォーキングや軽いジョギングを行ったり、入浴に時間をかけて汗をかいたりすることが有効です。一般的に暑熱順化には2週間程度かかると言われています。7月、8月の過酷な環境で走り込みを行うためには、6月のこの準備期間が絶対に欠かせません。
暑熱順化のコツ
無理に炎天下を走る必要はありません。まずは「お風呂上がりに汗をかくのを嫌がらない」ことから始め、徐々に気温が高い環境での運動時間を延ばしていきましょう。
6月のマラソンで注意すべき体調管理とトラブル対策

最後に、この時期特有の健康リスクとその対策について解説します。油断していると重大な事故につながることもあるため、知識として持っておくことが大切です。
隠れ脱水に注意!湿度が高い日の水分補給
6月は真夏ほどの気温ではないため、喉の渇きを感じにくいことがあります。しかし、湿度が高いと汗が蒸発せず、皮膚の表面に留まるため、「体温を下げる」という汗の機能が働きにくくなります。その結果、本人は気づかないうちに大量の汗をかいており、体内の水分とミネラルが失われる「隠れ脱水」の状態に陥りやすいのです。喉が渇いたと感じた時には、すでに脱水が始まっています。走る前には必ずコップ1〜2杯の水を飲み、走行中も15分〜20分おきに少量の水分を補給するよう心がけましょう。また、水だけでなく、失われた塩分やミネラルを補給できるスポーツドリンクや経口補水液を利用することが、パフォーマンス維持と安全確保の鉄則です。
汗で冷える「汗冷え」対策と着替えの準備
雨や湿気でウェアが濡れた状態で、風に吹かれたり、信号待ちや休憩で立ち止まったりすると、急激に体温が奪われる「汗冷え」が起こります。特に山間部の大会や、気温が下がる夕方の練習では注意が必要です。体が冷えると筋肉が固まり、痙攣(足つり)の原因になるだけでなく、免疫力が低下して風邪を引きやすくなります。これを防ぐためには、前述した撥水・速乾ウェアの着用に加え、お腹周りを冷やさないことが重要です。また、練習やレースが終わったら、たとえ面倒でも「すぐに」乾いた服に着替えることを徹底してください。車で移動する場合などは、着替えとタオルを多めに用意し、濡れた服のままで過ごす時間を1分でも短くすることが、疲労回復を早めるポイントです。
低体温症のリスクを知っておく
「6月に低体温症?」と驚くかもしれませんが、雨風にさらされ続ける長時間のアウトドアスポーツでは、季節を問わず低体温症のリスクがあります。特にウルトラマラソンやトレイルランニングなど、長時間山の中にいる場合、気温が15度前後であっても、濡れた体と強風の組み合わせで体感温度は氷点下近くまで下がることがあります。体の震えが止まらない、判断力が鈍る、指先が動かないといった症状が出たら危険信号です。このような状況に備えて、軽量のウィンドブレーカーや、エマージェンシーシート(保温シート)を携帯することをおすすめします。「夏だから大丈夫」という過信は捨て、自然環境の厳しさを想定した準備をしておくことが、自分自身の命を守ることに繋がります。
まとめ:6月のマラソンを充実させて秋シーズンへ繋げよう
6月は梅雨や湿度の影響で、ランナーにとっては一見走りにくい季節のように思えます。しかし、北海道や高原で開催される魅力的な大会を選んだり、雨の日ならではの練習や暑熱順化に取り組んだりすることで、非常に有意義な時間を過ごすことができます。ここでのポイントを振り返ります。
記事のポイント
●大会選び:梅雨のない北海道や、涼しい高原エリアの大会がおすすめ。
●ウェア:撥水・速乾素材を選び、キャップとサングラスで雨対策を。
●練習:ジムのトレッドミルや短時間集中型の練習を取り入れ、暑熱順化を意識する。
●体調管理:高湿度による隠れ脱水と、濡れた後の汗冷え・低体温症に十分注意する。
6月を単なる「オフシーズン」としてダラダラ過ごしてしまうか、秋の自己ベスト更新に向けた「準備期間」として戦略的に過ごすかで、その後のランニングライフは大きく変わります。雨音を聞きながら走るシャワーランの爽快感や、新緑の北海道を駆け抜ける喜びは、この時期にしか味わえない特別な体験です。ぜひしっかりとした準備と対策を行って、6月のマラソンライフを楽しんでください。




コメント