マラソン ネットタイムとは?グロスタイムとの違いやレースでの重要性を解説

マラソン ネットタイムとは?グロスタイムとの違いやレースでの重要性を解説
マラソン ネットタイムとは?グロスタイムとの違いやレースでの重要性を解説
【大会への挑戦】目標の舞台へ

初めてのマラソン大会を完走し、後日送られてきた記録証(完走証)を手にしたとき、ふと疑問に思うことがあります。「あれ?タイムが2つ書いてあるぞ?」と。そこには「グロスタイム」と「ネットタイム」という2種類の数字が並んでいます。しかも、その差は数分から、大きい場合だと数十分にも及ぶことがあります。

「自分はいったい何時間で走ったことになるの?」「どっちのタイムを友人に伝えたらいいの?」そんな迷いを感じるランナーは少なくありません。この2つのタイムには明確な違いがあり、それぞれに重要な役割があります。

この記事では、マラソン初心者の方が必ず知っておきたい「ネットタイム」の意味や計測の仕組み、そして大会のルールに関わる重要な注意点について、やさしく丁寧に解説していきます。この違いを正しく理解すれば、レース戦略も立てやすくなり、マラソンがもっと面白くなりますよ。

マラソンのネットタイムとは何か?グロスタイムとの違い

マラソン大会の記録には、大きく分けて2つの測定基準があります。それが「ネットタイム」と「グロスタイム」です。まずは、この2つの言葉の定義と、なぜ2つのタイムが存在するのかという根本的な理由から見ていきましょう。

ネットタイム=スタートライン通過からの「実走時間」

まず、今回のキーワードである「ネットタイム(Net Time)」とは、あなたがスタートラインをまたいだ瞬間から、フィニッシュラインを越えるまでにかかった時間のことです。

大規模な市民マラソンでは、号砲(スタートの合図)が鳴ってから実際にスタートラインにたどり着くまでに時間がかかることがあります。ネットタイムは、その「スタートまでの待ち時間(ロスタイム)」を差し引いた、純粋にあなたがコースを走っていた時間だけを指します。

そのため、自分の走力を正確に知りたい場合や、過去の自分と比較してどれくらい速くなったかを確認したい場合には、このネットタイムを見るのが一般的です。「ネット(Net)」には「正味の」「実質の」という意味があり、まさにあなたの「実質の走力」を表す数字と言えるでしょう。

グロスタイム=号砲からの「公式所要時間」

一方、「グロスタイム(Gross Time)」とは、スタートの号砲(ピストル音)が鳴った瞬間から、フィニッシュラインを越えるまでの時間のことです。

たとえあなたがスタートラインを通過するまでに10分かかったとしても、その10分間もタイムに含まれます。マラソン大会における「公式記録」や「順位」は、基本的にこのグロスタイムを基準に決定されます。トップ選手が競り合ってゴールしたとき、先に胸がフィニッシュラインを通過したほうが勝ちになるのは、全員が同時に号砲でスタートしているという前提(グロスタイム基準)があるからです。

「グロス(Gross)」には「総体の」「全体の」という意味があります。待ち時間も含めた、レース全体に要した時間と覚えると分かりやすいでしょう。

【用語の整理】

●ネットタイム
スタートライン通過 ~ フィニッシュ
(自分が実際に走った時間)

●グロスタイム
号砲(スタート合図) ~ フィニッシュ
(待ち時間を含めた大会公式記録)

なぜ2つのタイムに「ズレ」が生じるのか

小規模な地域の運動会や、参加者が数百人程度の大会であれば、号砲と同時に全員がほぼ一斉にスタートラインを越えることができます。この場合、グロスタイムとネットタイムの差は数秒程度しかなく、気にする必要はほとんどありません。

しかし、数千人から数万人規模の都市型マラソン(東京マラソンや大阪マラソンなど)となると話は別です。大勢のランナーが狭いスタート地点に整列するため、列の長さは何百メートル、時には1キロメートル以上にも及びます。

安全を確保するために、ランナーは申告タイム順にブロック分けされ、順番にスタート地点へ移動します。そのため、後方のブロックにいるランナーがスタートラインに到達するまでには、物理的に時間がかかってしまうのです。この「移動時間」が、2つのタイムのズレの原因となります。

大規模市民マラソンにおけるスタートロスの実態

では、実際どれくらいのタイム差、いわゆる「スタートロス」が発生するのでしょうか。これは大会の規模や参加人数によって大きく異なりますが、一般的な大規模大会の例を見てみましょう。

先頭のAブロック(エリートランナーや非常に速いランナー)であれば、号砲から数秒から数十秒でスタートラインを越えられます。しかし、中盤のブロックでは5分から10分程度、最後尾のブロックになると20分から30分以上待つことも珍しくありません。

例えば、制限時間が7時間の大会で、最後尾ブロックのスタートロスが30分あったとします。グロスタイムではまだ走り始めていないことになりますが、時計は刻一刻と進んでいます。このように、後方からスタートするランナーほど、グロスタイムとネットタイムの乖離(かいり)が大きくなるのがマラソンの特徴なのです。

自分の実力を知るならどっち?タイムの使い分け

2種類のタイムの意味が分かったところで、次に気になるのは「結局、どっちのタイムを自分の記録として扱えばいいの?」という点でしょう。ここでは、目的やシチュエーションに応じたタイムの使い分けについて解説します。

市民ランナーが「自己ベスト」として誇れるのはネットタイム

私たち市民ランナーが「自己ベスト(PB:Personal Best)」を更新したと喜ぶとき、あるいは友人に「フルマラソンを〇時間で完走したよ」と伝えるとき、基本的にはネットタイムを基準にして問題ありません。

スタートまでの待ち時間は、あなたの走力とは関係のない要素です。トイレを我慢して列に並び、号砲が鳴っても前の人が動くまでじりじりと歩いて進む時間は、ランニングのパフォーマンスとは別物です。

特に、スタートブロックが毎回異なるような状況では、グロスタイムで比較しても純粋な走力の向上は分かりません。「前回より5分速く走れた!」という成長を実感するためには、実走時間であるネットタイムを指標にするのが最も合理的であり、モチベーションの維持にもつながります。

順位や公式記録として扱われるのはグロスタイム

一方で、大会が発行する「順位」や「表彰」に関しては、グロスタイムが絶対的な基準となります。これは日本陸上競技連盟(陸連)の規則に基づいています。

もしネットタイムで順位を決めてしまうと、後からスタートしたランナーが先にゴールしたランナーよりも上の順位になるという「逆転現象」が起きてしまい、レースとしての興奮や分かりやすさが損なわれてしまうからです。「誰が一番にテープを切るか」という競争の原理においては、グロスタイムが公平な基準となります。

したがって、記録証の順位欄にはグロスタイムに基づいた順位が記載されます。ネットタイムがいかに速くても、公式順位ではスタート位置が前だったランナーのほうが上位に来ることがあるのは、このためです。

「サブ3」「サブ4」達成はどちらのタイムが基準?

市民ランナーの大きな目標である「サブ3(3時間切り)」や「サブ4(4時間切り)」。この称号を得るためには、どちらのタイムをクリアすればよいのでしょうか。

厳密な定義で言えば、公式記録である「グロスタイム」で達成して初めて「正式なサブ4達成」と言えます。特に、別府大分毎日マラソンのような参加資格タイムが厳格に設けられているエリート大会への出場を目指す場合は、グロスタイムでの実績が求められます。

しかし、一般的な市民ランナーの会話の中では、「ネットタイムでのサブ4達成」も十分に称賛される記録として受け入れられています。SNSやランニングアプリのコミュニティでも、「ネットでサブ4達成しました!」という報告は日常的に行われています。

まずは「ネットタイムでの目標達成」を目指し、実力がついてきてスタートブロックが前の方になったら「グロスタイムでの完全達成」を目指す、というステップアップがおすすめです。

海外のマラソン大会における記録の扱い

少し視点を広げて、海外の事情も見てみましょう。実は、欧米の多くの市民マラソン大会では、日本以上に「ネットタイム」が重視される傾向にあります。

例えば、世界的に有名なボストンマラソンの参加資格(Qualifying Time)は、かつてはグロスタイム基準でしたが、現在ではネットタイムも公式に認められています。これは、計測技術の進化と、大規模化する大会において全ランナーを公平に評価するにはネットタイムが適しているという考え方が浸透しているためです。

このように、世界的な潮流としては「市民ランナーの記録=ネットタイム」という認識がスタンダードになりつつあります。日本の大会でも、記録証にネットタイムを大きく記載するケースが増えてきています。

計測方法の裏側!どうやってネットタイムを測る?

数万人が走るマラソン大会で、一人ひとりの「スタートライン通過時刻」と「フィニッシュ時刻」をどうやって正確に測っているのでしょうか。ここでは、その驚くべき計測技術の仕組みについて解説します。

ランナーを支える計測チップの種類

正確なタイム計測の鍵を握るのが、「計測用ICチップ」です。大会に参加すると、事前の郵送物や当日の受付で、小さなプラスチック製のチップや、ゼッケン(アスリートビブス)の裏に貼られたタグが渡されます。

主な種類としては以下の2つがあります。

1. シューズ装着型(RSタグなど)
靴紐にビニールタイで巻き付けて固定するタイプです。ドーム型や長方形の形状をしており、フィニッシュ後に回収されることが一般的です。足元で計測マットに近い位置にあるため、非常に感度が良いのが特徴です。

2. ゼッケン一体型(Bibタグなど)
ゼッケンの裏側に薄いシート状のタグや、スポンジのようなものが貼り付けられているタイプです。シューズに装着する手間がなく、近年多くの大会で採用されています。多くの場合、フィニッシュ後の回収が不要で、そのまま持ち帰ることができます。

【注意】
ゼッケン一体型の場合、ゼッケンを折り曲げたり、安全ピンでタグ部分を刺したりするとチップが破損し、タイムが計測されなくなる恐れがあります。取り扱いには十分注意しましょう。

スタートラインとフィニッシュラインの通過

コース上のスタートライン、フィニッシュライン、そして5kmごとなどの計測ポイントには、特殊な「計測マット」が敷かれています。このマットの下にはアンテナが埋め込まれています。

ランナーがこのマットの上を踏んで通過した瞬間、シューズやゼッケンにつけたICチップが反応し、「ID番号〇〇番のランナーが、何時何分何秒に通過した」というデータが瞬時に計測システムへ送信されます。

スタート地点のマットを踏んだ時刻が「ネットタイムの開始時刻」、フィニッシュ地点のマットを踏んだ時刻が「ネットタイムの終了時刻」となります。この差分を計算することで、あなたの正確なネットタイムが算出されるのです。

記録証に記載される内容の見方

レースが終わると発行される記録証には、詳細なデータが記載されています。一般的には以下のような項目が並びます。

項目名 内容
グロスタイム 号砲からフィニッシュまでのタイム(公式記録)
ネットタイム スタートマット通過からフィニッシュまでのタイム
スプリットタイム スタートから各地点(5km, 10km…)までの通過タイム
ラップタイム 区間ごと(0-5km, 5-10km…)にかかった時間

特に「スプリットタイム」を見ることで、自分がレースのどの部分でペースダウンしたか、あるいは後半に追い上げられたかなど、詳細なレース分析が可能になります。これらはすべて、計測チップとマットの通信によって成り立っているのです。

注意が必要!関門閉鎖時間はグロスタイムが基準

ここまで「ネットタイムは自分の実力」とお伝えしてきましたが、レース本番で絶対に忘れてはいけないルールがあります。それは、コース各所に設けられた「関門(かんもん)」の閉鎖時間は、すべてグロスタイム(号砲基準)で管理されているという点です。

マラソン大会の「関門」とは

マラソン大会では、交通規制の時間に限りがあるため、「〇〇km地点を〇時〇分までに通過しなければならない」というルールが設けられています。これを「関門」と呼びます。

関門閉鎖時刻になってもその地点を通過できていないランナーは、その時点でレース終了(リタイア)となり、バスに収容されてフィニッシュ会場へ運ばれます。どんなに体力が残っていても、たった1秒でも遅れれば通過は許されません。

スタートロスが関門に与える影響

ここで問題になるのが、先ほど説明した「スタートロス」です。関門の閉鎖時刻は「号砲からの時間」で設定されています。つまり、後方ブロックからスタートして20分のロスがあった場合、そのランナーは第1関門までの制限時間が、先頭ランナーよりも実質20分短くなってしまうのです。

例えば、「第1関門(5km地点)の閉鎖がスタートから50分後」だとします。ロスタイムがなければ1km10分ペースでも通過できますが、ロスタイムが20分あると、実質30分で5kmを走らなければなりません。これは1km6分という、初心者にはかなり速いペースが求められることになります。

後方ブロックスタート時の対策

人気大会の後方ブロックからスタートする場合、最初の数キロは、周りのランナーも多くて思うように走れません。しかし、のんびりしすぎていると、気づかないうちに関門閉鎖の時間が迫ってきます。

対策としては、事前に大会要項(パンフレット)をよく読み、各関門の閉鎖時刻と、そこまでの距離を把握しておくことが重要です。「自分は○分遅れてスタートするだろうから、最初の関門まではキロ○分で走らないと危ないな」という計算を事前にしておきましょう。

ネットタイムでギリギリでも失格になるケース

非常に残酷な話ですが、フィニッシュ地点の制限時間が「7時間」の大会で、あなたがネットタイムで「6時間55分」で走り切れる実力を持っていたとしても、スタートロスが30分あれば、グロスタイムは「7時間25分」となります。

この場合、フィニッシュ地点のゲートは7時間の時点で閉ざされてしまうため、あなたは完走扱いにはなりません(あるいは、その手前の関門で止められてしまいます)。

【重要ポイント】
制限時間や関門時間はすべて「グロスタイム」が基準です。ギリギリの完走を目指すランナーほど、ネットタイムだけでなく、グロスタイム(時計の時刻)を常に意識して走る必要があります。

ネットタイムを縮めるためのレース戦略

ネットタイムは、スタートラインを越えてから計測が始まるとはいえ、レース全体の運び方次第で大きく変わります。特に、スタート直後の混雑をどう攻略するかが、良いネットタイムを出すための鍵となります。

スタート直後の混雑をどう乗り切るか

スタートラインを越えた直後は、コース幅に対してランナーの密度が非常に高く、思うようなスピードが出せません。「早く走りたい!」という焦りから、前の人を無理に抜こうとしてジグザグ走行をするランナーを見かけますが、これはおすすめできません。

左右に動くことで走行距離が伸びてしまいますし、急な加減速は体力を無駄に消耗します。また、接触による転倒トラブルの原因にもなります。スタート直後の数キロは「ウォーミングアップの続き」と割り切り、流れに身を任せて走るほうが、結果的に後半のスタミナ温存につながり、良いネットタイムにつながります。

自分のペースを見つけるための最初の1km

混雑の中で自分のペースを見失わないためには、最初の1kmの入り方が重要です。GPSウォッチを持っている場合は、1kmごとのラップタイムを確認しましょう。

もし予定より遅くても、焦って急激にペースを上げるのは禁物です。マラソンは長丁場です。遅れた分は、混雑が緩和される5km以降で、1kmあたり数秒ずつ取り戻していけば十分に間に合います。「借金は少しずつ返す」のがマラソンの鉄則です。

グロスとネットの差を埋める意識

ネットタイムを向上させるためには、実は「グロスタイムとの差(ロスタイム)」を意識しすぎないことが大切です。「スタートで10分待たされたから、急いで挽回しなきゃ!」とメンタル面で焦ってしまうことこそが、後半の失速を招く最大の敵です。

「今日はネットタイムで自己ベストを狙うぞ」と決めたなら、スタートラインを越えた瞬間に気持ちをリセットし、「ここからが私のゼロ秒だ」と言い聞かせましょう。号砲からの時間は忘れて、自分のリズムに集中することが、結果として最良のネットタイムを生み出します。

まとめ:マラソンのネットタイムとは「本当の実力」!グロスとの違いを理解して楽しもう

まとめ
まとめ

今回は、マラソンにおける「ネットタイム」について、グロスタイムとの違いや、それぞれの重要性について詳しく解説してきました。最後に、記事の要点を振り返ってみましょう。

【記事のポイントまとめ】

  • ネットタイムは、スタートライン通過からフィニッシュまでの実走時間。市民ランナーの「本当の実力」を知る指標。
  • グロスタイムは、号砲からフィニッシュまでの時間。公式記録や順位、関門閉鎖の基準となる絶対ルール。
  • 大規模大会では、スタートロスにより2つのタイムに数分〜数十分の差が生じることがある。
  • 自己ベスト更新や練習の成果を確認するならネットタイムを重視しよう。
  • 関門閉鎖(足切り)はグロスタイム基準なので、スタートロスが大きい場合は注意が必要。

マラソン大会に参加すると、どうしても公式タイムであるグロスタイムに目が行きがちです。しかし、何万人も参加する大会でスタートの号砲と同時に飛び出せるのは、ほんの一握りのエリートランナーだけです。

私たち市民ランナーにとって大切なのは、昨日の自分よりどれだけ成長できたか、そしてどれだけ楽しく走り切れたかです。その証となるのが「ネットタイム」です。

完走証に記された2つのタイム。グロスタイムは「大会の一部として走り切った証」、そしてネットタイムは「あなた自身が努力して駆け抜けた時間の証」です。ぜひ、この両方の数字の意味を噛み締めながら、次のレースに向けた目標を立ててみてください。ランニングの楽しさが、より一層深まるはずです。

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