まだまだ暑さが残る9月ですが、マラソンランナーにとっては待ちに待ったシーズンの到来を感じさせる大切な時期です。夏の間、暑さに耐えながらコツコツと走り込んできた成果を試す場として、あるいは10月以降の本格的なフルマラソンシーズンに向けた「前哨戦」として、9月の位置づけは非常に重要です。
しかし、9月は台風の発生や気温の寒暖差など、コンディション調整が難しい月でもあります。「どんな大会に出ればいいの?」「練習メニューはどう切り替えるべき?」「服装は何が正解?」といった悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、9月のマラソン大会の選び方から、秋の本番に向けた効果的な練習方法、そして気候に合わせたウェア選びまでをわかりやすく解説します。季節の変わり目を上手に味方につけて、最高のスタートダッシュを切りましょう。
9月のマラソン大会の特徴と選び方

9月はマラソン界において「移行期」とも呼ばれる特殊な時期です。真夏の過酷な環境から、徐々に走りやすい秋へと季節が移り変わるため、大会の選び方にも少し工夫が必要です。まずは、9月のマラソン大会が持つ特徴と、自分に合ったレースの選び方を見ていきましょう。
秋シーズン開幕の前哨戦としての位置づけ
多くの市民ランナーにとって、9月の大会は「シーズンイン」を告げるイベントです。10月や11月に開催される大規模なフルマラソンに向けた調整として活用されることが一般的です。夏のトレーニングで培ったスタミナを確認したり、レース勘を取り戻したりするためにエントリーするランナーが多く見られます。記録を狙うというよりは、現状の走力を把握するための「実力診断テスト」として捉えると良いでしょう。
気温と湿度の高さを考慮する
カレンダー上は「秋」ですが、日本の9月はまだ夏と言っても過言ではありません。特に本州以南では、日中の最高気温が30度を超える真夏日になることも珍しくありません。湿度は依然として高く、熱中症のリスクも残っています。そのため、自己ベスト更新を狙って限界まで追い込むようなレース運びは危険を伴う場合があります。暑さに強いランナー以外は、無理のないペース設定で完走を目指すスタイルが推奨されます。
フルマラソンかハーフ・10kmか
9月の大会選びで重要なのが「距離」の選択です。フルマラソンを走る場合、北海道などの寒冷地を選ばない限り、暑さとの戦いになります。初心者や夏場の練習量が不足していると感じる方は、まずはハーフマラソンや10km、あるいは20km~30kmのロードレースを選ぶのが賢明です。短い距離でスピード刺激を入れるか、少し長めの距離を余裕を持って走る「距離走」の代わりにするか、目的に応じて距離を選びましょう。
開催地による環境の違い
9月は日本列島の中で気象条件が大きく異なります。北海道や東北北部、あるいは標高の高い高原エリアで開催される大会は、比較的涼しく走りやすいため、記録を狙いたいシリアスランナーに人気があります。一方、都市部の河川敷などで開催される大会はアクセスが良い反面、日陰が少なく暑さ対策が必須です。旅ラン(旅行を兼ねたランニング)として遠征するか、近場の練習会感覚で参加するか、自身のスケジュールと予算に合わせて検討してください。
9月におすすめの全国各地のマラソン大会

では、具体的にどのような大会が9月に開催されているのでしょうか。全国の傾向を見ると、大きく分けて「涼しいエリアでの本格レース」と「都市部でのトレーニング向けレース」の2パターンがあります。ここでは地域や特徴別におすすめの大会タイプを紹介します。
北海道・東北エリアの大会
本州がまだ残暑厳しい中、北海道や東北地方では一足早く秋の気配が訪れます。「日本最北端わっかない平和マラソン」や秋田県の「田沢湖マラソン」などが有名です。これらの大会は気温が20度前後、あるいはそれ以下になることもあり、9月としては非常に快適なコンディションで走ることができます。夏場の練習の成果をタイムに直結させたい場合や、景色を楽しみながら気持ちよく完走したい場合には、北への遠征が最もおすすめです。
高原・リゾート地での大会
標高が高いエリアで開催される大会も9月の狙い目です。例えば、長野県や山梨県の高原地帯で行われるレースは、空気が澄んでいて涼しく、アップダウンに富んだコースが多いため、脚作り(脚筋力の強化)に最適です。「越後湯沢秋桜ハーフマラソン」などのように、温泉地とセットになった大会も多く、レース後のリカバリーも含めて楽しむことができます。坂道トレーニングの一環として参加するのも効果的です。
河川敷や公園での小規模レース
関東や関西などの都市部では、荒川や淀川といった河川敷、大きな公園を利用した小規模な大会が毎週末のように開催されています。これらは「月例マラソン」や「トライアルマラソン」と呼ばれることが多く、運営がシンプルで参加費も手頃なのが特徴です。給水サポート付きの30km走など、一人では心が折れそうな長距離練習をみんなでこなすための場として活用するのが賢い方法です。
オンラインマラソンの活用
どうしても日程が合わない場合や、まだ大勢の中で走る自信がない場合は、オンラインマラソンという選択肢もあります。GPSウォッチやスマホアプリを使って、期間内に規定の距離を走る形式です。9月は「オクトーバー・ラン」などのイベントの前哨戦として、各メーカーや自治体がオンラインイベントを開催することがあります。自分の好きな時間、好きな場所(涼しい早朝や夜間)に走れるため、暑さ対策をしながらモチベーションを維持するのに役立ちます。
まだ暑い9月のランニングに適した服装とアイテム

9月のウェア選びは非常に悩ましいポイントです。「秋物」の新作が店頭に並び始めますが、実際に走ると汗だくになることがほとんどです。基本的には夏の装備をベースにしつつ、急な天候変化に対応できる準備をするのが正解です。
基本は「夏仕様」の通気性重視
日中のランニングであれば、服装は7月・8月と同じ「夏仕様」で問題ありません。通気性の高いメッシュ素材のTシャツやノースリーブを選び、熱を体内にこもらせないことを最優先してください。色は黒などの熱を吸収しやすい色よりも、白やパステルカラーなどの淡い色がおすすめです。ポリエステル100%の吸汗速乾素材は必須で、綿素材のウェアは汗冷えや不快感の原因になるため避けましょう。
汗対策と股擦れ防止
9月は湿度が高いため、想像以上に汗をかきます。長時間のレースや練習では、汗で濡れたウェアが皮膚と擦れて「股擦れ」や「乳首擦れ」を起こすリスクが高まります。体にフィットするインナーウェアを着用したり、ワセリンを事前に塗っておくなどの対策が重要です。また、汗が目に入らないようにヘッドバンドをするか、吸水性の良いキャップを被ると快適さが持続します。
秋の紫外線と雨対策
日差しは少し柔らかくなったように感じても、紫外線量はまだ十分に強いのが9月の特徴です。サングラスとキャップは必ず着用しましょう。これは日焼け防止だけでなく、目からの疲労を防ぐ効果もあります。また、9月は台風や秋雨前線の影響で天気が崩れやすい時期です。小雨の中で走ることも想定し、ツバが透明で視界が良いキャップや、撥水性のある超軽量ウィンドブレーカーをポーチに入れておくと安心です。
秋の本番に向けた9月のトレーニングメニュー

9月のトレーニングは、夏の「耐える練習」から、秋の「攻める練習」へと切り替えるターニングポイントです。ここでは、具体的にどのようなメニューを取り入れるべきか、5つのステップに分けて詳しく解説します。
夏モードからのスムーズな移行
まずは、夏の間に落ちてしまったスピード感覚や、短くなりがちだった走行距離を徐々に戻していくことが大切です。いきなり涼しくなった日に全力疾走をするのではなく、最初の1~2週間は、ジョギングのペースを少し上げる(1kmあたり10秒~20秒速くする)ことから始めましょう。体が「スピードを出しても大丈夫だ」と思い出す期間を設けることで、怪我のリスクを減らすことができます。
LSD(ロング・スロー・ディスタンス)の導入
9月後半になり、朝晩の気温が25度を下回るようになってきたら、LSD(長くゆっくり走る練習)を取り入れましょう。90分から120分、ペースは気にせず走り続けることで、毛細血管を拡張させ、マラソンに必要な基礎スタミナ(地足)を作ります。夏場は暑さで長時間走るのが困難でしたが、9月なら水分補給をしっかり行えば十分に可能です。週末を利用して、景色の良い場所や信号の少ない河川敷で実施してみてください。
「30kmの壁」対策の予行演習
フルマラソン完走やサブ4、サブ3を目指すランナーにとって、30km以降の失速は最大の課題です。9月中に一度、20km~30kmの距離走を行っておくことを強くおすすめします。これはペースを上げる必要はなく、イーブンペースで走り切れるかを確認するためです。一人での実施が精神的に辛い場合は、前述した「練習会形式の大会」を活用するのがベストです。この時期に長い距離を経験しておくことで、本番への自信がつきます。
スピード練習の再開
スタミナ練習と並行して、心肺機能に刺激を入れるスピード練習も再開します。具体的には、「インターバル走(例えば1km×5本など)」や「ペース走(目標レースペースで10km前後)」です。ただし、残暑が厳しい日は無理に行わず、距離を短くするか、涼しいジムのトレッドミルを活用するなど柔軟に対応してください。週に1回、この「ポイント練習」を入れるだけで、走力の伸びが大きく変わります。
疲労抜きと休養のバランス
最も重要なのが「休み方」です。9月は「夏バテ」が遅れてやってくる時期でもあります。練習量を増やしたい気持ちはわかりますが、体が重い、食欲がない、睡眠が浅いといったサインが出たら、勇気を持ってランニングをお休みしてください。疲労が蓄積した状態で無理に走ってもパフォーマンスは上がらず、故障の原因になります。「3日走って1日休む」や「週末にセット練習をしたら月曜は完全休養」など、メリハリのあるスケジュールを組みましょう。
練習メニュー例(サブ4目標の場合)
平日:ジョグ60分 × 2回 + ペース走10km(週末に向けて)
週末:LSD 90〜120分 または 20km走
※体調に合わせて完全休養日を週2日は設けること
9月の練習で注意すべき体調管理とトラブル対策

練習内容が充実してくると同時に、ケアしなければならないのが体調管理です。9月特有のトラブルを知り、事前に対策を講じておくことで、練習の中断を防ぐことができます。
隠れ脱水と熱中症への警戒
「もう真夏じゃないから大丈夫」という油断が一番の敵です。9月の湿度は依然として高く、発汗量は多いままです。特に、風が涼しく感じる日は汗が乾きやすく、気づかないうちに脱水症状(隠れ脱水)に陥ることがあります。喉が渇いたと感じる前に水を飲むことはもちろん、経口補水液や塩分タブレットを携帯して走る習慣を続けましょう。ランニング後の尿の色が濃い場合は水分不足のサインです。
モチベーション低下への対処
9月は台風シーズンであり、長雨が続くこともあります。「走ろうと思っていたのに雨が降ってきた」という日が続くと、モチベーションが下がりがちです。そんな時は「雨の日は休養日」と割り切るか、室内トレーニングに切り替えましょう。スクワットや体幹トレーニングなど、自宅でできる補強運動はマラソンの後半での粘りに直結します。天気に一喜一憂せず、できることを淡々とこなすメンタルもマラソンには必要です。
肌トラブルとスキンケア
夏の紫外線ダメージが蓄積した肌は、乾燥やトラブルを起こしやすくなっています。また、汗による「あせも」や、雨天時のランニングによるふやけからの「マメ」なども発生しやすい時期です。ランニング後には速やかにシャワーを浴びて清潔にし、保湿クリームでケアを行いましょう。足裏のケアも重要で、角質が厚くなっている場合は適切に処理をしておくことが、マメ防止につながります。
秋の夜長の睡眠不足に注意
涼しくなって過ごしやすくなると、ついつい夜更かしをしてしまうことがあります。筋肉の修復や疲労回復は睡眠中に行われます。質の高い睡眠を確保することも、立派なトレーニングの一部です。
9月のマラソン準備で秋のシーズンを最高のものにまとめ
9月のマラソン活動について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。この時期は「夏と秋のハイブリッド」のような季節であり、練習環境も体調も変化しやすいタイミングです。
大会選びでは、北海道や高原などの涼しい場所を選ぶか、近場の大会をトレーニングの一環として活用するかがポイントでした。そして練習面では、無理な追い込みを避けつつも、徐々に距離とスピードを実践モードへと切り替えていくことが重要です。
何より大切なのは、夏の疲れをしっかりと抜きつつ、走る楽しみを再確認することです。9月に適切な準備ができれば、10月以降のマラソンシーズン本番で、きっと納得のいく走りができるはずです。焦らず、楽しみながら、実りの秋に向けて一歩ずつ進んでいきましょう。




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