フルマラソンのタイムを少しでも縮めたい、もっと楽に走れるようになりたいと願うランナーにとって、「マラソンと体重」の関係は、トレーニング方法やシューズ選びと並んで大きな関心事ではないでしょうか。トップランナーたちが皆スリムな体型をしていることからも、「体重が軽い方が有利」というイメージを持っている方は多いでしょう。 実際に、体重が1kg減るとフルマラソンのタイムが3分縮まる、という説も広く知られています。
しかし、ただ単に体重を落とせば記録が伸びる、という単純な話ではありません。無理な減量はかえってパフォーマンスを低下させ、怪我のリスクを高めることにも繋がりかねないのです。 この記事では、マラソンにおける理想の体重の考え方から、ご自身のレベルに合った適正体重の目安、そしてパフォーマンスを最大限に引き出すための食事やトレーニング、健康的に減量するための注意点まで、網羅的に、そして分かりやすく解説していきます。自分にとっての「理想の体重」を見つけ、怪我なく、楽しく、自己ベスト更新を目指しましょう。
マラソンと体重の密接な関係と理想の考え方

マラソンは、自分の身体を42.195km先まで運ぶスポーツです。そのため、運ぶべき荷物である体重は、軽い方が物理的に有利に働く場面が多いと言えます。 しかし、ただ軽ければ良いというわけではなく、その「質」が重要になります。
なぜ体重が軽いとマラソンで有利になるのか?
マラソンを速く走るためには、より大きなエネルギーを生み出すか、身体の質量を小さくするかの2つのアプローチが考えられます。 体重が軽いということは、一歩一歩の着地で地面から受ける衝撃が少なくなることを意味します。これにより、脚への負担が軽減され、レース後半の失速を防いだり、故障のリスクを低減させたりする効果が期待できます。
また、同じ筋力であれば、体重が軽い方が体を前に進めるためのエネルギー効率が良くなります。これは、重い荷物を運ぶより軽い荷物を運ぶ方が楽なのと同じ原理です。 体重、特に余分な体脂肪が少ないほど、ランニングエコノミー(楽に走るための燃費)が向上し、同じペースでも心拍数を低く抑えることができ、結果として長距離を維持しやすくなるのです。トップランナーたちが非常に低い体脂肪率を維持しているのは、このためです。
「体重1kg減で3分速くなる」は本当?
「体重が1kg減るとフルマラソンのタイムが3分縮まる」という説は、多くのランナーが一度は耳にしたことがあるでしょう。 これは福岡大学の田中宏暁教授が提唱した説として有名で、多くの市民ランナーにとって減量のモチベーションになっています。 例えば、体重60kgで3時間5分で走るランナーが、あと2kg軽ければサブ3(3時間切り)を達成できたかもしれない、と考えると非常に魅力的です。
しかし、この「1kg=3分」という数字は、あくまで目安であり、全てのランナーに一律に当てはまるわけではありません。 例えば、2時間半で走るエリートランナーと4時間で走る市民ランナーでは、同じ1kgの減量でもタイムへの影響度は異なってくると考えられます。 体重が重いランナーほど、1kg減量した際のタイム短縮効果は大きくなる傾向があるというデータもあります。 また、体重だけでなく、その内訳である筋肉量や体脂肪率、トレーニング内容、当日のコンディションなど、タイムに影響を与える要因は数多く存在します。 そのため、この説はあくまで「体重管理がタイム向上に繋がる可能性」を示す一つの指標として捉えるのが良いでしょう。
見た目や数字だけじゃない!BMIで考える理想体重の目安
自分の体重がマラソンに適しているかを知るための一つの指標として、BMI(Body Mass Index)があります。これは「体重(kg) ÷ {身長(m) × 身長(m)}」で算出される体格指数で、肥満度を判定するために広く使われています。 日本肥満学会の基準では、BMIが18.5未満は「低体重」、18.5以上25未満は「普通体重」、25以上は「肥満」とされています。
一般的な健康維持を目的とする場合、最も病気になりにくいとされるBMI22が適正体重の目安とされています。 例えば身長170cmの人なら、1.7m × 1.7m × 22 = 63.58kgが適正体重となります。 しかし、長距離を走るランナーの場合、この限りではありません。エリートランナーのBMIは男女ともにこれを大きく下回り、18~20前後の選手が多いというデータがあります。 市民ランナーであっても、パフォーマンス向上を目指すなら、BMI22未満、特に19〜20あたりを目標にするのが一つの目安と言えるかもしれません。
体脂肪率も重要!男女別の理想的な数値とは
マラソンランナーにとって、体重の数値以上に重要なのが「体脂肪率」です。 なぜなら、同じ体重でも筋肉質な人と脂肪が多い人では、走りのパフォーマンスが大きく異なるからです。筋肉は走るためのエンジンとなる一方、過剰な体脂肪はただの重りになってしまいます。 したがって、理想の体重を目指す際は、体重の数値だけにとらわれず、体脂肪率にも注目することが不可欠です。
一般的な標準体脂肪率は男性で10.0~19.9%、女性で20.0~29.9%とされています。 しかし、ランナーの場合、これよりも低い数値が理想とされます。ある調査によると、サブ3(3時間切り)を達成する男性ランナーの平均体脂肪率は10.6%、女性では13.5%というデータがあります。 サブ4(4時間切り)を目指すランナーであれば、男性は15%前後、女性は19%前後が目標の一つとなるでしょう。 ただし、体脂肪はエネルギー源や内臓保護の役割も担っているため、極端に落としすぎるのは健康を害するリスクがあります。 特に女性は、体脂肪の減少がホルモンバランスの乱れを引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
あなたの理想体重は?レベル別・目標別の計算方法

「自分にとっての理想の体重」は、ランニングのレベルや目標タイムによって異なります。ここでは、それぞれのレベルに応じた理想体重の考え方や計算方法について解説します。
初心者ランナー向けの適正体重の考え方
ランニングを始めたばかりの初心者ランナーの場合、まずは無理なく走り続けられる身体を作ることが最優先です。そのため、いきなりエリートランナーのような厳しい体重目標を立てる必要はありません。まずは、健康的な体重の指標であるBMIを参考に、ご自身の現在の体重を把握することから始めましょう。 BMIの計算式は「体重(kg) ÷ {身長(m) × 身長(m)}」です。
もしBMIが25以上で「肥満」に該当する場合は、ランニングを継続することで、膝への負担を減らし、より楽に走れるようになる可能性があります。 まずは、BMIが標準範囲である「18.5~25未満」に入ることを目指しましょう。 具体的な目標としては、一般的な適正体重とされるBMI22(計算式:身長m × 身長m × 22)あたりを目指すと良いでしょう。 無理な食事制限ではなく、ランニング習慣を身につけることで、自然と余分な脂肪が落ちていくのが理想的な形です。
サブ4・サブ3を目指す市民ランナーの理想体重
サブ4(4時間切り)やサブ3(3時間切り)といった、より高い目標を目指す市民ランナーにとって、体重管理はパフォーマンス向上の重要な要素となります。一般的に、トップレベルに近づくほど、より低い体重と体脂肪率が求められます。
サブ4を目指すランナーの場合、BMIは20〜23あたり、体脂肪率は男性なら15%前後、女性なら19%前後が一つの目安とされています。 サブ3ランナーになるとさらに絞り込まれ、男性の平均体脂肪率は10.6%、女性は13.5%というデータもあります。
目標タイムから理想体重を逆算する考え方もあります。例えば、あと10分タイムを縮めたい場合、「1kgあたり3分」の法則を参考にすると、約3kgの減量が目標達成に繋がるかもしれません。 ただし、これはあくまで理論値です。重要なのは、筋肉量を維持しつつ、余分な体脂肪を減らすことです。体重の数字だけにこだわりすぎず、体脂肪率の変化にも注目しましょう。
エリートランナーの体重から学ぶこと
箱根駅伝やオリンピックのマラソン中継などで目にするエリートランナーたちは、驚くほどスリムな体型をしています。 彼らの体重やBMIは、私たち市民ランナーが理想を考える上で大きなヒントになります。
あるデータによると、エリートランナーの平均BMIは男性で18.7、女性では17.6と、いずれも「低体重」のカテゴリーに入る数値です。 トップランナーの中には、体脂肪率が男性で4〜5%、女性でも5〜6%という選手もいます。 これは、42.195kmという長距離を効率よく走るために、不要な重りを極限まで削ぎ落とした結果と言えるでしょう。
ただし、市民ランナーがこれらの数値をそのまま目標にするのは非常に危険です。 エリートランナーは、専門的な栄養管理とトレーニングのもとでその身体を維持しており、一般の人が同じレベルの減量を行うと、貧血や疲労骨折、女性の場合は無月経など、深刻な健康問題を引き起こすリスクがあります。あくまで、長距離走における軽量化の重要性を理解するための参考情報として捉え、自身の生活スタイルや体質に合った、健康的な範囲での目標設定を心がけましょう。
身長と目標タイムから導き出す計算式
より具体的に自分の理想体重を知りたい方向けに、いくつかの計算式が存在します。これらはあくまで目安ですが、目標設定の参考になります。
一つは、BMIを基準にする方法です。市民ランナーがパフォーマンス向上を目指す場合、BMIを19~20程度に設定するのが一つの理想とされています。 この場合、理想体重は以下の式で計算できます。
例:身長170cmの人がBMIを20に設定した場合
・ 20 × 1.7 × 1.7 = 57.8kg
もう一つは、現在のタイムと体重から、目標タイム達成に必要な体重を算出する方法です。海外のサイトなどでは、現在の体重とタイムを入力すると、体重の増減によってタイムがどう変化するかをシミュレーションできるツールもあります。
これらの計算式は便利ですが、個人の体質や筋肉量によって最適な体重は異なります。計算結果はあくまで参考値として、最終的には自分の体調や走りの感覚を最も重視することが大切です。
マラソンランナーのための理想の体重に近づく食事術

理想の体重を目指す上で、トレーニングと同じくらい重要なのが食事です。単に摂取カロリーを減らすのではなく、走るためのエネルギーを確保し、筋肉を維持するための栄養バランスを考える必要があります。
基本はバランス!三大栄養素(PFCバランス)の重要性
ランナーの食事の基本は、三大栄養素であるタンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)のバランス、いわゆるPFCバランスを整えることです。減量を意識すると、つい炭水化物や脂質を極端に避けてしまいがちですが、これらは走るための重要なエネルギー源であり、不足するとパフォーマンスの低下に直結します。
・ タンパク質:筋肉や血液の材料となる栄養素です。トレーニングで傷ついた筋組織を修復し、より強い筋肉を作るために不可欠です。肉、魚、卵、大豆製品などに多く含まれます。
・ 脂質:エネルギー源になるほか、ホルモンの材料や細胞膜の構成成分としても重要です。摂りすぎは体脂肪増加の原因になりますが、完全にカットするのではなく、良質な油(青魚やナッツ、アボカドに含まれる不飽和脂肪酸など)を適度に摂ることが大切です。
減量中でもこれらの栄養素をバランス良く摂取することが、健康的に理想の体重に近づくための基本となります。
走るエネルギー源「グリコーゲン」を効率よく蓄えるには?
マラソンのような長時間の運動でパフォーマンスを維持するためには、体内にエネルギーを十分に蓄えておく必要があります。その主要なエネルギー源となるのが「グリコーゲン」です。グリコーゲンは、食事から摂取した炭水化物(糖質)が筋肉や肝臓に貯蔵されたもので、運動時に分解されてエネルギーとして利用されます。
このグリコーゲンを体内に効率よく満タンにするためには、日々の食事で適切な量の炭水化物を摂取することが重要です。特に、トレーニング前後の炭水化物補給は欠かせません。トレーニング前は、走るためのエネルギーを確保するために、おにぎりやバナナなどを摂取すると良いでしょう。そして、トレーニング後は、消費したグリコーゲンを速やかに回復させるために、できるだけ早いタイミングで炭水化物とタンパク質を一緒に摂ることが推奨されます。このタイミングでの栄養補給が、翌日以降のトレーニングの質を高め、疲労回復を促進します。レース数日前から炭水化物の摂取比率を高める「グリコーゲンローディング」も、スタミナアップに有効な食事法として知られています。
筋肉の分解を防ぐ!タンパク質の上手な摂り方
減量をしながらハードなトレーニングを行うと、体はエネルギー不足を補うために、筋肉を分解してエネルギー源として使おうとします。これでは、せっかくのトレーニング効果が薄れてしまうだけでなく、基礎代謝が落ちてかえって痩せにくい体になってしまう可能性もあります。 これを防ぐために重要なのが、タンパク質の十分な摂取です。
タンパク質は、トレーニングでダメージを受けた筋肉を修復し、より強くするための材料となります。 減量中は特に、脂肪を減らしつつ筋肉量を維持・向上させることが目標となるため、意識してタンパク質を摂る必要があります。肉、魚、卵、乳製品、大豆製品などを毎食の食事にバランス良く取り入れましょう。特に、トレーニング直後は筋肉の合成が活発になる「ゴールデンタイム」と呼ばれる時間帯です。このタイミングでプロテインドリンクなどを活用して素早くタンパク質を補給するのも非常に効果的です。 鶏のささみや胸肉、白身魚、豆腐などは、低脂肪・高タンパクな食材の代表例であり、減量中のランナーにとって心強い味方となってくれるでしょう。
レース前・レース中・レース後の食事戦略
マラソン本番で最高のパフォーマンスを発揮するためには、レース当日に向けた戦略的な栄養補給が不可欠です。
・ レース前:レースの数日前からは、炭水化物の割合を増やして体内のグリコーゲン貯蔵量を最大化する「グリコーゲンローディング(カーボローディング)」が有効です。当日の朝食は、消化が良く、エネルギーになりやすいお餅やうどん、カステラなどをスタートの3〜4時間前までに済ませておくのが理想です。
・ レース中:レース中もエネルギー切れを防ぐために、定期的なエネルギー補給が必要です。30kmの壁と言われる失速の多くは、体内のグリコーゲンが枯渇することが原因です。1時間に1回程度を目安に、エネルギージェルや吸収の速いドリンクなどで、こまめに糖質を補給しましょう。
・ レース後:レース後は、心身ともに疲労困憊の状態です。消費したエネルギーの回復と、傷ついた筋肉の修復のために、できるだけ早く栄養補給を行うことが重要です。特に「炭水化物」と「タンパク質」を一緒に摂ることで、効率的なリカバリーが期待できます。オレンジジュースやスポーツドリンクで素早く糖質を補給し、その後、おにぎりやサンドイッチ、プロテインなどでタンパク質も摂取しましょう。このレース後のケアが、次の目標に向けたスムーズな再始動に繋がります。
理想の体重と走力を両立させるトレーニング

食事管理と並行して、理想の体重と走力を同時に手に入れるためのトレーニングも重要です。ただ闇雲に走るのではなく、目的意識を持ったトレーニングを取り入れましょう。
脂肪燃焼効率を高めるLSD(ロング・スロー・ディスタンス)
LSDは「Long Slow Distance」の略で、その名の通り「ゆっくり、長い距離」を走るトレーニングです。おしゃべりできるくらいの余裕を持ったペースで、90分以上走り続けるのが一般的です。このトレーニングの最大の目的は、脂肪をエネルギーとして使う能力を高めることです。
比較的強度の低い運動を長時間続けることで、体はエネルギー源として糖質よりも脂肪を優先的に利用するようになります。これにより、脂肪燃焼効率が向上し、痩せやすい体質へと変化していきます。 さらに、LSDには毛細血管を発達させ、全身への酸素供給能力を高める効果もあります。これは、マラソン後半のスタミナ維持に直結する非常に重要な能力です。急激な減量は筋肉量を減らしてしまうリスクがありますが、LSDは走力を維持・向上させながら、健康的に体脂肪を減らしていくのに非常に適したトレーニング方法と言えるでしょう。
筋力を維持・向上させる補強トレーニングのすすめ
体重を落とすことばかりに気を取られていると、脂肪だけでなく走るために必要な筋肉まで落ちてしまうことがあります。 筋肉量が減ると、基礎代謝が低下して痩せにくくなるだけでなく、ランニングフォームが崩れたり、怪我をしやすくなったりと、パフォーマンスに悪影響を及ぼします。そこで重要になるのが、ランニング以外の補強トレーニング、いわゆる「筋トレ」です。
特に重点的に鍛えたいのが、体幹(腹筋、背筋)とお尻周りの筋肉です。体幹が安定すると、長時間のランニングでもフォームが崩れにくくなり、効率的な走りが可能になります。お尻の筋肉(大臀筋)は、地面を力強く蹴り出し、推進力を生み出すための重要なエンジンです。スクワットやランジ、プランクといった基本的なトレーニングを継続的に行うことで、筋肉量を維持・向上させ、脂肪が燃えやすい体を作ることができます。 筋肉は脂肪よりも重いため、筋トレを始めると一時的に体重が増えることがありますが、体脂肪率が下がっていれば、それは良い変化と捉えるべきです。
「走りすぎ」は逆効果?オーバートレーニングに注意
早く痩せたい、速くなりたいという気持ちが強すぎると、ついついトレーニングをやりすぎてしまうことがあります。しかし、「走りすぎ」はかえって逆効果になることがあるため注意が必要です。トレーニングによって体に負荷をかけると、体はそれに適応しようとして強くなりますが、回復するための十分な休息がなければ、疲労が蓄積し「オーバートレーニング」の状態に陥ってしまいます。
オーバートレーニングの兆候としては、朝起きた時に体がだるい、安静時の心拍数が高い、食欲がない、走ってもタイムが伸びない、といったものが挙げられます。このような状態で無理に練習を続けると、パフォーマンスが低下するだけでなく、免疫力が低下して風邪をひきやすくなったり、疲労骨折などの深刻な怪我に繋がったりするリスクが高まります。 トレーニングと同じくらい、適切な栄養摂取と十分な睡眠という「休養」が重要です。練習計画には必ず休養日を設け、自分の体の声に耳を傾けながら、無理のない範囲でトレーニングを継続することが、長期的な成長への近道です。
健康的に理想体重を目指すための注意点

理想の体重を目指す過程で、健康を損なってしまっては元も子もありません。ここでは、安全に目標を達成するための重要な注意点を解説します。
急激な減量が招くリスクとは?(貧血、疲労骨折など)
早く結果を出したい一心で、極端な食事制限や過度なトレーニングによる急激な減量に走ることは非常に危険です。短期間で大幅に体重を落とすと、脂肪だけでなく、筋肉や骨密度まで低下させてしまう可能性があります。
筋肉量が減少すれば、走る力そのものが弱くなってしまいます。 また、食事制限によって鉄分やカルシウムなどの栄養素が不足すると、血液中のヘモグロビンが減って全身に酸素を運ぶ能力が低下する「スポーツ貧血」や、骨がもろくなり、ランニングの着地衝撃に耐えきれず「疲労骨折」を起こすリスクが高まります。 さらに、急激な減量は体の免疫力を低下させ、風邪をひきやすくなるなど、体調を崩す原因にもなりかねません。 減量のペースは、1ヶ月で現在の体重の2〜3%程度に留めるのが安全な目安とされています。 焦らず、長期的な視点で健康的に体重をコントロールすることが重要です。
女性ランナーが特に気をつけたい「無月経」の問題
特に女性ランナーが過度な減量を行った場合に注意したいのが、「利用可能エネルギー不足」が引き起こす健康問題です。これは、食事からの摂取エネルギーが、運動による消費エネルギーと生命維持に必要なエネルギーの合計に満たない状態を指します。この状態が続くと、体は生命維持を優先するため、生殖機能など後回しにできる機能へのエネルギー供給を止めてしまいます。その結果として起こるのが「無月経」です。
月経が止まるということは、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下しているサインです。エストロゲンには骨を強く保つ働きがあるため、その分泌が低下すると骨密度が減少し、疲労骨折のリスクが著しく高まります。これは「女性アスリートの三主徴(FAT: Female Athlete Triad)」と呼ばれる深刻な問題の一つです。体重や体脂肪を落とすことに固執しすぎず、健康のバロメーターである月経が順調に来ているかを確認しながら、トレーニングや減量に取り組むことが非常に重要です。
体重の数値に一喜一憂しない!コンディションを重視する考え方
毎日のように体重計に乗り、0.1kgの増減に一喜一憂してしまうランナーは少なくありません。 もちろん、体重を定期的に測定し、傾向を把握することは体重管理において有効です。しかし、体重は水分摂取量や食事内容、トレーニングのタイミングなど、様々な要因で日々変動するものです。その数値だけを見て、モチベーションを下げたり、過度な食事制限に走ったりするのは避けましょう。
最も大切なのは、体重の数値そのものではなく、自分の体のコンディションです。 「朝、スッキリと起きられるか」「トレーニング中に体が軽く感じるか」「前向きな気持ちで練習に取り組めているか」といった、主観的な感覚を大切にしてください。体重が少し増えても、体脂肪率が減って筋肉量が増えているのであれば、それはポジティブな変化です。 数字はあくまで参考指標と割り切り、日々の体調と向き合いながら、自分にとってベストなパフォーマンスを発揮できる状態を見つけていくことが、マラソンを長く楽しむための秘訣です。
まとめ マラソンにおける理想の体重とは、継続的なパフォーマンスを発揮できる健康的な状態

この記事では、マラソンと体重の理想的な関係について、多角的な視点から解説してきました。体重が軽いことは物理的に有利に働きますが、単に数値を減らすことだけが目標ではありません。 重要なのは、走るための筋肉を維持し、余分な体脂肪を健康的に減らすことです。
理想の体重は、BMIや体脂肪率といった客観的な指標を参考にしつつも、最終的には個人のレベルや目標、そして何よりも自身の体調や走りの感覚によって決まります。 急激な減量はパフォーマンス低下や怪我のリスクを高めるため、バランスの取れた食事と計画的なトレーニングを組み合わせ、長期的な視点で取り組むことが不可欠です。
体重計の数字に一喜一憂するのではなく、自分の体が発する声に耳を傾け、最高のコンディションでスタートラインに立つこと。それこそが、自己ベスト更新という目標を達成し、マラソンというスポーツを長く楽しむための最も大切な考え方と言えるでしょう。



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