マラソンの暑さ対策で完走を目指す!夏場の練習からレース本番まで

マラソンの暑さ対策で完走を目指す!夏場の練習からレース本番まで
マラソンの暑さ対策で完走を目指す!夏場の練習からレース本番まで
【コンディショニング】最高のパフォーマンスのために

マラソン大会や日々のランニングにおいて、暑さはランナーにとって最大の敵といっても過言ではありません。気温が上がる季節は、パフォーマンスが低下するだけでなく、熱中症のリスクも高まります。「暑くてすぐにバテてしまう」「夏の練習はどうすればいいの?」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

適切な暑さ対策を行うことは、安全に走り続けるために不可欠です。この記事では、ウェア選びから水分補給のテクニック、夏場のトレーニング方法まで、詳しく解説していきます。

目次

マラソンの暑さ対策が重要な理由とは?熱中症のリスクを知ろう

マラソンにおける暑さ対策は、単に「快適に走るため」だけのものではなく、命を守るための重要な準備です。気温が高い環境でのランニングが身体にどのような影響を与えるのか、そのメカニズムを正しく理解することから始めましょう。

体温上昇によるパフォーマンスの低下

ランニング中は筋肉が活動することで熱が発生し、体温が上昇します。通常、身体は汗をかき、その汗が蒸発する際の気化熱を利用して体温を下げようとします。しかし、外気温や湿度が高いとこの冷却機能が追いつかず、深部体温が過度に上昇してしまいます。
深部体温が上がりすぎると、脳は身体を守るために運動強度を落とそうと指令を出します。これが「暑さで足が動かなくなる」主な原因です。また、消化機能の低下も招くため、エネルギー補給がうまくいかなくなることもあります。記録を狙う場合でも、まずは体温の上昇をいかに抑えるかが、後半の失速を防ぐ大きなポイントになります。

血液循環の変化と心臓への負担

暑い中で運動をすると、身体は熱を放出しようとして、皮膚の表面に多くの血液を集めます。これは車のラジエーターのような役割を果たし、外気で血液を冷やそうとするためです。しかし、その分だけ筋肉へ送られる血液量が相対的に減少してしまいます。
筋肉への酸素供給が減ると、同じペースで走っていても心拍数が上がりやすくなり、通常よりも疲労が早く蓄積します。心臓は「筋肉に酸素を送る」ことと「皮膚で熱を逃がす」ことの両方をこなさなければならず、負担が激増します。夏場のランニングで息が上がりやすいのは、このような身体の反応によるものなのです。

脱水症状と電解質バランスの崩れ

大量の汗をかくと、水分だけでなく、ナトリウム(塩分)などの電解質も一緒に体外へ排出されます。体重の2%以上の水分が失われると、持久力の低下が始まると言われています。さらに脱水が進むと、体温調節機能が麻痺し、熱中症のリスクが急激に高まります。
また、水分だけを補給して塩分が不足すると、体内の電解質バランスが崩れ「低ナトリウム血症」を引き起こす可能性があります。これは筋肉の痙攣(けいれん)や意識障害を招く危険な状態です。暑さ対策においては、単に喉を潤すだけでなく、体内の水分と塩分のバランスを一定に保つことが非常に重要です。

暑さに負けないための服装とアイテム選び

暑い時期のランニングでは、ウェアや小物の選び方一つで体感温度が大きく変わります。熱を体に溜め込まず、紫外線から身を守るための装備を整えましょう。ここでは具体的なアイテムの選び方を紹介します。

通気性と吸汗速乾性に優れたウェア

ウェア選びで最も重視すべきなのは、素材です。綿(コットン)素材は汗を吸うと重くなり、乾きにくいため、体温を下げる妨げになります。ポリエステルなどの化学繊維で作られた「吸汗速乾性」の高いウェアを選びましょう。
また、最近では「接触冷感素材」を使用したシャツやインナーも人気です。肌に触れた瞬間にひんやりと感じるため、精神的な不快感も軽減されます。背中や脇の下など、汗をかきやすい部分がメッシュ加工になっているものは通気性が抜群です。色は黒や紺などの濃い色は熱を吸収しやすいため、白やパステルカラーなどの淡い色を選ぶと、太陽光を反射して衣服内の温度上昇を抑えられます。

帽子とサングラスで直射日光をガード

頭部は直射日光を受けやすく、熱がこもりやすい部位です。ランニングキャップは必須アイテムですが、ここでも通気性が重要になります。全体がメッシュ素材のものや、頭頂部にベンチレーション(通気口)があるタイプがおすすめです。
サングラスも暑さ対策に役立ちます。目から強い紫外線が入ると、脳が「強い日差しの中にいる」と判断し、疲労物質を分泌して身体を疲れさせると言われています。UVカット機能付きのスポーツ用サングラスを着用することで、目からの情報をコントロールし、体感的な疲労度を下げることができます。顔にフィットし、走ってもズレにくい軽量なモデルを選んでください。

首元を冷やす冷却グッズの活用

太い血管が通っている首元を冷やすことは、効率的に体温を下げるために非常に有効です。水に濡らして振るだけで冷たくなる「冷却タオル」や、首に巻くタイプの「ネッククーラー」を活用しましょう。
最近では、特殊な冷却材(PCM素材など)を使用し、28度以下で自然凍結するリング状のネッククーラーもランナーの間で普及しています。これらは結露しにくく、長時間ひんやりとした感覚が続くため、長距離のランニングにも適しています。保冷剤を入れるポケットが付いたバンダナなどを利用するのも良い方法です。首元を冷やすことで脳への血液温度上昇を防ぎ、シャキッとした感覚を維持できます。

アームカバーで日焼けによる疲労を防ぐ

「暑いのに長袖やアームカバーをつけるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、直射日光が肌に直接当たると、皮膚表面の温度が上がり、日焼け(火傷と同じ状態)によるエネルギー消費が発生します。これが後半のスタミナ切れに繋がります。
UVカット機能と接触冷感機能を備えたアームカバーを着用することで、日差しを遮りつつ、風が当たると涼しく感じられます。水をかけると気化熱でさらに冷えるタイプもおすすめです。暑い時は手首まで下げて汗を拭くリストバンド代わりにし、日差しが強い時は腕全体を覆うなど、状況に応じて調整できるのもアームカバーの利点です。

レース前と走行中の水分・塩分補給テクニック

マラソンにおける水分補給は、タイミングと内容がすべてです。喉が渇いてから飲むのでは遅すぎます。戦略的な補給計画を立てて、身体の内側から暑さ対策を行いましょう。

ウォーターローディングの基礎知識

レース当日に備えて、数日前から意識的に水分を摂る方法を「ウォーターローディング」と呼びます。一度に大量に飲むのではなく、コップ1杯程度の水をこまめに摂取し、体内の水分量を高いレベルで維持することが目的です。
目安としては、尿の色が透明に近い薄い黄色であれば、水分が足りている状態です。濃い黄色の場合は脱水気味のサインですので、積極的に水分を摂りましょう。ただし、水だけを飲みすぎると体内のナトリウム濃度が下がってしまうため、食事や経口補水液などで適度な塩分も一緒に摂ることを忘れないでください。スタートの30分前までに250ml〜500ml程度をゆっくり飲み終えておくのが理想です。

ハイポトニック飲料とアイソトニック飲料の使い分け

スポーツドリンクには大きく分けて「アイソトニック」と「ハイポトニック」の2種類があります。これらを状況に合わせて使い分けることが、効果的な水分補給のコツです。
「アイソトニック(等張液)」は体液とほぼ同じ浸透圧で、糖質も含まれているため、エネルギー補給も兼ねてレース前や練習後のリカバリーに適しています。一方、「ハイポトニック(低張液)」は体液より浸透圧が低く、水分が腸から素早く吸収されるように設計されています。発汗量が多いレース中や夏場のランニング中は、素早い吸収が求められるため、ハイポトニック飲料がおすすめです。市販のスポーツドリンクを水で少し薄めると、ハイポトニックに近い状態を作ることができます。

塩分タブレットやジェルの活用法

汗をかくと失われるのは水分だけではありません。ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラル分も流出します。これらが不足すると、足の攣り(つり)や熱中症の原因となります。給水所にあるスポーツドリンクだけでは塩分が足りない場合があるため、携帯しやすい「塩分タブレット」や「塩熱サプリ」を活用しましょう。
5km〜10kmごとに1粒摂取するなど、ルールを決めておくのがおすすめです。また、エネルギージェルの中にもマグネシウムや塩分を含んだものがあります。これらを活用すれば、エネルギー補給と同時に電解質補給も可能です。水で流し込むようにして飲むと、胃への負担も軽減されます。

かぶり水で体を外部から冷やす

給水所にある水は「飲む」だけでなく「被る(かぶる)」ためにも使えます。これを「かぶり水」と言います。直接身体を濡らすことで、気化熱を利用して強制的に体温を下げることができます。
効果的なのは、太い血管が通っている「首筋」や、大きな筋肉がある「太もも」にかけることです。頭からかけるのもスッキリしてリフレッシュ効果がありますが、シューズの中に水が入ると豆(マメ)の原因になるため注意が必要です。首の後ろや手首に水をかけるだけでも、深部体温の上昇を抑える効果が期待できます。スポンジが用意されている大会では、首筋に挟んで走るのも有効なテクニックです。

夏のマラソン練習で意識すべき暑熱順化とトレーニング法

夏の間にどのような練習をするかで、秋以降のレース結果が決まります。無理をせず、賢く身体を暑さに慣らしていく方法を取り入れましょう。

暑熱順化(しょねつじゅんか)とは何か

暑熱順化とは、徐々に身体を暑さに慣らしていく生理的な適応のことです。順化が進むと、汗をかくタイミングが早くなり、汗に含まれる塩分濃度が薄くなるため、効率よく体温を下げられるようになります。

一般的に、暑熱順化が完了するには7日〜14日程度かかると言われています。急に暑い日に長距離を走るのではなく、まずはウォーキングや軽いジョギングから始め、少しずつ時間を延ばしていきましょう。また、お風呂で湯船に浸かって汗をかくことも、擬似的な暑熱順化トレーニングになります。順化の効果は数日で薄れてしまうため、継続的に暑さに触れることが大切です。

早朝や夜間の涼しい時間帯の活用

日本の真夏の日中(特に10時から15時頃)に激しいトレーニングを行うのは、熱中症のリスクが高すぎるため避けるべきです。質の高い練習を行うためには、早朝や夜間の比較的涼しい時間帯を活用しましょう。
早朝ランニングは、空気が澄んでいて気温も一日の中で最も低いため、快適に走れます。また、朝食前に走ることで脂肪燃焼効率が高まるメリットもあります。夜間ランニングの場合は、日差しがない分走りやすいですが、湿気が残っていることが多いです。どちらの場合も、湿度が80%を超えるような日は、気温が低くても熱中症の危険があるため注意が必要です。

ジムのトレッドミルを使った練習

外の暑さが危険なレベル(猛暑日など)の場合は、無理をして外を走る必要はありません。冷房の効いたスポーツジムを利用し、トレッドミル(ランニングマシン)で走るのも立派なトレーニングです。
トレッドミルでは、一定のペースで走り続ける練習や、傾斜をつけて心肺機能を強化する練習が可能です。信号待ちがないため、集中してフォームを確認することもできます。「今日は暑すぎて外は無理」と判断したら、潔く室内トレーニングに切り替える柔軟性が、夏場の練習を継続するコツです。

短時間集中型のトレーニングメニュー

夏場は長時間走り続ける「LSD(ロング・スロー・ディスタンス)」のような練習は、身体への負担が大きくなります。その代わり、短時間で高い効果が得られるトレーニングを取り入れてみましょう。
例えば、1kmなどの短い距離を速いペースで数本走る「インターバル走」や、坂道を駆け上がる「坂道ダッシュ」などがおすすめです。これらは心肺機能や筋力を効率よく強化でき、トータルの練習時間を短く抑えられるため、暑さによるダメージを最小限に留めることができます。また、走るだけでなく、自宅での体幹トレーニングやストレッチに時間を割くのも、秋に向けた土台作りとして有効です。

レース当日の朝からスタート直前までの過ごし方

いよいよレース本番。スタートラインに立つまでの過ごし方が、完走への大きな一歩となります。無駄な体力消耗を防ぎ、ベストな状態でスタートを切りましょう。

身体を内側から冷やす「プレクーリング」

近年、注目されているのが「プレクーリング」という手法です。これは運動開始前にあらかじめ深部体温を下げておくことで、パフォーマンスを維持できる時間を延ばそうとするものです。
具体的な方法として、「アイススラリー」と呼ばれる細かい氷の粒子が混ざったシャーベット状の飲料を摂取することが効果的です。内臓から直接身体を冷やすことができ、深部体温の上昇を遅らせる効果が研究で示されています。コンビニで売っている凍らせたパウチタイプのドリンクを、少し溶かしてシャーベット状にして飲むのが手軽でおすすめです。

起床時間と朝食の消化タイミング

暑い日のレースでは、内臓への負担も大きくなります。スタート時に胃の中に未消化の食べ物が残っていると、気持ち悪くなったり、腹痛の原因になったりします。
通常、固形物が消化されるには3時間程度かかります。そのため、スタート時間の3〜4時間前には起床し、朝食を済ませておくのが鉄則です。メニューは脂質や食物繊維が少なく、消化の良い炭水化物(おにぎり、餅、うどんなど)を中心に選びましょう。もし時間が取れない場合は、ゼリー飲料やバナナなど、消化吸収の速いものでエネルギーを補給します。

スタート待機中の日陰確保と冷却

大規模な市民マラソンでは、整列してからスタートするまでに30分以上待たされることがあります。この待機時間に直射日光を浴び続けると、走る前から体力を消耗してしまいます。
可能な限り日陰を探して待機するか、帽子やタオルで頭と首筋を守りましょう。使い捨ての雨ガッパ(透明なもの)はサウナ状態になるため、暑い日は逆効果です。代わりに、濡らしたタオルを首に巻いたり、保冷剤を握ったりして、手のひらや首筋を冷やし続けることが有効です。スタート直前まで、いかに体温を上げないかどうかが勝負の分かれ目となります。

もしもの時の対処法とレース中の身体のサイン

どんなに準備をしていても、レース中に体調が急変することはあります。自分の身体が出すSOSサインを見逃さず、適切な対処を行うことが、自分自身を守ることに繋がります。

めまいや頭痛は危険信号

走っている最中に「めまい」「立ちくらみ」「頭痛」「吐き気」などを感じたら、それは熱中症の初期症状である可能性が高いです。特に、意識がぼんやりしたり、直線で走れなくなったりした場合は非常に危険な状態です。
これらのサインが出たら、すぐにペースを落とし、歩くか立ち止まってください。無理をして走り続けると、突然倒れて意識を失う恐れがあります。日陰に入り、水分と塩分を補給し、首筋や脇の下を冷やして身体を休めましょう。「少し休めば治るかも」と楽観視せず、近くのスタッフや救護所に助けを求める勇気を持つことが大切です。

足の痙攣(けいれん)が起きたら

ふくらはぎなどがつる「こむら返り」は、筋肉疲労だけでなく、脱水やミネラル不足によって引き起こされることが多いです。もし足がつってしまったら、無理に伸ばそうとせず、まずは安全な場所に移動して立ち止まります。
痛みが落ち着くまで患部をゆっくりと伸ばすストレッチを行いますが、強引に伸ばすと肉離れを起こす可能性があります。同時に、水分と塩分タブレットなどを補給しましょう。漢方薬の「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」が即効性があるとして、ランナーの間でのお守りとして知られています。レースに携帯しておくと安心です。

勇気あるリタイアの判断基準

完走は素晴らしい目標ですが、健康を害してまで達成すべきものではありません。「汗が止まった(皮膚が乾いている)」「手足が痺れる」「視界が狭くなる」といった症状は、重度の熱中症のサインです。これらが現れたら、即座にレースを中止してください。
「せっかく練習してきたから」という気持ちは痛いほど分かりますが、次のレースはまた必ずやってきます。自分の身体を守れるのは自分だけです。体調不良を感じた際に、勇気を持って「リタイア(棄権)」を選択することも、ランナーとしての大切な判断力の一つです。

マラソンの暑さ対策を万全にして安全にランニングを楽しもう

まとめ
まとめ

マラソンにおける暑さ対策について、服装、水分補給、トレーニング、そしてレース当日の対処法まで幅広く解説してきました。
ポイントは、熱を体に溜め込まない「吸汗速乾ウェア」や「冷却グッズ」の活用、喉が渇く前の「計画的な水分・塩分補給」、そして日頃からの「暑熱順化」です。これらを組み合わせることで、過酷な夏場の環境でも安全にパフォーマンスを発揮することができます。

暑さは精神的にも肉体的にも大きな負荷をかけますが、正しい知識を持って準備をすれば、決して怖いものではありません。無理をせず、自分の体調と対話しながら、安全第一でランニングライフを楽しんでください。しっかりとした対策を行い、目標の大会で最高の笑顔でゴールできることを応援しています!

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