マラソン大会の3日前になると、これまで積み重ねてきた練習の成果を発揮できるのか、不安と期待が入り混じる時期ではないでしょうか。実は、この「3日前」というタイミングは、レース当日のパフォーマンスを大きく左右する非常に重要な期間です。
これまでは「走る力」を養ってきましたが、3日前からはその力を100%発揮するための「エネルギー貯蔵」と「疲労抜き」に意識を切り替える必要があります。準備を正しく行うことで、後半の失速を防ぎ、ゴールまで力強く走りきることが可能になります。
この記事では、マラソン3日前に実践すべき具体的な練習メニューから、スタミナを蓄える食事法、さらには当日の不安を解消する準備の進め方までを、初心者の方にも分かりやすく丁寧に解説します。最高のコンディションでスタートラインに立ちましょう。
マラソン3日前の練習は「疲労を抜き、キレを戻す」

レースが近づくと「もっと走らなくて大丈夫かな?」と不安になり、ついつい走り込みたくなるかもしれません。しかし、3日前から最も優先すべきは、体内の疲労を完全に取り除き、筋肉に柔軟性とキレを取り戻すことです。ここでは、具体的な練習の考え方を紹介します。
練習量はいつもの半分以下に抑える
マラソン3日前において、長距離を走ったり心拍数を限界まで上げるような激しいトレーニングをしたりするのは逆効果です。この時期に頑張りすぎても走力そのものが向上することはありません。むしろ、体に蓄積した疲労をリセットする期間だと割り切りましょう。
具体的には、普段のジョギングの半分以下の距離や時間に抑えるのが理想的です。例えば、いつも1時間走っている方であれば、30分程度の軽いジョギングで十分です。息が切れない程度のペースで走り、全身に新鮮な酸素を送り込むイメージで体を動かしましょう。
「物足りない」と感じるくらいが、実はベストな調整方法です。その余った体力を、レース当日のエネルギーとして温存しておくことが、42.195kmという長丁場を走り抜くために不可欠な戦略となります。
体に刺激を入れる「流し(ウィンドスプリント)」を取り入れる
単にゆっくり走るだけでは、筋肉の動きが鈍くなり、走りのリズムが崩れてしまうことがあります。そこで、軽いジョギングの最後に「流し(ウィンドスプリント)」を取り入れるのがおすすめです。これは、70〜80%程度の力で100メートルほどを軽快に走る動作を指します。
流しを行う目的は、心肺機能や筋肉に「これから速い動きをするよ」という信号を送り、キレを出すことです。全力疾走ではないため、フォームを意識しながらリラックスして走りましょう。本数は2〜3本程度で十分であり、決して追い込みすぎないように注意してください。
この短い刺激を入れることで、レース本番でスムーズにペースを上げられるようになります。ジョギングで体を温めた後、最後に少しだけ心拍数を上げることで、翌日以降の体の軽さが大きく変わってくるはずです。
ストレッチで筋肉をほぐし血流を促す
3日前は、走る練習と同じくらい「セルフケア」が大切です。練習量を落としている分、時間が余るはずですので、その時間を念入りなストレッチに充てましょう。股関節やふくらはぎ、肩甲骨周りなど、走る際に重要となる部位を中心に、じっくりと呼吸をしながら伸ばしていきます。
注意したいのは、無理に強い力で伸ばしすぎないことです。オーバーストレッチは筋肉を痛める原因になります。また、この時期に慣れないマッサージ店に行って強い施術を受けるのも避けましょう。「揉み返し」が起きてしまい、当日になっても違和感が残ってしまう可能性があるからです。
お風呂上がりの体が温まっている状態で、気持ちが良いと感じる程度の静的ストレッチを行うのがベストです。血流を促すことで疲労物質の排出が早まり、筋肉の柔軟性が高まります。これが、当日の足の運びをスムーズにする隠れた準備となります。
効率よくエネルギーを貯める「カーボローディング」のコツ

フルマラソンでは、体内のエネルギーが枯渇する「30kmの壁」が有名です。これを防ぐために、レース3日前から行う食事戦略が「カーボローディング」です。筋肉や肝臓にグリコーゲン(糖質)を最大限に蓄えるためのポイントを見ていきましょう。
炭水化物を食事のメインにする改良法
以前は1週間前から糖質を制限し、その後にドカ食いをするという過酷な方法もありましたが、現在は「3日前から炭水化物の割合を増やす」という改良法が一般的です。体調を崩すリスクが少なく、市民ランナーでも取り入れやすい方法です。
具体的には、毎食のご飯の量を増やしたり、パンやパスタ、うどんなどを積極的にメニューに取り入れたりします。食事全体の70%以上を炭水化物にするのが目安です。糖質をしっかり摂ることで、レース後半の「ガス欠」を防ぐことができます。
この期間、体重が1〜2kg増えることがありますが、これは糖質と一緒に水分が体に蓄えられている証拠であり、太ったわけではありません。むしろエネルギーが満ちているサインですので、安心してしっかりと食べましょう。
脂質や食物繊維を控えて胃腸の負担を減らす
炭水化物を増やす一方で、意識して減らしたいのが「脂質」と「食物繊維」です。揚げ物や霜降りの肉、クリームたっぷりのスイーツなどは消化に時間がかかり、胃腸に負担をかけてしまいます。内臓を疲れさせないことが、当日のコンディション維持に直結します。
また、食物繊維が豊富な生野菜や海藻類、きのこ類も、3日前からは少し控えるのが無難です。食物繊維は腸を刺激してお腹を緩くさせたり、ガスが溜まりやすくなったりすることがあります。レース中にお腹のトラブルを避けるためにも、温野菜など消化しやすい形で摂取しましょう。
「体に良いもの」を追い求めすぎて、普段食べないような健康食品を急に試すのも控えましょう。あくまで、食べ慣れたものの中から炭水化物を中心に選び、胃腸をいたわるメニューを心がけてください。
ウォーターローディングで体内の水分量を保つ
食事だけでなく、水分の摂り方も非常に重要です。3日前からこまめに水分を摂取する「ウォーターローディング」を行いましょう。一度に大量に飲むのではなく、コップ一杯の水を1日に何度も飲むように心がけるのがポイントです。
体内の水分を適切に保つことで、血液の循環が良くなり、蓄えた糖質(グリコーゲン)の利用効率が高まります。また、足のつり(痙攣)の予防にもつながります。喉が渇いたと感じる前に、意識的に少しずつ補給するようにしましょう。
冷たい水は胃を冷やして消化能力を落とすため、常温の水や麦茶などがおすすめです。カフェインの強い飲み物やアルコールは利尿作用があり、かえって脱水を招く恐れがあるため、この時期はなるべく控えるようにしてください。
おすすめの食べ物と具体的なメニュー例
どのようなものを食べれば良いか迷った時は、以下のような消化の良い炭水化物を中心に選んでみてください。和食をベースにすると、脂質を抑えつつ効率的に糖質を摂取しやすくなります。
【マラソン3日前からの推奨食材】
・主食:白米、うどん、餅、パスタ(オイル少なめ)、ベーグル
・間食:カステラ、大福、バナナ、ゼリー飲料
・その他:豚肉(ビタミンB1豊富で糖質代謝を助ける)、梅干し(クエン酸)
例えば、朝食にはおにぎりとバナナ、昼食には力うどん(餅入り)、夕食には多めのご飯と焼き魚、といった具合です。特に「餅」は手軽に高密度のエネルギーを摂取できるため、多くのランナーに愛用されています。自分に合ったメニューを見つけましょう。
レース本番を意識した生活リズムとコンディショニング

体力の温存は、練習を休むことだけではありません。日常生活の中での振る舞いや、睡眠の質を向上させることも大切なコンディショニングの一環です。3日前から生活リズムを「レースモード」に切り替えていきましょう。
当日の起床時間に合わせて体内時計を整える
マラソン大会の当日は、朝の6時やそれ以前に起きなければならないことが多いです。もし普段ゆっくり起きているのであれば、3日前から少しずつ早起きの習慣をつけておきましょう。当日の朝だけ急に早起きをしても、体が十分に覚醒せず、スタート時に力が出せません。
人間の体は、起きてから体温や血圧が運動に適した状態になるまでに3〜4時間かかると言われています。スタートが朝9時であれば、朝5時か6時には起きておく必要があります。3日前からこの「当日スケジュール」を意識して生活することで、体内時計が整います。
早く起きるためには、前日の夜に早く寝ることが不可欠です。夜更かしをしてテレビやスマートフォンを眺める習慣は控え、レース当日の朝をイメージしながら、ゆとりを持って1日をスタートさせるリズムを身につけましょう。
睡眠の質を高めるための入浴とリラックス
練習量が減るこの時期は、人によっては「眠りが浅くなる」と感じることがあります。質の高い睡眠を確保するために、入浴方法を工夫してみましょう。寝る1.5〜2時間前までに、38〜40度程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かるのが理想です。
深部体温を一度上げることで、寝る頃に体温が下がっていき、自然で深い眠りに入りやすくなります。熱すぎるお湯は交感神経を刺激して目が冴えてしまうため注意してください。湯船の中で軽く手足を動かす程度のリラックスを心がけましょう。
また、寝る前のスマートフォンはブルーライトが脳を刺激し、睡眠の質を下げてしまいます。3日前からは夜のデジタルデトックスを行い、読書や軽いストレッチ、静かな音楽を聴くなどして、心身ともに「休息モード」へ誘導してあげることが大切です。
長時間の移動や立ち仕事を避けて脚を休める
3日前からは、とにかく「脚を疲れさせない」ことが重要です。意外と見落としがちなのが、買い物での長時間の歩行や、仕事での立ちっぱなしです。必要以上の外出は控え、できるだけ椅子に座ったり、足を伸ばしてリラックスする時間を増やしましょう。
もし仕事や移動でどうしても歩かなければならない場合は、クッション性の高い歩きやすい靴を選んでください。少しでも脚の負担を減らす意識を持つことが、当日の軽やかさにつながります。移動中も階段ではなくエスカレーターを使うなど、徹底して体力を温存します。
自宅でくつろぐ際には、クッションの上に足を置いて少し高くするのも良いでしょう。これにより足のむくみが取れやすくなり、翌朝の足の感覚がリフレッシュされます。些細なことの積み重ねが、スタートラインに立った時の「走れる!」という確信につながります。
失敗を防ぐための持ち物と当日のシミュレーション

レース当日の朝は、誰もが多少なりとも緊張し、慌ててしまうものです。3日前のうちに準備を整えておくことで、心の余裕が生まれ、余計なストレスを感じずに済みます。チェックリストを活用して備えましょう。
ウェア・シューズ・ゼッケンの最終チェック
「当日使う予定のシューズに穴が開いていないか」「ソックスに穴はないか」など、装備品の状態を改めて確認しましょう。特に気をつけたいのは、「3日前に新しいシューズを投入しない」ことです。新品のシューズは足に馴染んでおらず、靴擦れの原因になります。
ウェアに関しても、すでに練習で何度も着ていて、擦れや不快感がないことを確認済みのものを選びましょう。当日の気温予報をチェックし、防寒用のビニールポンチョやアームカバー、日差し対策の帽子などの小物も忘れずに用意しておきます。
また、ゼッケンが事前に郵送されている場合は、ウェアに安全ピンやホルダーで取り付けておくと当日の手間が省けます。前日に慌てて準備をすると忘れ物をしやすいため、3日前のこのタイミングで一通りの装備を揃えてしまうのが賢明です。
補給食の種類と摂取タイミングを決める
フルマラソンでは、走りながらエネルギーを補給するための「補給食(ジェル)」が必須です。3日前には、自分がどのジェルを何個持ち、何km地点で食べるのか、具体的なシミュレーションを立てておきましょう。当日の気分で決めるのではなく、計画性を持つことが完走の秘訣です。
ジェルは、以前の練習で一度は試したことがあるものを選びましょう。当日の胃腸の調子によっては、味や食感が合わずに受け付けないこともあるからです。10km、20km、30kmと区切りを決めて、お腹が空く前に摂取するスケジュールをメモしておくのも良い方法です。
塩分補給のためのタブレットや、足つり防止のサプリメントも準備しておくと安心です。補給食はポケットやウエストポーチに収まるサイズか、取り出しやすいかどうかも実際に確認しておいてください。小さな準備が、レース中の窮地を救ってくれます。
会場までの移動経路とトイレの場所を確認する
大会当日の朝、会場へ向かうための交通手段を再確認しましょう。電車の時刻や、最寄り駅からの徒歩ルート、さらには受付の締め切り時間までを把握しておきます。大規模な大会では駅が非常に混雑するため、予想以上の時間がかかることを想定しておく必要があります。
また、会場内のトイレの場所も調べておくと安心です。スタート直前のトイレは長蛇の列になることが多いため、「会場に着いたらまずどこへ行くか」を決めておきましょう。コース上の給水ポイントやトイレの設置場所も頭に入れておくと、レース中の不安が軽減されます。
このように、物理的な準備と当日の行動シミュレーションをセットで行うことで、脳内の情報が整理されます。不測の事態にも落ち着いて対応できるようになり、結果としてレース本番での集中力を高めることにつながるのです。
精神的な不安を取り除くメンタルケアの重要性

「完走できなかったらどうしよう」「目標タイムに届かないかも」という不安は、どんなに練習を積んだランナーでも感じるものです。3日前からの心の整え方は、体の調整と同じくらい重要です。ポジティブなマインドで当日を迎えましょう。
コースマップを見て高低差や難所をイメージする
闇雲に走るのではなく、コースを熟知していることは大きな自信になります。3日前には改めて公式サイトなどでコースマップを眺め、何km地点に上り坂があるのか、どこで景色が開けるのかを確認しておきましょう。頭の中で一度、完走するまでのイメージトレーニングを行います。
特に、後半の苦しい場面をイメージし、「ここで家族や友人が応援してくれている」「ここを過ぎれば下り坂だ」といったポジティブな要素を紐付けておくと効果的です。難所を「敵」として捉えるのではなく、攻略すべきポイントとして前向きに捉えましょう。
イメージトレーニングの際は、笑顔でフィニッシュラインを駆け抜ける自分を想像してください。脳に良いイメージを焼き付けることで、当日のモチベーションが自然と高まり、余計な緊張から解放されます。準備は整った、あとは走るだけだと自分に言い聞かせましょう。
目標タイムを再確認し「無理をしない」勇気を持つ
3日前は、改めて自分の現在のコンディションに合った目標を再設定する時期でもあります。これまでの練習の出来を冷静に振り返り、当日のペース設定を決めましょう。一番の失敗は、周りのランナーに流されてスタート直後からオーバーペースになってしまうことです。
「最初の5kmはゆっくり入る」「苦しくなったら無理をせず歩を進める」といった、控えめなプランも持っておくことが心の余裕を生みます。完璧主義になりすぎず、たとえ目標より少し遅れても「最後まで走り続けること」を最優先にする柔軟な考え方が大切です。
自分を追い込みすぎると、体が硬くなり、パフォーマンスが低下してしまいます。「今日はこの大会を楽しもう」というリラックスした気持ちを持つことが、結果として自己ベスト更新や完走の確率を最も高めてくれるはずです。
緊張を「楽しみ」に変えるマインドセット
緊張を感じるのは、それだけあなたがこの大会に向けて真剣に取り組んできた証拠です。緊張を感じたら、「よし、準備ができているぞ」とポジティブに変換しましょう。その高揚感は、普段の練習では決して味わえない、マラソン大会という非日常の醍醐味です。
「失敗したらどうしよう」ではなく、「どんなドラマが待っているんだろう」というワクワク感にフォーカスしてください。スタートラインに並ぶ多くのランナーたちも、あなたと同じように不安や期待を抱えています。その連帯感を楽しみながら、自分自身の挑戦を祝福しましょう。
3日前からの過ごし方を丁寧に行うことで、「やれることはすべてやった」という自信が生まれます。その自信こそが、どんな高価なシューズやサプリメントよりも、あなたをゴールへと導く強力な支えになるに違いありません。あとは楽しんで駆け抜けましょう。
3日前からは「頑張る」のをやめて「整える」ことに専念しましょう。体のエネルギーを満タンにし、心に余裕を持たせることが、最高のスタートを切るための最大の秘訣です。
まとめ:マラソン3日前からの準備が成功のポイント
マラソン3日前からの過ごし方は、当日の結果を大きく左右します。練習を控えめにして筋肉のキレを取り戻し、炭水化物中心の食事でエネルギーをしっかり蓄えることが、42.195kmを走り抜くための土台となります。
また、生活リズムを整え、睡眠の質を高めることで、体内の疲労は確実に抜けていきます。ウェアや補給食、会場までのアクセスといった事務的な準備を3日前に終えておくことで、メンタル面でも落ち着いて当日を迎えることができるでしょう。
「3日前」は休息と準備の期間です。無理に走る必要はありません。自分を信じ、心身ともにエネルギーが溢れる状態でスタートラインに立ちましょう。この記事で紹介したポイントを実践すれば、きっと最高の笑顔でフィニッシュを迎えられるはずです。




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