「いつも同じペースでしか走れない」「レースの後半で失速してしまう」そんな悩みを抱えていませんか?ランニングのレベルアップを目指すなら、ぜひ取り入れたいのが「ビルドアップ走」です。ビルドアップ走は、ゆっくりとしたペースから走り始め、徐々にペースを上げていくトレーニング方法。
この練習は、心肺機能やスピード持久力の向上に繋がり、特にマラソンなどの長距離レースで後半に粘れる力を養うのに非常に効果的です。 この記事では、ビルドアップ走の基本的な知識から、初心者でも取り組める具体的なやり方、目的別のトレーニングメニュー、そして成功させるための注意点まで、やさしく丁寧に解説します。この記事を読めBば、あなたもビルドアップ走をマスターし、走りのレベルを一段階引き上げることができるでしょう。
ビルドアップ走とは?基本的な知識と効果

ビルドアップ走は、多くのランナーにとって効果的なトレーニング方法ですが、まずはその基本的な考え方と、具体的にどのような効果が期待できるのかを理解することが大切です。なぜこのトレーニングが多くのランナーに推奨されるのか、その理由を探っていきましょう。
ビルドアップ走の基本的な考え方
ビルドアップ走の基本的な考え方は、その名の通り「徐々にペースを上げていく(ビルドアップする)」という点にあります。 走り始めはウォーミングアップを兼ねた楽なペースでスタートし、体を慣らしながら少しずつスピードを上げていきます。そして、トレーニングの最後には、目標とするレースペースか、それよりも速いペースで終えるのが一般的です。
このトレーニングの優れた点は、1回の練習の中で、ゆっくりしたペースでの持久力トレーニングの要素と、速いペースでのスピードトレーニングの要素の両方を取り入れられることです。 最初から全力で走るインターバル走などとは異なり、徐々に負荷を高めていくため、体への負担が比較的少なく、ケガのリスクを抑えながら効果的にトレーニングできるというメリットがあります。 そのため、初心者から上級者まで、幅広いレベルのランナーにおすすめできる練習方法と言えるでしょう。
ビルドアップ走で得られる3つの主な効果
ビルドアップ走を継続的に行うことで、ランナーは主に3つの大きな効果を得ることができます。
1. 心肺機能の強化: トレーニングの後半にかけてペースを上げることで、心臓や肺に段階的に高い負荷がかかります。 これにより、酸素を効率よく体内に取り込み、筋肉へ送り届ける能力、いわゆる心肺機能が向上します。心肺機能が強くなると、同じペースで走っていても息切れしにくくなり、より楽に走り続けられるようになります。
2. スピード持久力の向上: スピード持久力とは、ある程度速いペースを長く維持する能力のことです。 ビルドアップ走では、疲労が溜まってきた後半にペースを上げるため、まさにこのスピード持久力を鍛えるのに最適です。 レースの終盤でペースが落ちてしまう「失速」を防ぎ、最後まで粘り強く走る力を養うことができます。
3. ペース感覚の養成: ゆっくりしたペースから速いペースまで、様々な速度域を経験することで、自分の体感と実際のペースとのズレを修正し、ペースコントロール能力を高めることができます。 レース本番では、その日の体調やコースに合わせてペースを微調整する能力が求められます。ビルドアップ走は、そうした実践的なペース感覚を磨く絶好の機会となるのです。
なぜビルドアップ走がランナーにおすすめなのか
ビルドアップ走が多くのランナー、特に市民ランナーにおすすめされる理由は、その効率性と実践性にあります。忙しい日常の中で練習時間を確保するのが難しいランナーにとって、1回の練習で持久力とスピードの両方を鍛えられるビルドアップ走は、非常に「時短」効果の高いトレーニングです。 走り始めのゆっくりしたペースがウォーミングアップの代わりにもなるため、すぐに本練習に入ることができます。
また、レース本番のシミュレーションとしても非常に有効です。マラソンなどの長距離レースでは、前半は体力を温存し、後半に勝負をかける「ネガティブ・スプリット(後半の方が前半より速いペースで走ること)」が理想的な展開とされています。 ビルドアップ走は、このネガティブ・スプリットを体で覚えるための最適なトレーニングです。 疲れてきた終盤にこそペースを上げるという経験を積むことで、精神的な強さも養われ、レース後半での粘りにつながるでしょう。
ビルドアップ走の具体的なやり方とペース設定

ビルドアップ走の効果を最大限に引き出すためには、正しいやり方と適切なペース設定が不可欠です。ここでは、練習場所の選び方から、初心者でも安心して取り組めるペース設定の基本、そしてトレーニング前後に欠かせないウォーミングアップとクールダウンについて具体的に解説します。
練習場所と距離・時間の決め方
ビルドアップ走を行う場所は、ペースをコントロールしやすい環境が理想的です。陸上競技場のトラックや、公園内の周回コースなど、信号や交差点で中断されることのない場所を選びましょう。 もし適切な場所がなければ、交通量の少ない河川敷や広い歩道などでも構いません。
走る距離や時間は、自分の走力やトレーニングの目的に合わせて設定します。初心者の場合は、まず5km程度の短い距離から始めてみるのがおすすめです。 慣れてきたら徐々に距離を伸ばし、10kmから15km程度を目安に行うのが一般的です。 時間で設定する場合は、30分から60分程度で始め、最終的には90分以上を目指すなど、目標に応じて調整しましょう。重要なのは、無理なく、かつ最後までペースを上げ切れる距離や時間を設定することです。
初心者でも安心!ペース設定の基本
ペース設定はビルドアップ走の最も重要な要素ですが、難しく考える必要はありません。 初心者の場合、最初は「だんだん速くする」という意識だけで十分です。 GPSウォッチなどを使ってペースを確認できる場合は、1kmごと、あるいは2〜3kmごとに10〜30秒ずつペースを上げていくのが分かりやすいでしょう。
例えば、10kmのビルドアップ走を行う場合、以下のようにペースを区切ってみましょう。
・次の3km:ジョギングペースから少しだけペースアップ
・次の2km:フルマラソンの目標レースペース
・最後の2km:レースペースよりもさらに少し速いペース
このように、走り始めは楽なペースで入り、最後の区間で最も速くなるように設定するのが基本です。 大切なのは、前半にペースを上げすぎてしまい、後半に失速しないことです。 必ず余力を残してスタートし、「後半に上げる」ことを徹底しましょう。
ウォーミングアップとクールダウンの重要性

ビルドアップ走は、走り始めがゆっくりなのでウォーミングアップを兼ねることもできますが、より安全で効果的に行うためには、事前のウォーミングアップと事後のクールダウンをしっかり行うことが推奨されます。
ウォーミングアップでは、軽いジョギングやウォーキングで体を温め、その後、肩回しや股関節、足首などをゆっくり動かす動的ストレッチを行い、筋肉や関節を走る準備状態にしましょう。
トレーニング後は、急に立ち止まらず、ゆっくりとしたジョギングやウォーキングで徐々に心拍数を落ち着かせていくクールダウンが重要です。 その後、太ももの前後、ふくらはぎ、お尻などを中心に、静的ストレッチ(反動をつけずにゆっくり筋肉を伸ばす)を入念に行いましょう。これにより、筋肉の疲労回復を促し、怪我の予防に繋がります。ビルドアップ走は体に負荷のかかるトレーニングなので、練習後のケアは特に丁寧に行うことを心がけてください。
ビルドアップ走を成功させるためのポイントと注意点
ビルドアップ走は効果的なトレーニングですが、やり方を間違えると十分な効果が得られなかったり、怪我につながるリスクもあります。ここでは、トレーニング効果を最大限に高め、安全に続けるためのポイントと注意点を詳しく解説します。
「後半にペースを上げる」を意識するコツ
ビルドアップ走の最大のポイントは、「後半にペースを上げること」です。 しかし、走り始めは体も軽く、ついついペースを上げてしまいがちです。これを防ぐためには、最初の区間は「これでも遅すぎるかな?」と感じるくらい、意識的にゆっくり入ることが重要です。おしゃべりしながら走れるくらいの余裕を持つのが目安です。
GPSウォッチでペースを確認しながら走るのも有効ですが、時には自分の感覚を頼りに走ることも大切です。 体が温まってきて、呼吸が楽になってくると、自然とペースを上げたくなります。その感覚に従って、無理のない範囲で徐々にスピードに乗っていくのが理想的な展開です。 あくまで主役は後半にあることを忘れず、前半はエネルギーを温存することに集中しましょう。
やりすぎは禁物!適切な頻度とは
ビルドアップ走は、スタミナとスピードを同時に鍛えられる万能型のトレーニングですが、その分だけ体への負担も大きい練習です。 そのため、毎日行うようなトレーニングではありません。練習の頻度としては、週に1〜2回程度が適切とされています。 例えば、週の半ばにビルドアップ走を行い、週末にゆっくり長い距離を走るロング走を組み合わせるなど、他のトレーニングとのバランスを考えることが大切です。
トレーニングの後に強い疲労感が残る場合や、筋肉痛がひどい場合は、頻度が高すぎるか、設定ペースが速すぎる可能性があります。自分の体の声に耳を傾け、無理のない範囲で継続することが、長期的な成長につながります。オーバートレーニングはパフォーマンスの低下や怪我の原因になるので注意しましょう。
フォームの乱れに注意しよう
ペースを上げていくと、特に疲労が出てくる後半にはランニングフォームが乱れやすくなります。腕の振りが小さくなったり、体が左右にぶれたり、顎が上がったりするのはフォームが崩れているサインです。
ビルドアップ走の目的の一つは、速いペースを良いフォームで維持する能力を養うことです。 苦しくなってきた時こそ、腕をしっかり振ること、骨盤から脚を動かすこと、そして体幹を安定させることを意識しましょう。もしフォームの乱れが大きくなるようであれば、それは設定ペースが速すぎる証拠かもしれません。無理にペースを維持するのではなく、少しペースを落としてでも、フォームを崩さないことを優先してください。良いフォームで走ることは、効率的な走りを身につけ、怪我のリスクを減らす上で非常に重要です。
体調が悪い日は無理をしない
ビルドアップ走は、心身ともに良いコンディションで行うことで最大の効果を発揮します。睡眠不足や仕事で疲れている日、体に違和感がある日などは、無理して計画通りにビルドアップ走を行う必要はありません。
そのような日は、思い切って練習を休むか、ペースを気にしないゆっくりとしたジョギングに切り替える勇気を持ちましょう。 無理をしてトレーニングを消化しても、効果が薄いばかりか、体調をさらに悪化させたり、怪我を引き起こしたりする原因になりかねません。トレーニングは継続することが最も大切です。焦らず、自分の体と相談しながら、柔軟に計画を変更していきましょう。
目的別!ビルドアップ走のトレーニングメニュー例

ビルドアップ走は、距離やペース設定を調整することで、ランナーのレベルや目的に合わせた多様なトレーニングが可能です。 ここでは、「初心者向け」「中級者向け」「マラソン対策」という3つの目的別に、具体的なトレーニングメニューの例を紹介します。自分の目標に合わせて、ぜひチャレンジしてみてください。
【初心者向け】まずは5kmから挑戦するビルドアップ走
ランニングを始めたばかりの方や、まだ長い距離に慣れていない方は、まずは5kmのビルドアップ走から始めてみましょう。 このメニューの目的は、ペースを変化させることに慣れ、「後半にペースを上げる」という感覚を掴むことです。ペース設定は厳密でなくても構いません。「気持ち良く走れるペース」から始め、最後の1kmで「少し息が弾むくらい」までペースを上げることを目指しましょう。
・ペース設定例
・1〜2km ウォーキングに近いゆっくりとしたジョグ。隣の人と楽に会話ができるペース。
・3km 少しペースを意識し始める。快適に走れるペース。
・4km さらに少しペースアップ。呼吸が少し弾み始める。
・5km 5kmの中で一番速いペースで走る。息は弾むが、フォームは崩れない程度。
この練習を週に1回程度取り入れることで、心肺機能への適度な刺激となり、ペースコントロールの基礎を学ぶことができます。まずは完走することを目標に、楽しみながら取り組んでみましょう。
【中級者向け】10kmでスタミナとスピードを養う
普段から5km〜10kmのランニングに慣れている中級者の方は、10kmのビルドアップ走に挑戦してみましょう。 このレベルでは、より具体的なペース設定を行い、スタミナとスピード持久力の両方を効率的に高めることを目的とします。自分の10kmのベストタイムや、目標とするマラソンペースを基準に設定すると良いでしょう。
ペース設定例(フルマラソンでサブ4(4時間切り)を目指すランナーの場合)
・1〜3km キロ6分00秒ペース(目標レースペースより遅い)
・4〜6km キロ5分40秒ペース(目標レースペース)
・7〜8km キロ5分30秒ペース(目標レースペースより速い)
・9〜10km キロ5分20秒ペース(さらにペースアップし、全力に近いペース)
この練習では、中盤でレースペースを経験し、さらに終盤でそれ以上のペースに上げることで、レース後半での粘りを強化します。 疲労が溜まった状態でいかにペースを維持、向上させられるかがポイントになります。
【マラソン対策】レース後半の失速を防ぐための実践的ビルドアップ走
フルマラソンでの自己ベスト更新や、後半の失速克服を目指す上級者ランナーには、より長い距離での実践的なビルドアップ走が効果的です。15kmや20kmといった距離を設定し、フルマラソンのレース展開をシミュレーションします。この練習の目的は、長時間のランニングによる疲労に耐えながら、レース後半でペースを上げるための身体的・精神的な能力を養うことです。
ペース設定例(フルマラソンでサブ3.5(3時間半切り)を目指すランナーの場合)
・1〜5km キロ5分15秒〜5分30秒ペース(ウォーミングアップ兼持久力向上)
・6〜10km キロ5分00秒ペース(目標レースペース)
・11〜13km キロ4分50秒ペース(LTペース*に近い強度で乳酸除去能力を刺激)
・14〜15km キロ4分40秒ペース、もしくはそれ以上(スピード持久力を限界まで高める)
LTペース(乳酸性作業閾値ペース):運動強度を上げていくと急激に血中乳酸濃度が高まるポイントのペース。ややきついと感じるくらいのペースで、長時間維持できる限界の速さに近い。
このトレーニングは負荷が高いため、レースの数週間前までに行い、頻度は2週間に1回程度に留めるのが良いでしょう。レース本番さながらの厳しい状況を作り出すことで、自信を持ってスタートラインに立つことができます。
ビルドアップ走と他のトレーニングとの違い

ランニングのトレーニングには、ビルドアップ走以外にも「ペース走」や「インターバル走」など、様々な種類があります。それぞれに異なる目的と効果があり、これらの違いを理解することで、自分の目標に合わせてより効果的なトレーニング計画を立てることができます。ここでは、ビルドアップ走と代表的なトレーニングとの違いを比較してみましょう。
ビルドアップ走 vs ペース走(Tペース走)
ペース走は、一定のペースを維持して走り続けるトレーニングです。 特に、レースで目標とするペース(レースペース)や、ややきついと感じるLTペースで実施されることが多く、特定のペースを体に覚え込ませ、そのペースを維持する能力(持久力)を高めることを目的とします。
ペースの変化
・ビルドアップ走 徐々にペースを上げていく(可変ペース)
・ペース走 最初から最後まで一定のペースを維持する(一定ペース)
主な目的
・ビルドアップ走 心肺機能、スピード持久力、ペース感覚の総合的な向上。レース後半の粘りを養う。
・ペース走 目標ペースでの巡航能力の向上。持久力の強化。
ビルドアップ走がレース後半の「ペースアップ」をシミュレーションする練習であるのに対し、ペース走はレース中盤の「ペース維持」をシミュレーションする練習と考えると分かりやすいでしょう。
ビルドアップ走 vs インターバル走
インターバル走は、「疾走(速く走る区間)」と「休息(ゆっくり走る、または歩く区間)」を交互に繰り返す高強度のトレーニングです。 レースペースよりもかなり速いペースで走ることで、最大酸素摂取量(VO2max)という、体内に取り込める酸素の最大量を向上させ、スピード能力そのものを高めることを目的とします。
ペースの変化
・ビルドアップ走 連続して走りながら、徐々にペースを上げる。
・インターバル走 速いペースと遅いペースを交互に繰り返す。間に休息が入る。
主な目的
・ビルドアップ走 スピード持久力の向上、レース後半のシミュレーション。
・インターバル走 最大酸素摂取量の向上、絶対的なスピードの強化。
ビルドアップ走は比較的長い時間走り続ける中で負荷を上げていくのに対し、インターバル走は短い時間で体に非常に強い負荷をかけるという点で大きく異なります。
ビルドアップ走 vs ジョギング
ジョギングは、会話ができるくらいのゆっくりとした楽なペースで走るトレーニングです。主な目的は、ランニングの基礎となる持久力の養成、疲労回復(アクティブレスト)、ランニングの習慣化などです。体への負荷が低いため、初心者や怪我明けのランナーでも安全に取り組めます。
ペースの変化
・ビルドアップ走 ゆっくりから速いペースへと変化する。
・ジョギング 終始ゆっくりとした一定のペースで走る。
主な目的
・ビルドアップ走 走力の総合的なレベルアップ。
・ジョギング 基礎体力の向上、疲労回復、健康維持。
ビルドアップ走は、ジョギングの延長線上にありながら、後半にペースアップという負荷を加えることで、ジョギングだけでは得られないスピード持久力や心肺機能への刺激を得られるトレーニングと位置づけられます。 普段のジョギングにマンネリを感じたら、最後の1kmだけペースを上げてみることから始めるのも、ビルドアップ走への第一歩と言えるでしょう。
ビルドアップ走で走りのレベルを一段階上げよう

この記事では、ランニングのレベルアップに欠かせない「ビルドアップ走」について、その効果から具体的なやり方、目的別のメニュー、他のトレーニングとの違いまで詳しく解説しました。ビルドアップ走は、ゆっくりしたペースから徐々にスピードを上げていくことで、心肺機能、スピード持久力、そしてペース感覚という、ランナーに必要な能力をバランス良く鍛えることができる非常に効率的なトレーニングです。 特に、レース後半での失速を防ぎ、粘り強い走りをするための実践的な練習として大きな効果が期待できます。
大切なのは、自分のレベルに合わせて無理のない設定から始め、何よりも「後半にペースを上げる」という基本を忠実に守ることです。 週に1回でも継続して取り入れることで、きっとあなたの走りは変わり始めます。普段のジョギングに変化をつけたい初心者の方から、自己ベスト更新を目指すシリアスランナーまで、ビルドアップ走をトレーニングに組み込み、走りの新たな可能性を引き出しましょう。



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