フルマラソンへの挑戦は、多くの人にとって大きな目標です。中でも「サブ5」、つまり5時間未満での完走は、マラソン初心者が目指す最初の大きな関門と言えるでしょう。決して簡単な目標ではありませんが、正しい知識と計画的なトレーニングを積めば、誰にでも達成の可能性があります。
この記事では、マラソン初心者がサブ5を達成するために必要な情報を、練習メニューからレース本番の戦略まで、やさしくわかりやすく解説します。これからフルマラソンに挑戦する方、思うようにタイムが伸びずに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
マラソン初心者が目指す「サブ5」とは?

フルマラソンに挑戦するにあたり、具体的な目標タイムを設定することはモチベーション維持の観点からも非常に重要です。ここでは、多くの初心者ランナーが目標とする「サブ5」について、その基本から達成の意義までを掘り下げていきます。
サブ5の基本とペース配分
サブ5とは、42.195kmのフルマラソンを5時間未満で完走することを指すランニング用語です。 単純計算すると、1kmあたり約7分06秒のペースで走り続ける必要があります。 しかし、実際のマラソン大会では、スタート直後の混雑、給水所での水分補給、トイレ休憩などでタイムロスが生じることを考慮しなければなりません。
そのため、ロスタイムを見越して、1kmあたり6分50秒から7分程度のペースを維持できる走力を身につけておくことが、サブ5達成の現実的な目標となります。 大会の制限時間は6時間に設定されていることが多いため、サブ5は制限時間よりも1時間早くゴールすることを意味し、初心者ランナーにとって価値のある目標と言えるでしょう。
なぜ初心者はまずサブ5を目指すべきか
フルマラソン完走者のタイムデータを見ると、サブ5は決して低い目標ではないことがわかります。例えば、ある年の統計では、男性ランナーの約65%、女性ランナーの約47%がサブ5を達成しており、完走者全体で見ると約半数にあたります。 これは、サブ5が初心者ランナーにとって、努力すれば手が届く現実的な目標でありながら、達成感も大きい「勲章」のような存在であることを示しています。
また、サブ5を目標に設定することで、完走するだけでなく、タイムを意識した計画的なトレーニングに取り組むきっかけになります。その過程で、ランニングフォームの改善や持久力の向上など、ランナーとしての基礎を固めることができるのです。
サブ5達成に必要な心構え
サブ5達成には、技術的な練習だけでなく、精神的な準備も欠かせません。まず大切なのは、「自分にもできる」と信じることです。前述の通り、多くのランナーが達成している目標であり、特別な才能が必要なわけではありません。 次に、計画を立ててコツコツと継続する力が必要です。後述するトレーニング計画を参考に、無理のない範囲で練習を習慣化しましょう。そして、最も重要なのが「楽しむ」ことです。トレーニングが辛いだけのものになってしまうと長続きしません。景色を楽しんだり、音楽を聴いたり、仲間と一緒に走ったりと、自分なりの楽しみ方を見つけることが、目標達成への近道となります。
サブ5達成に向けたマラソン初心者の練習計画

サブ5という目標を達成するためには、やみくもに走るのではなく、計画的なトレーニングが不可欠です。ここでは、マラソン初心者が無理なく、そして効果的に走力を高めていくための練習計画について、具体的な期間や内容、注意点を解説します。
準備期間はどれくらい必要?
マラソン初心者がサブ5を目指す場合、一般的に3ヶ月から6ヶ月の準備期間を設けるのが理想的です。 これまで全く運動習慣がなかった方や、ランニング経験がほとんどない方は、まず体を走ることに慣らす必要があるため、6ヶ月程度の長めの期間を設定すると良いでしょう。
逆に、ハーフマラソンの完走経験がある方や、日常的にジョギングをしている方であれば、3ヶ月程度の集中したトレーニングでも十分に目標達成が可能です。 大切なのは、自分の現在の走力やライフスタイルに合わせて無理のない計画を立てることです。焦らず、段階を踏んでトレーニングを進めていくことが、怪我を防ぎ、確実に目標へ近づくためのポイントとなります。
週ごとのトレーニング内容
練習は、週に2〜3回行うのが基本です。毎回ハードな練習をする必要はなく、「ポイント練習」と「つなぎジョグ」を組み合わせるのが効果的です。例えば、週末に時間を確保できるなら、休日に長めの距離を走る「ポイント練習」を1回行い、平日に短めのジョギングを1〜2回行うといったプランが考えられます。 具体的なメニューとしては、ゆっくり長く走るLSD(ロング・スロー・ディスタンス)、目標ペースで走るペース走、そして日々のコンディションを整えるジョギングが中心となります。最初の1ヶ月はウォーキングとジョギングを組み合わせ、まずは走り続けることに体を慣らすことから始めましょう。
距離と頻度の増やし方
トレーニングの基本は、急激に距離や頻度を増やさないことです。特に初心者のうちは、早く結果を出したいと焦ってしまいがちですが、それが怪我の最も大きな原因となります。距離を伸ばすのは週に1回のロング走の日だけにし、毎週少しずつ伸ばしていくのが安全です。例えば、「先週より1kmだけ長く走る」といった小さな目標を立てて、着実にステップアップしていきましょう。
頻度についても、週2回の練習で物足りなく感じてきたら、まずはウォーキングや軽いジョギングの日を1日増やすなど、体に大きな負担がかからないように調整することが大切です。体の声に耳を傾け、無理をしないことが継続の秘訣です。
休息日の重要性
練習と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「休息日」です。トレーニングによって傷ついた筋繊維は、休息中に修復され、以前よりも強くなります。この「超回復」と呼ばれるプロセスを繰り返すことで、走力は向上していくのです。 そのため、毎日走る必要は全くありません。
むしろ、週に2回筋力トレーニングを取り入れる場合は、連続して行わず、間に必ず休養日を設けることが推奨されています。 疲れが溜まっていると感じた時や、筋肉に痛みがある時は、勇気を持って休むことが大切です。休むこともトレーニングの一環であると理解し、計画的に休息日を取り入れましょう。
マラソン初心者がサブ5を叶えるトレーニングメニュー
サブ5達成という目標を具体的な行動に移すためには、効果的なトレーニングメニューを知ることが不可欠です。ここでは、持久力の基礎を作るLSD、目標ペースを体に覚えさせるペース走、そして走りを支える筋力トレーニングという、サブ5達成に特に有効な3つの練習方法を詳しく解説します。
まずは「歩かず」に走り続ける練習(LSD)
LSDとは「ロング・スロー・ディスタンス」の略で、その名の通り「長く、ゆっくり、距離を走る」トレーニングです。 サブ5を目指す初心者にとって、まず最も重要なのは42.195kmを「歩かずに走り切る」ための持久力を養うことです。LSDは、この持久力を高めるのに最適な練習方法と言えます。 ペースは、おしゃべりしながらでも走れるくらい、1kmあたり7分半から8分程度のゆっくりとしたペースで十分です。
時間は、まずは60分から始め、最終的には90分から120分程度走れるようになることを目指しましょう。 このトレーニングにより、心肺機能が向上するだけでなく、長時間の運動でエネルギー源として脂肪を効率的に使える体質に変わっていきます。 また、ゆっくり走ることで、着地時の衝撃が少なく、怪我のリスクを抑えながら脚の筋持久力を鍛えられるというメリットもあります。
目標ペースを体に覚えさせるペース走
ペース走とは、レース本番で目標とするペース(サブ5であれば1kmあたり7分前後)を維持して、一定の距離を走るトレーニングです。 この練習の最大の目的は、目標ペースの感覚を体に覚えさせることです。 本番のレースでは、周りの雰囲気にのまれてオーバーペースになりがちですが、練習で自分のペース感覚を磨いておくことで、冷静にレースを進めることができます。 最初は5km程度の短い距離から始め、慣れてきたら徐々に距離を伸ばし、最終的には15km〜20kmを目標ペースで走りきれるようになると、サブ5達成がぐっと近づきます。 このトレーニングは、スピード持久力、つまり一定のスピードを維持し続ける能力を高める効果もあります。
筋力トレーニングも取り入れよう(体幹、脚)
ランニングは走るだけの練習と思われがちですが、筋力トレーニングを並行して行うことで、パフォーマンスは大きく向上します。 特に重要なのが、体の軸を安定させる「体幹」と、地面を蹴り出し着地の衝撃を吸収する「脚」の筋肉です。体幹が安定すると、ランニングフォームがぶれにくくなり、無駄なエネルギー消費を抑えて効率的に走れるようになります。
脚の筋力を強化すれば、一歩一歩の推進力が増すだけでなく、膝や腰への負担が軽減され、怪我の予防にも繋がります。 具体的なメニューとしては、腹筋や背筋を鍛えるプランクやロールダウン、下半身全体を強化するスクワットなどがおすすめです。 週に2回程度、ランニングをしない日に行うのが効果的です。
マラソン初心者のサブ5を支えるアイテム選び

快適にトレーニングを続け、レース本番でベストなパフォーマンスを発揮するためには、適切なアイテムを選ぶことが非常に重要です。特にシューズは、走りを直接支え、怪我のリスクにも大きく関わります。ここでは、サブ5を目指すマラソン初心者に向けたアイテム選びのポイントを解説します。
シューズ選びのポイント(クッション性、安定性)
マラソン初心者がサブ5を目指すレベルでは、タイムを追求するトップランナーが履くような軽量で薄底のレーシングシューズは適していません。 むしろ、長距離を走りきるための脚力やフォームがまだ固まっていないため、足を保護する機能が重要になります。シューズを選ぶ際のポイントは「クッション性」と「安定性」です。 クッション性の高いシューズは、着地時の衝撃を和らげ、膝や足首への負担を軽減してくれます。
安定性の高いモデルは、かかと部分がしっかりと補強されており、走行中の足のぐらつきを抑えて正しいフォームをサポートしてくれます。 専門店の店員さんに相談し、実際に試し履きをして、自分の足にフィットするものを選ぶことが何よりも大切です。
ウェアと小物の選び方(機能性、季節対応)
ウェア選びの基本は、吸湿速乾性に優れた素材を選ぶことです。綿素材のTシャツは汗を吸うと重くなり、体を冷やす原因にもなるため避けましょう。季節に応じて、夏は通気性の良いもの、冬は保温性がありながら汗冷えしにくいものを選びます。また、小物も快適なランニングをサポートしてくれます。
日差しが強い日にはキャップやサングラス、寒い日には手袋やネックウォーマーが役立ちます。特にソックスは、マメや靴擦れを防ぐために、ランニング専用の滑り止め機能やアーチサポート機能があるものがおすすめです。
GPSウォッチの活用法
GPSウォッチは、今やランナーの必須アイテムと言っても過言ではありません。走行距離、時間、ペースをリアルタイムで把握できるため、トレーニングの質を格段に向上させてくれます。 例えば、LSDではペースが速くなりすぎないように、ペース走では目標ペースを維持できているかを確認するために活用できます。 また、多くのモデルには心拍数を計測する機能も付いており、運動強度を客観的な数値で管理するのに役立ちます。
トレーニングの記録をアプリなどで管理すれば、自分の成長が可視化され、モチベーションの維持にも繋がります。 サブ5を目指す上では、ペース感覚を養うことが非常に重要になるため、GPSウォッチは心強いパートナーとなるでしょう。
大会本番でサブ5を達成するための戦略

どれだけ万全なトレーニングを積んでも、レース本番の戦略を誤ると目標達成は難しくなります。スタートからゴールまで、42.195kmという長い距離を賢く走り抜くための戦略は、サブ5達成の最後の仕上げとして非常に重要です。ここでは、ペース配分、補給、そしてレース前後の過ごし方について、具体的なポイントを解説します。
スタートからゴールまでのペース配分
サブ5達成のための最もシンプルで確実な戦略は、「イーブンペース」、つまりスタートからゴールまで一定のペースで走り続けることです。 理想的なペースは、1kmあたり7分前後です。 しかし、実際のレースではスタート直後は混雑でペースを上げられず、後半は疲れでペースが落ちがちです。 そのため、意識としては「前半は少し抑え気味に入り、30km地点までは余力を残しておく」ことが重要です。
多くのランナーが経験する「30kmの壁」は、前半のオーバーペースが原因であることがほとんどです。 周りのランナーの速いペースにつられてしまう気持ちをぐっとこらえ、自分の決めたペースを守り抜く強い意志が求められます。
給水・補給食のタイミングと内容
42.195kmを走りきるためには、約2500kcalものエネルギーが必要になると言われていますが、体内に蓄えられるエネルギーには限りがあります。 そのため、レース中にエネルギーを補給することが不可欠です。 ポイントは「お腹が空いた」「喉が渇いた」と感じる前に、計画的に補給することです。 給水所は基本的にすべて立ち寄り、こまめに水分補給をしましょう。
エネルギー補給には、吸収が速く携帯しやすいジェルタイプの補給食がおすすめです。 摂取のタイミングは、スタートから1時間後、その後は1時間に1回程度を目安にすると良いでしょう。 また、汗で失われるミネラルを補給することも足つり予防に繋がるため、塩分を含んだサプリメントなども準備しておくと安心です。 これらの補給も練習の一環として、長距離走の際に試しておきましょう。
レース前日と当日の過ごし方
レース本番で最高のパフォーマンスを発揮するためには、前日と当日の過ごし方が非常に重要です。 前日の食事は、エネルギー源となる炭水化物を中心に、消化の良いものを選びましょう。 パスタやうどん、ご飯などがおすすめです。脂っこいものや生ものは胃腸に負担をかける可能性があるので避けた方が賢明です。 また、持ち物の最終チェックを済ませ、早めに就寝して十分な睡眠を確保しましょう。
当日の朝食は、スタートの3〜4時間前までに、おにぎりやパン、バナナなど、こちらも消化が良くエネルギーに変わりやすいものを摂ります。 会場には余裕を持って到着し、ウォーミングアップやトイレを済ませてリラックスしてスタートを待ちましょう。
マラソン初心者がサブ5を達成するために

この記事では、マラソン初心者がサブ5を達成するための方法を、目標設定の考え方から具体的な練習メニュー、アイテム選び、そしてレース本番の戦略に至るまで、網羅的に解説してきました。
サブ5は、1kmを約7分という、決して速すぎないペースで走り続けることで達成可能な目標です。 そのためには、LSDで「歩かずに走り切る持久力」を養い、ペース走で「目標ペースを維持する感覚」を体に染み込ませることが練習の柱となります。 また、走りを支える体幹や脚の筋力トレーニングも欠かせません。
そして、自分に合ったシューズを選び、計画的にトレーニングを継続することが、怪我を防ぎ、着実に目標へ近づくための何よりの秘訣です。 レース本番では、周りに惑わされず自分のペースを守り、計画的な補給を心がけることで、トレーニングの成果を最大限に発揮できるでしょう。
フルマラソンへの挑戦は、体力だけでなく精神的な強さも求められますが、ゴールした時の達成感は格別です。この記事を参考に、あなたもぜひ「サブ5」という素晴らしい目標を達成してください。



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