夏のランニングは、気持ち良い汗をかける一方で、厳しい暑さがパフォーマンスの低下や熱中症のリスクにつながります。 そんなランナーの悩みに応えるアイテムとして注目されているのが「コアクーラー」です。コアクーラーは、手のひらを適温で冷やすことで、体の内側から効率的にクールダウンさせる画期的なアイテムです。
これまでのネッククーラーや冷たいタオルとは一線を画すその仕組みは、深部体温の上昇を抑え、ランニングの質を大きく向上させる可能性を秘めています。この記事では、コアクーラーがランニングにもたらす効果から、その科学的背景、具体的な使い方、選び方まで、わかりやすく解説していきます。コアクーラーを正しく理解し、活用することで、夏のランニングをより安全で快適なものにしましょう。
コアクーラーとは?ランニングの新常識「手のひら冷却」の秘密

近年、ランニングやスポーツ界隈で話題の「コアクーラー」。特に夏のトレーニングにおいて、その効果に注目が集まっています。一体どのようなアイテムなのでしょうか。
手のひらを冷やす画期的なアイテム「コアクーラー」の仕組み
コアクーラーは、主にスポーツ用品メーカーのデサントと、電機メーカーのシャープが共同開発した、手のひらを冷却するためのアイテムです。 シャープが開発した「適温蓄冷材」を、デサントが開発したグローブ型のアタッチメントに装着して使用します。 この製品の最大の特徴は、蓄冷材が12℃という「適温」をキープしてくれる点にあります。
一般的な保冷剤のように冷たすぎると、血管が収縮してしまい、かえって冷却効果が下がってしまいます。 しかし、コアクーラーは12℃という、血管を収縮させることなく効率的に血液を冷やせる温度を維持することで、体の深部体温を効果的に下げることを可能にしているのです。 グローブ型なので、ランニング中でも手の操作性を妨げにくく、快適に使用できる点も大きな魅力です。
なぜ手のひらが重要?AVA血管と深部体温の関係
では、なぜ「手のひら」を冷やすことが、体全体の冷却に繋がるのでしょうか。その鍵を握るのが、手のひらや足の裏、顔の一部に存在する「AVA(動静脈吻合)」という特殊な血管です。 AVAは、動脈と静脈をバイパスのようにつなぐ血管で、体温調節の重要な役割を担っています。 暑い時にはこのAVAが開いて大量の血液を流し、熱を体外に放出することで体温を下げようとします。
手のひらにはこのAVA血管が密集しているため、ここを効率的に冷やすことで、冷やされた血液が全身を巡り、体の中心部の温度である「深部体温」を下げることができるのです。 深部体温の上昇は、疲労やパフォーマンス低下、さらには熱中症の直接的な原因となるため、手のひらを介して深部体温をコントロールすることは、非常に合理的な暑熱対策と言えます。
アイシングやネッククーラーとの違い
これまで暑さ対策としては、首筋などを冷やすネッククーラーや、氷嚢(ひょうのう)などを使ったアイシングが一般的でした。もちろん、これらの方法にも一定の効果はありますが、コアクーラーによる「手のひら冷却」とはアプローチが異なります。
ネッククーラーは、太い血管が通る首を冷やすことで冷たい血液を脳に送り、体感的な涼しさを得る効果が期待できます。しかし、深部体温を直接下げる効果は、手のひら冷却ほど高くはないとされています。
一方、氷などを使ったアイシングは、局所を強力に冷やすことができますが、冷たすぎると血管が収縮してしまい、血流が悪くなる可能性があります。 また、常に氷を準備する必要があるなど、手軽さの面でも課題があります。
その点、コアクーラーはAVA血管に特化し、「12℃」という適温で持続的に冷却することで、体への負担を抑えつつ深部体温を効率的に下げることを目的としています。 手軽に装着でき、ランニング中も使用できるため、より実践的な暑熱対策と言えるでしょう。
ランニングにおけるコアクーラーの絶大な効果とは?

コアクーラーが手のひらを冷やすことで深部体温にアプローチすることはご理解いただけたと思います。では、具体的にランニングにおいてどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
パフォーマンス向上!深部体温の上昇を抑える効果
ランニング中は筋肉の活動により大量の熱が発生し、体温が上昇します。特に深部体温が過度に上昇すると、体は生命の危険を避けるためにパフォーマンスにブレーキをかけ始めます。具体的には、疲労感を強く感じたり、ペースを維持するのが困難になったりします。
コアクーラーは、この深部体温の上昇を抑制する効果が期待できます。 運動中に手のひらを冷却し続けることで、体温上昇のペースを緩やかにし、パフォーマンスが低下するのを防ぎます。これにより、ランナーはより長く、より快適に走り続けることが可能になります。実際に、トップアスリートもトレーニングやレースで手のひら冷却を取り入れており、その効果は実証されつつあります。 暑い日のレース終盤でも粘り強く走りたい、自己ベストを更新したいと考えるランナーにとって、コアクーラーは大きな助けとなるでしょう。
夏のランニングやマラソンでの熱中症対策
夏のランニングで最も避けなければならないのが熱中症です。 熱中症は、体温調節機能が破綻し、深部体温が異常に上昇することで起こります。 めまい、頭痛、吐き気などの症状が現れ、重症化すると命に関わる危険な状態です。
コアクーラーは、熱中症の根本的な原因である深部体温の上昇を直接的に抑制するため、非常に有効な熱中症対策となります。 走る前から使用することで体をあらかじめ冷やし(プレクーリング)、走っている最中も継続して使用することで、安全な体温の範囲を維持しやすくなります。もちろん、水分補給や適切なウェアの選択、涼しい時間帯に走るといった基本的な対策も重要ですが、それに加えてコアクーラーを使用することで、熱中症のリスクを大幅に低減させることが可能です。 特に、長時間のマラソンやトレイルランニングなど、過酷な環境下で走る際には、心強いお守りとなるでしょう。
疲労回復を促進!ランニング後のクールダウンにも
コアクーラーの活躍の場は、ランニング中だけではありません。走り終わった後のクールダウンにも大きな効果を発揮します。運動後は、体内に熱がこもった状態が続いており、この熱を速やかに体外へ逃がすことが、スムーズな疲労回復につながります。
ランニング後にコアクーラーで手のひらを冷やすことで、上昇した深部体温を効率的に平常の状態へと戻すことができます。 神戸女子大学の平田耕造教授によると、運動後にAVA血管を適度な温度で冷やすことは、深部体温を低下させ、疲労回復の点で有利に働くことが示唆されています。 また、お風呂上がりや就寝前に使用することで、体のほてりを鎮め、快適な入眠をサポートするという使い方もあります。 翌日に疲れを残さず、質の高いトレーニングを継続するためにも、ランニング後の「アフタークーリング」としてコアクーラーを取り入れることは非常におすすめです。
効果を最大化する!ランニングでのコアクーラー活用術

コアクーラーは、使うタイミングによって得られる効果が異なります。「ランニング前」「ランニング中」「ランニング後」の3つのシーンで効果的に活用する方法を解説します。
ランニング前(プレクーリング)の正しい使い方
「プレクーリング」とは、運動を始める前にあらかじめ体を冷やしておくことで、運動中の体温上昇を抑制し、パフォーマンスを向上させるためのコンディショニング方法です。 近年、熱中症対策の新しい概念として注目されています。
ランニングを開始する15〜30分ほど前から、コアクーラーを両手に装着します。 こうすることで、走り出す前に深部体温をわずかに下げておくことができます。体内に「冷たさの貯金」を作るようなイメージです。これにより、走り始めてからの体温上昇が緩やかになり、暑さを感じにくくなります。特に、スタートから気温が高い夏場のレースなどでは、プレクーリングの有無がパフォーマンスに大きく影響することがあります。方法は簡単で、凍らせた蓄冷材をアタッチメントにセットし、手のひらに装着するだけです。 部屋の中でリラックスしながら、あるいはストレッチをしながら装着しておくと良いでしょう。
ランニング中(パフォーマンスクーリング)のポイント
ランニング中の使用は、パフォーマンスの維持と熱中症予防に直結します。 走りながら手のひらを冷やし続けることで、運動によって発生する熱をリアルタイムで放出し、深部体温の上昇を継続的に抑えます。
実際に使用したランナーからは、「体の深い部分は落ち着いていて、安全地帯で走っている感覚」「暑い中でも集中力が途切れにくい」といった声も聞かれます。 コアクーラーの冷却効果の持続時間は、製品や外気温にもよりますが、おおよそ20〜40分程度とされています。 そのため、1時間以上のランニングやロング走を行う場合は、途中で交換できるように予備の蓄冷材を用意しておくのが理想的です。例えば、周回コースであればスタート地点にクーラーボックスを置いて交換したり、サポートを受けられるレースであればエイドステーションで受け取ったりするなどの工夫が考えられます。効果がなくなったと感じたら、無理に装着し続けず、外してポケットなどに入れておくのが良いでしょう。
ランニング後(アフタークーリング)でリカバリーを早める
ランニング後のクールダウンは、次のトレーニングに向けた重要なプロセスです。運動で火照った体を速やかに落ち着かせ、疲労物質の排出を促すために、アフタークーリングは欠かせません。
走り終えた直後から、コアクーラーを装着しましょう。運動によって上昇した深部体温を効率的に平常レベルまで下げることができます。 これにより、筋肉の炎症を抑え、ダメージからの回復を早める効果が期待できます。シャワーを浴びた後や、就寝前に使用するのもおすすめです。 体の中心部の熱が抜けることで、寝つきが良くなり、睡眠の質を高めることにも繋がります。 実際に就寝時に使用しているユーザーからは「入眠がとてもスムーズになった」という声もあります。 翌日に疲れを残さず、質の高いトレーニングを継続するために、ランニング後のケアとしてコアクーラーを習慣にしてみてはいかがでしょうか。
自分に合うのはどれ?ランニング用コアクーラーの選び方

コアクーラーの効果を最大限に引き出すためには、自分のランニングスタイルや目的に合った製品を選ぶことが大切です。ここでは、選ぶ際のポイントをいくつかご紹介します。
形状で選ぶ(グローブタイプ・アタッチメントタイプ)
現在市販されているコアクーラーは、いくつかの形状があります。
最も一般的なのは、デサントから発売されている「グローブタイプ」です。 手のひらに蓄冷材を固定するためのメッシュ素材のグローブで、指先の自由度が高く、ランニング中でも違和感なく使用できるように設計されています。 装着が簡単で、しっかりとフィットするため、走行中にずれる心配が少ないのがメリットです。
その他にも、腕全体をカバーするアームカバーと一体化した「コアクーラーアーム」もあります。 こちらは手のひらの冷却と同時に、腕の日焼け対策(UVカット機能)もできるため、日差しの強い日のランニングに特に便利です。
また、足裏の冷却に特化した「フットカバー」タイプも存在します。 足裏にもAVA血管は存在するため、運動後のアフタークーリングや就寝時の使用に適しています。ただし、蓄冷材が破損する恐れがあるため、装着したまま立ったり歩いたりはできません。
冷却材の持続時間と冷却温度で選ぶ
コアクーラーの心臓部である蓄冷材の性能は、製品選びの重要なポイントです。
多くのコアクーラーで採用されているのが、シャープが開発した12℃をキープする「適温蓄冷材」です。 この温度は、冷たすぎて血管を収縮させることなく、効率的に血液を冷やすのに最適とされています。
冷却の持続時間は製品によって異なりますが、多くの製品が20分から40分程度となっています。 短時間のジョギングであれば十分ですが、長距離を走る場合は、持続時間が長いモデルを選ぶか、交換用の蓄冷材を準備する必要があります。蓄冷材を凍結させる時間も確認しておきましょう。冷凍庫で2時間以上、冷蔵庫で9時間以上といったように、製品によって異なります。 すぐに使いたい場合は、冷凍庫での凍結時間が短いものが便利です。
人気ブランドとランナーにおすすめのモデル紹介
コアクーラーの代表的なブランドは、やはりデサント(DESCENTE)です。 シャープとの共同開発により、信頼性の高い製品を数多くラインナップしています。
– デサント コアクーラー(TEKIONグローブ DAT-9000):最もスタンダードなグローブタイプで、初めてコアクーラーを試す方におすすめです。 両手用セットで、カラーバリエーションも豊富です。
– デサント コアクーラーアーム:手のひら冷却とUVカットアームカバーが一体になったモデル。 腕の日焼けが気になるランナーに最適です。
– アイスバッテリーfresh:デサント製品ではありませんが、「体感15℃」を謳う手のひら冷却専用の保冷剤も人気があります。 状況に応じてこれらの製品を比較検討してみるのも良いでしょう。
これらの情報は、オンラインストアのランキングやレビューなども参考にしながら、自分の用途に最適な一品を見つけてみてください。
購入前に知っておきたい!コアクーラーの注意点とQ&A

非常に便利なコアクーラーですが、購入・使用する前に知っておきたい点もいくつかあります。デメリットやお手入れ方法、よくある質問についてまとめました。
コアクーラーのデメリットや気になる点
どんな製品にもメリットとデメリットがあります。コアクーラーの購入を検討する上で、気になる可能性のある点をいくつか挙げておきます。
– 価格:一般的な冷却グッズと比較すると、価格はやや高めです。初期投資はかかりますが、繰り返し使えることやその効果を考えれば、コストパフォーマンスは決して悪くないという意見もあります。
– 装着感:グローブタイプはランニングの邪魔になりにくい設計ですが、人によっては多少の違和感や握りにくさを感じるかもしれません。 特に、硬い状態で装着するとハンドルなどが握りにくいという声もあります。
– 持続時間:冷却効果の持続時間は30分前後というレビューが多く、長時間のランニングでは物足りなさを感じる可能性があります。 ロング走で活用したい場合は、交換用の蓄冷材を携帯するなどの工夫が必要です。
– 手入れ:使用後は毎回洗浄して乾かす必要があります。衛生的に保つためには、少し手間がかかると感じるかもしれません。
これらの点を理解した上で、自分のランニングスタイルに合うかどうかを判断することが大切です。
お手入れ方法と保管の注意点
コアクーラーを長く衛生的に使うためには、正しいお手入れと保管が重要です。
アタッチメント(グローブ)は、使用後に中性洗剤で手洗いし、風通しの良い場所で陰干ししてください。洗濯機の使用は製品の劣化を早める可能性があるため、避けたほうが無難です。
蓄冷材も同様に、使用後は水洗いして汚れを落とし、乾かしてから冷凍庫または冷蔵庫で保管します。蓄冷材を冷凍庫で冷やす際は、平らな場所で凍らせるようにしましょう。 不規則な形で凍ってしまうと、手にフィットしにくくなる可能性があります。また、長期間使用しない場合は、蓄冷材とアタッチメントを別々に、直射日光の当たらない涼しい場所で保管してください。
よくある質問(Q&A)
Q1. 普通の保冷剤では代用できませんか?
A. 代用はおすすめできません。普通の保冷剤は温度が低すぎるため、AVA血管を収縮させてしまい、かえって血流を妨げて冷却効果を下げてしまう可能性があります。 コアクーラーの「12℃」という適温が、効果的な冷却の鍵となります。
Q2. 冷却効果はどれくらい続きますか?
A. 気温などの環境にもよりますが、多くの製品で20分〜40分程度とされています。 走り始めの30分を快適にする、あるいはレースの勝負どころで使うなど、目的を絞って使用するのも一つの方法です。
Q3. ランニング以外でも使えますか?
A. もちろんです。通勤・通学時の暑さ対策や、ゴルフなどのスポーツ、お風呂上がりのクールダウン、寝苦しい夜の安眠対策など、様々なシーンで活用できます。 ただし、装着したままのPC作業やスマホ操作は難しいという意見もあります。
Q4. どこで購入できますか?
A. スポーツ用品店や、デサントの直営店、公式オンラインストアなどで購入できます。 また、大手通販サイトのAmazonや楽天市場などでも取り扱いがあります。
まとめ コアクーラーをランニングに取り入れて快適な走りを実現しよう

この記事では、ランニングにおけるコアクーラーの効果や使い方について、多角的に解説しました。
コアクーラーは、「手のひら冷却」という科学的根拠に基づいたアプローチで、ランニング中の深部体温の上昇を効果的に抑制します。 これにより、パフォーマンスの維持、熱中症のリスク軽減、そしてランニング後の迅速な疲労回復といった、ランナーにとって大きなメリットをもたらします。
その効果を最大限に引き出すためには、ランニング前の「プレクーリング」、ランニング中の「パフォーマンスクーリング」、そしてランニング後の「アフタークーリング」という3つのシーンで正しく活用することが重要です。
グローブタイプやアームカバー一体型など、いくつかの種類があるため、自分のランニングスタイルや目的に合わせて選ぶことができます。 これまでの暑さ対策に限界を感じていた方や、夏のランニングをより安全で快適なものにしたいと考えている方は、ぜひコアクーラーの導入を検討してみてはいかがでしょうか。適切な使い方をマスターし、厳しい季節のランニングを乗り切りましょう。



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