フルマラソンを4時間以内で完走する「サブ4」は、多くのランナーにとって大きな目標の一つです。全ランナーの上位約20~30%に入ると言われており、達成には計画的な練習と戦略的なペース配分が欠かせません。この記事では、マラソン4時間のペースを維持するための具体的な計算方法や、失速を防ぐためのトレーニングについて詳しく解説します。
サブ4を目指す過程で、自分の現在の走力を見つめ直し、適切な負荷で走る方法を学ぶことは、完走後の達成感をより大きなものにしてくれるはずです。初心者からステップアップしたい方も、あと一歩で4時間が切れない方も、この記事を参考に理想のペースを身につけて、目標達成への一歩を踏み出しましょう。
マラソン4時間(サブ4)のペース設定と基本的な計算方法

フルマラソンで4時間を切るためには、まず正確なペースを把握することがスタート地点となります。ただ闇雲に走るのではなく、1キロごとのラップタイムを意識し、自分の走りを客観的にコントロールする技術が必要です。
1キロ5分41秒が目安!完走するための基本ペース
フルマラソン42.195キロを4時間(240分)ちょうどで走る場合、平均ペースは1キロあたり約5分41秒となります。しかし、実際のレースではスタート直後の混雑や給水ポイントでの減速があるため、ギリギリのペース設定では目標達成が難しくなるのが現実です。
そのため、本番では1キロあたり5分35秒から5分40秒程度を目標に刻むのが理想的です。この5秒から6秒の余裕が、後半の疲労や予期せぬトラブルに対するバッファー(余裕)として機能します。まずはこの5分40秒という数字を体に染み込ませることから始めましょう。
練習の段階から、この「サブ4ペース」でどれだけ楽に走り続けられるかを確認してください。呼吸が乱れず、会話ができる程度の余裕を持ってこのペースを維持できるようになれば、サブ4達成の可能性はぐっと高まります。自分の感覚と実際の時計のズレをなくしていくことが大切です。
【サブ4達成の目安ペース】
・計算上の平均ペース:5分41秒/km
・推奨する目標ペース:5分35秒〜5分40秒/km
・5kmごとの通過目標:28分20秒前後
スタートの混雑を考慮した「ネットタイム」でのペース管理
マラソン大会には、スタートの号砲が鳴ってからゴールするまでの「グロスタイム」と、自分がスタートラインを越えてからゴールするまでの「ネットタイム」の2種類があります。数万人規模の大会では、スタートラインを越えるまでに10分以上かかることも珍しくありません。
一般的に、個人の記録として語られるのはネットタイムであることが多いですが、大会の公式記録や順位はグロスタイムで判定されることが一般的です。自分がどちらで4時間を切りたいのかを明確にしておきましょう。もしグロスでのサブ4を狙うなら、スタートのロスタイム分をどこかで取り返す必要があります。
ただし、焦って最初の数キロで一気にロスタイムを取り返そうとするのは禁物です。序盤のオーバーペースは30キロ以降の大きな失速を招きます。ロスタイムは15キロから20キロかけて少しずつ解消していく、あるいは最初からネットタイムでの4時間切りに集中するといった冷静な判断が求められます。
5キロごとの通過タイムを把握してリズムを作る
レース中は1キロごとの確認も大切ですが、5キロ単位での通過タイム(スプリット)を把握しておくと、より大局的なペース管理が可能になります。5キロを「28分20秒」で走り続けることができれば、最終的なタイムは3時間59分10秒前後となり、見事にサブ4達成となります。
このように5キロごとの目標を定めておくと、多少のペースの上下があっても「次の5キロで修正しよう」と心に余裕を持つことができます。1キロごとの一喜一憂を防ぎ、安定したリズムを刻むことが完走への近道です。また、多くの大会では5キロごとに計測マットが設置されているため、確認も容易です。
以下の表は、サブ4を達成するための理想的な5キロごとの通過タイム一覧です。この数値を頭に入れておくか、リストバンドなどにメモして身につけておくと、レース中の強い味方になってくれるでしょう。
| 距離 | 区間タイム(5km) | 累計タイム |
|---|---|---|
| 5km | 28:20 | 0:28:20 |
| 10km | 28:20 | 0:56:40 |
| 15km | 28:20 | 1:25:00 |
| 20km | 28:20 | 1:53:20 |
| 中間点 | – | 1:59:30 |
| 25km | 28:20 | 2:21:40 |
| 30km | 28:20 | 2:50:00 |
| 35km | 28:20 | 3:18:20 |
| 40km | 28:20 | 3:46:40 |
| Finish | – | 3:59:10 |
サブ4達成に必要な脚力と持久力を養うトレーニング

フルマラソン4時間のペースで走り切るためには、スタミナだけでなく、ある程度のスピード持久力も必要です。ただ長く走るだけの練習から卒業し、目的を持った複数の練習メニューを組み合わせることが、効率的な走力向上につながります。
ペース感覚を体に覚え込ませる「ペース走」の重要性
サブ4達成に最も直結する練習が、一定の距離を目標ペースで走り続ける「ペース走」です。1キロ5分40秒というペースを、考えなくても体が勝手に刻めるようにするのが目的です。まずは10キロから始め、徐々に15キロ、20キロと距離を伸ばしていきましょう。
ペース走を行う際は、前半と後半でタイムが大きく変わらないように意識してください。心拍数が一定に保たれているか、フォームが崩れていないかを確認しながら走るのがコツです。週に1回、このペース走を取り入れることで、目標とするスピードに対する余裕度が格段に上がります。
また、目標ペースよりも少し速い「1キロ5分20秒」程度でのペース走を行うことも効果的です。あえて少し負荷をかけることで、本番の5分40秒が非常に楽に感じられるようになります。これを「スピードの余裕度」と呼び、後半の粘り強さを生む土台となります。
スタミナの土台を作る「LSD」と「ロングラン」
マラソンの後半で失速しないための足を作るには、ゆっくりと長い時間走り続けるLSD(ロング・スロー・ディスタンス)が有効です。キロ7分から8分程度のゆっくりとしたペースで、90分から120分、あるいは180分ほど走り続けます。これにより、毛細血管が発達し、酸素を運ぶ能力が高まります。
LSDはスピードを出す必要がないため、怪我のリスクを抑えつつスタミナを強化できるのがメリットです。脂肪をエネルギーとして使いやすい体質へと変えていく効果も期待できます。週末など、まとまった時間が取れる日にリラックスして行いましょう。景色を楽しみながら走ることで、精神的な持久力も養われます。
レース1ヶ月前までには、30キロ程度のロングランを一度は経験しておきたいところです。30キロという距離を体験しておくことで、自分の体へのダメージ具合や、補給のタイミングをシミュレーションできます。このときは本番ペースより30秒ほど遅くても構いません。とにかく距離を踏むことに意味があります。
スピードに余裕を持たせるための「インターバル走」
「自分にはスピードが足りない」と感じているなら、インターバル走を取り入れましょう。例えば、1000メートルを全力の8割から9割の力で走り、その後に200メートルほどのジョギングで繋ぐ、といったメニューを5本から7本繰り返します。設定タイムは1キロ4分50秒から5分00秒程度が目安です。
インターバル走は心肺機能に強い負荷をかけるため、効率よく最大酸素摂取量を引き上げることができます。サブ4を目指すランナーにとって、スピード練習は必須ではないと思われがちですが、最大スピードの底上げは結果として長距離の楽な巡航に繋がります。
ただし、負荷が高い練習であるため、やりすぎには注意が必要です。週に何度も行うのではなく、10日に1回、あるいは疲労が抜けている時だけ行うようにしてください。練習の前後には十分なストレッチを行い、筋肉のトラブルを防ぐ意識を持つことが、継続的なトレーニングを可能にします。
レース当日にバテないための賢い補給戦略

マラソン4時間のペースを維持するためには、体内のエネルギー管理が極めて重要です。どれだけ練習を積んでいても、エネルギーが枯渇してしまえば足は動きません。30キロ以降にやってくる「壁」を乗り越えるための補給術をマスターしましょう。
30キロ以降のエネルギー切れを防ぐ補給食のタイミング
人間の体に蓄えられる糖質(グリコーゲン)の量には限りがあり、フルマラソンを走り切るには不足してしまいます。そのため、走りながら外部からエネルギーを摂取することが不可欠です。目安として、10キロ、20キロ、30キロといった区切りでエネルギージェルを摂取しましょう。
補給のコツは「お腹が空く前に摂る」ことです。空腹を感じてからでは吸収が間に合わず、失速を招いてしまいます。1回あたり100キロカロリーから150キロカロリー程度のジェルを、計画的に流し込みましょう。最近ではカフェイン入りのものもあり、後半の集中力を高めるのに役立ちます。
ジェルの味や飲みやすさは個人差があるため、必ず練習の段階で試しておくようにしてください。本番で初めて使うジェルが体に合わず、胃もたれを起こしてしまっては元も子もありません。自分の口に合うものを数種類用意し、レース中の楽しみの一つにするのも良い方法です。
足のトラブルを未然に防ぐ水分・電解質補給
サブ4ペースで4時間走り続けると、発汗により水分だけでなく塩分やマグネシウムなどの電解質も失われます。これが不足すると足がつりやすくなり、大幅なペースダウンを余儀なくされます。給水所では水だけでなく、スポーツドリンクを積極的に選ぶようにしましょう。
一度に大量の水を飲むと胃が揺れて苦しくなるため、各給水所でコップ1杯分を少しずつ口にするのがポイントです。また、塩分タブレットや電解質補給のサプリメントを携帯し、15キロ付近と25キロ付近で摂取するのも、足つり予防に非常に効果的です。
特に気温が高い日のレースでは、脱水症状のリスクが高まります。喉が渇いたと感じる前に、定期的に潤すことを徹底してください。給水所で立ち止まってしまうとリズムが崩れるため、走りながらスムーズに飲む技術も練習しておくと安心です。コップの縁を折って、注ぎ口を作ると飲みやすくなります。
レース数日前から始める食事管理とコンディショニング
補給戦略はレース中だけではありません。数日前から「カーボローディング」と呼ばれる、炭水化物を多めに摂る食事法を取り入れることで、体内のグリコーゲン貯蔵量を最大化できます。パスタやうどん、お米などを中心としたメニューに切り替え、エネルギーを蓄えましょう。
ただし、極端に食べ過ぎて胃腸を壊しては意味がありません。普段の食事にプラス一品、炭水化物を増やす程度の意識で十分です。また、生ものや脂っこいものは避け、消化の良いものを中心に選ぶようにしてください。十分な睡眠を取り、内臓を休めることも大切なコンディショニングです。
当日の朝食は、スタートの3時間前までに済ませるのが鉄則です。おにぎりやカステラ、バナナなど、すぐにエネルギーに変わるものを選びましょう。また、直前にアミノ酸サプリメントを摂取しておくことで、筋肉の損傷を抑え、後半の粘りへと繋げることができます。
マラソン4時間切りを後押しするギアの選び方

道具の力を借りることも、サブ4達成には重要な要素です。自分の走力やフォームに合った適切なギアを選ぶことで、疲労を軽減し、4時間のペース維持をより楽にすることができます。
サブ4ランナーに適したランニングシューズの基準
シューズ選びで最も大切なのは「クッション性」と「反発性」のバランスです。最近流行の厚底カーボンシューズは、高い反発力が魅力ですが、使いこなすには相応の筋力が求められます。サブ4を目指す段階では、足を保護するクッションがしっかりしており、かつ適度な反発があるモデルが最適です。
各メーカーが出している「サブ4向け」や「中級者向け」と銘打たれたモデルは、安定性が高く、後半にフォームが崩れてもしっかりと足を支えてくれます。過度に軽量なモデルはソールが薄く、42キロの衝撃に耐えきれず足を痛める原因になることもあるため、自分の筋力に見合ったものを選びましょう。
また、シューズは必ず試し履きをして、足の形にフィットするか確認してください。サイズが合っていないと、マメができたり爪が死んでしまったりといったトラブルに繋がります。夕方の足がむくんだ時間帯に試着し、つま先に1センチ程度の余裕があるものを選ぶのがセオリーです。
疲労軽減に役立つコンプレッションウェアとソックス
ウェア選びもパフォーマンスに影響します。特に脚の筋肉の揺れを抑えるコンプレッションタイツは、疲労の蓄積を遅らせる効果が期待できます。筋肉の無駄な動きを抑制することで、エネルギーのロスを防ぎ、4時間という長丁場でのスタミナ温存を助けてくれます。
ソックスも侮れません。アーチ(土踏まず)をサポートする機能があるものを選ぶと、足裏の疲れを軽減できます。また、5本指ソックスは指同士の擦れを防ぎ、指全体で地面を捉えやすくなるため、愛用するランナーが多いアイテムです。滑り止め加工が施されたものなら、靴の中での足のズレを防げます。
ウェア全体としては、吸汗速乾性に優れた素材を選びましょう。汗でウェアが重くなったり、冷えたりすることは、パフォーマンス低下に直結します。気温に合わせて、アームカバーやキャップ、サングラスなどを組み合わせ、体温調節や日差し対策を行うことも完走への一助となります。
ペース管理の精度を高めるGPSウォッチの活用
サブ4達成のために欠かせないアイテムが、リアルタイムでペースを確認できるGPSウォッチです。1キロごとのラップを自動で計測し、通知してくれる機能があれば、自分が今5分40秒のペースを守れているかどうかを瞬時に判断できます。
最近のモデルは心拍数の計測機能も充実しており、自分の体にどれくらいの負荷がかかっているかを数値で把握できます。心拍数が上がりすぎている場合は、少しペースを落として落ち着かせるなど、客観的なデータに基づいた戦略が立てられるようになります。これにより、感覚に頼りすぎて自滅するリスクを減らせます。
また、スマホのアプリと連携して練習記録を管理することで、日々の成長を実感でき、モチベーションの維持にも役立ちます。バッテリーの持ち時間も確認し、フルマラソンの時間(サブ4なら4時間以上)しっかりと稼働するものを選びましょう。操作に慣れておくためにも、日頃の練習から積極的に活用してください。
難関の「30キロの壁」を突破するメンタルと走行技術

マラソンには「30キロ付近で急に足が動かなくなる」という現象がよく見られます。これが俗に言う30キロの壁です。サブ4達成のためには、この最も苦しい時間帯をどう切り抜けるかが最大の焦点となります。
疲れてきた時こそ意識したいランニングフォームの修正
後半に疲労が溜まってくると、どうしても腰が落ち、背中が丸まってしまいます。この状態では効率的な走りができず、さらに体力を消耗するという悪循環に陥ります。30キロを過ぎて「苦しい」と感じた時こそ、あえて姿勢を正し、胸を張るように意識してみてください。
肩の力を抜き、腕振りを少しだけ大きくすることで、足が自然と前に出やすくなります。また、目線を少し遠くに置くことで、前傾姿勢を保ちやすくなります。一歩の歩幅(ストライド)を無理に伸ばそうとするのではなく、足の回転数(ピッチ)を維持することを心がけると、エネルギー消費を抑えられます。
足の接地も意識してみましょう。足裏全体で着地する「ミッドフット着地」を意識すると、膝や腰への衝撃を分散できます。苦しい時ほど、自分の体を機械のように淡々と動かすイメージを持つことが、ペースの維持に繋がります。練習の時から「疲れた時のフォーム」をチェックしておくことが大切です。
苦しさを分散させるための思考法とターゲット設定
精神的な限界を感じた時は、残りの距離を考えるのをやめましょう。「あと12キロもある」と思うと絶望感に襲われますが、「次の給水所まで行こう」「あのアドバルーンまで頑張ろう」と、小さな目標を積み重ねるように思考を切り替えます。
また、前のランナーを一人ずつ抜いていく、あるいは一定の距離を保ってついていくといった「風除け」や「ペースメーカー」を見つけるのも有効です。誰かの背中を追うことで、集中力が途切れにくくなります。このとき、あまりにも速い人についていかないよう、自分のペースに近い人を見極めるのがポイントです。
沿道の応援を力に変えることも忘れないでください。自分の名前を呼んでくれる友人や、見ず知らずの人がくれる声援に笑顔で応えると、脳内で快楽物質が分泌され、一時的に痛みが和らぐことがあります。ポジティブな言葉を心の中で唱え続ける「セルフ・トーク」も、限界を突破する助けになります。
30キロ以降は、肉体よりも精神の戦いです。「自分はサブ4できる」「このために練習してきた」と強く信じることが、最後の一押しになります。
気象条件やコースの起伏に合わせた柔軟なペース調整
レースは常に理想的な環境とは限りません。強風や雨、気温の上昇、あるいは後半の激しい上り坂など、様々な壁が立ちはだかります。そのような状況で無理に5分40秒を守ろうとすると、一気に体力を使い果たしてしまいます。状況に応じた「賢い撤退と調整」もサブ4には必要です。
例えば、上り坂ではあえてペースを落とし、心拍数を上げすぎないことに専念します。その分、下り坂や平坦な道でリラックスしてスピードに乗ることで、トータルのタイムを合わせれば良いのです。風が強い日は無理に前に出ず、他のランナーの影に入って温存する戦略も有効です。
想定外の事態が起きたとしても、焦らずに対応できる心の準備をしておきましょう。完璧にペースを守ることに執着しすぎず、最終的なゴールタイムが4時間を切っていれば良いと考えれば、多少のトラブルも乗り越えられます。冷静な判断力こそが、熟練ランナーへの第一歩です。
マラソン4時間(サブ4)ペースを維持してゴールするための重要ポイントまとめ
フルマラソンで4時間を切り、サブ4を達成するためには、1キロあたり5分40秒前後のペースを安定して刻む力が必要です。この記事で紹介した通り、まずは自分の目標ペースを明確にし、それを維持するためのペース走やスタミナ作りのトレーニングを地道に積み重ねていきましょう。
当日のレースでは、序盤の混雑に惑わされず冷静にリズムを作り、30キロ以降の失速を防ぐための補給戦略を徹底することが成功を左右します。また、自分に合ったシューズやGPSウォッチといったギアの活用、そして苦しい時間帯を乗り切るためのポジティブなメンタルも欠かせない要素です。
サブ4は、決して届かない高い壁ではありません。正しい知識に基づいた練習と準備があれば、誰にでもチャンスがある素晴らしい目標です。今回学んだペース配分や戦略を実際のレースに活かし、4時間の壁を突破して、新しい景色を楽しみましょう。あなたの挑戦が素晴らしい結果に繋がることを心から応援しています。





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