マラソンを走っていると、足の痛みや疲れが気になり「自分の着地はこのままでいいのだろうか」と悩むことはありませんか。着地は走りの基本であり、効率的なエネルギーの使い方や怪我の防止に直結する非常に重要な要素です。自分に合った接地方法を身につけることで、今よりもずっと楽に、そして長く走り続けられるようになります。
この記事では、マラソンにおける着地の種類やそれぞれのメリット、具体的な改善トレーニングについて分かりやすく解説します。初心者の方からタイム向上を目指すランナーまで、今日からの練習に活かせるヒントを詳しくまとめました。正しい知識を身につけて、理想のランニングスタイルを手に入れましょう。
マラソンにおける着地の種類とそれぞれの特徴

マラソンの走行フォームにおいて、足のどの部分から地面につくかは非常に重要なポイントです。着地の仕方は大きく分けて3つのパターンがあり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。自分の現在のスタイルを知ることから始めましょう。
かかとから接地する「ヒールストライク」
ヒールストライクは、その名の通り「かかと」から地面に接する走り方です。日本の市民ランナーの中で最も一般的な着地方法と言われており、多くのランニングシューズもかかと部分のクッションが厚く設計されています。歩行の延長線上にある動きのため、初心者の方でも自然に導入しやすいのが特徴です。
この着地方法のメリットは、足首への負担が比較的少なく、ふくらはぎの筋肉を過度に使わずに済むことです。しかし、かかとから入ることで地面からの衝撃が膝や腰に直接伝わりやすいという側面もあります。また、着地の瞬間にわずかなブレーキがかかりやすいため、スピードを追求する場面では効率が落ちることもあります。
ヒールストライクをより良くするためには、足を体の前方に放り出しすぎないことが大切です。膝を軽く曲げた状態で接地することで、クッション機能を最大限に活かすことができます。自分のシューズのかかと部分が極端に削れている場合は、着地衝撃が強すぎる可能性があるため注意が必要です。
足裏全体で捉える「ミッドフット着地」
ミッドフット着地は、足の裏全体、あるいは土踏まずのあたりで同時に接地する方法です。最近の中長距離界で非常に注目されているスタイルで、衝撃を足裏全体で分散できるため、特定の部位への負担を減らすことができます。フラット着地とも呼ばれ、バランスの良い走り方が可能です。
最大の魅力は、衝撃吸収と推進力のバランスが非常に優れている点にあります。地面を面で捉えるため安定感が高まり、次の動作への移行もスムーズになります。また、ヒールストライクに比べてブレーキがかかりにくく、エネルギーを効率よく前への推進力に変えることができるのが強みです。
ただし、ミッドフット着地をマスターするには、一定の体幹の強さと足首の柔軟性が求められます。意識しすぎると足裏に力が入りすぎてしまい、逆に疲れやすくなることもあるため、リラックスした状態で自然に足が置けるようになるまで練習を重ねることが推奨されます。
つま先側で接地する「フォアフット着地」
フォアフット着地は、足の指の付け根付近(母指球あたり)から接地する方法です。世界トップクラスのアスリートに多く見られるスタイルで、地面との接触時間を短くし、高い推進力を得ることができます。バネのような動きで加速しやすいため、記録を狙うシリアスランナーに向いています。
この方法のメリットは、スピードを出しやすく、足本来のクッション機能を活用できることです。しかし一方で、ふくらはぎやアキレス腱に非常に大きな負荷がかかるという注意点があります。筋力が十分に備わっていない状態で無理にフォアフットに変えようとすると、アキレス腱炎や肉離れなどの怪我を招くリスクが高まります。
フォアフットを目指す場合は、専用のシューズ選びや、ふくらはぎの強化トレーニングが欠かせません。短距離走のように完全につま先だけで走るのではなく、あくまで「前足部から入ってすぐにかかとも軽く触れる」くらいのイメージで習得するのが、マラソンのような長距離種目では現実的です。
【着地スタイルの比較表】
| 着地タイプ | 主な接地場所 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ヒールストライク | かかと | 初心者でも安定する | 膝や腰への衝撃が強め |
| ミッドフット | 足裏全体 | 負担が分散され効率的 | 習得に少し練習が必要 |
| フォアフット | 指の付け根 | スピードが出やすい | ふくらはぎへの負担が大 |
マラソンで理想的な着地を手に入れるための姿勢

着地の形だけを意識しても、全体のフォームが崩れていては意味がありません。地面に足がつく瞬間の姿勢を整えることで、自然と最適な着地が導き出されます。ここでは、体の使い方における重要なポイントを見ていきましょう。
重心の真下で接地することを心がける
どのような着地タイプであっても、最も大切なのは「自分の重心の真下」に足を置くことです。多くのランナーがやってしまいがちな失敗が、歩幅を広げようとして足を体の前方に大きく出しすぎてしまう「オーバーストライド」です。重心より前で接地すると、地面から逆方向の強いブレーキを受けてしまいます。
重心の真下で着地ができるようになると、体重がスムーズに足に乗るため、小さな力で大きな推進力を得ることができます。感覚としては、空から吊るされているようなイメージで背筋を伸ばし、骨盤を少し前傾させるのがコツです。これにより、自然と足が適切な位置に降りてくるようになります。
練習方法としては、その場で足踏みをしてみてください。その時の足の位置が、本来の「重心の真下」です。走っている最中もその感覚を思い出し、足を前に振り出すのではなく、下に置くという意識を持つだけで、着地に伴う衝撃は劇的に軽減されます。
膝のゆとりが衝撃を吸収する
着地の瞬間に膝がピンと伸びきっていると、地面からの突き上げを直接関節で受けてしまいます。これは膝の故障の大きな原因となります。理想的な着地では、接地した瞬間に膝がわずかに曲がり、柔軟にしなる状態を作ることが求められます。膝を「クッション」として機能させることが重要です。
膝を柔らかく使うためには、太もも裏の筋肉(ハムストリングス)やお尻の筋肉を活用することがポイントです。前ももの筋肉だけに頼って走ると膝がロックされやすくなりますが、後ろ側の大きな筋肉を意識すると、膝の曲げ伸ばしがスムーズになります。これにより、着地の衝撃を筋肉で受け止め、エネルギーとして再利用できるようになります。
特に下り坂では、意識しないと膝への負担が倍増します。あえて歩幅を小さくし、膝に常に余裕を持たせることで、トラブルを防ぎながら安定して走り続けることが可能です。着地時の音が「ドスンドスン」と大きく響いている場合は、膝が硬くなっているサインかもしれません。
足首の力を抜いて「置く」感覚を大切にする
着地を意識しすぎるあまり、足首に力が入りすぎてしまうケースも少なくありません。足首を無理に固定したり、つま先を上に向ける角度を強くしすぎたりすると、筋肉が緊張してスムーズな動きを妨げてしまいます。着地の瞬間は、できるだけ足首をリラックスさせることが大切です。
理想的な接地は、無理にコントロールするものではなく、振り下ろした足が自然に地面に触れる結果として起こるものです。「足を地面に叩きつける」のではなく、「地面に足をそっと置く」という意識を持つと、余計な力が抜けて軽やかな着地になります。これが、長距離を走り抜くためのスタミナ温存にもつながります。
足首の柔軟性を高めるストレッチを日常的に行うことも効果的です。アキレス腱周りをほぐしておくことで、着地時の可動域が広がり、急激な負荷がかかっても怪我をしにくい体を作ることができます。柔らかくしなやかな足首は、あらゆる着地タイプにおいて強い味方となります。
着地に伴う怪我のリスクを最小限に抑える方法

マラソンランナーを悩ませる怪我の多くは、繰り返される着地衝撃によって引き起こされます。1キロ走るごとに、足には自分の体重の数倍の重さが数百回もかかり続けます。この負担をいかにコントロールするかが、長く走り続けるための秘訣です。
接地時間を短くして負担を軽減する
地面に足がついている時間(接地時間)が長ければ長いほど、筋肉への負荷は蓄積されます。また、接地時間が長いということは、それだけブレーキがかかっている時間も長いということです。効率的な走りを実現するためには、ポンと弾むように足を離し、接地時間を短くすることを意識しましょう。
接地時間を短くするには、ピッチ(1分間の歩数)を少し上げることが効果的です。歩幅(ストライド)を欲張らず、回転数を上げることで一歩あたりの衝撃滞留時間を減らすことができます。リズム良く走ることは、精神的なリズムを作る上でも役立ちます。
地面を強く蹴りすぎないことも重要です。蹴る意識が強すぎると足が後ろに残ってしまい、結果として次の着地までの時間が長くなってしまいます。地面からの反発を利用して、足が自然に浮き上がる感覚を養うことが、接地時間を短縮する近道となります。
自分に合わない無理なフォーム変更を避ける
「フォアフット着地の方が速くなれる」という情報を耳にして、急に走り方を変えようとする方がいますが、これには注意が必要です。現在のフォームで痛みがないのであれば、それは今のあなたの筋力や骨格に適した走り方である可能性が高いからです。急激な変更は、使っていなかった筋肉に過度なストレスを与えます。
もし着地を改善したいのであれば、少しずつ時間をかけて移行するようにしましょう。例えば、30分のジョギングのうち最後の5分だけ新しい意識を取り入れてみる、といったスモールステップが理想的です。違和感や痛みを感じたら、すぐに元の走り方に戻す勇気も必要です。
トップランナーのような走りを目指すのは素晴らしいことですが、彼らはそれ相応の基礎筋力を備えています。まずは自分の現状を認め、今の筋力で無理なく続けられる範囲で改善を加えることが、長期的な成長と怪我ゼロの両立に繋がります。
シューズの摩耗状態から癖を読み取る
普段履いているランニングシューズの裏を見てみましょう。ソールの削れ方は、あなたの着地の癖を雄弁に物語っています。左右で削れ方が極端に違ったり、一部分だけが異常にすり減ったりしている場合は、走り方のバランスが崩れているサインです。
例えば、かかとの外側が適度に削れているのは一般的ですが、内側ばかりが削れている場合は「プロネーション(足首が内側に倒れ込む動き)」が強すぎるかもしれません。これは足底筋膜炎や膝の痛みの一因となります。自分の癖を知ることで、それをサポートしてくれる機能を持ったシューズを選ぶこともできます。
ソールのクッションがヘタった状態で走り続けることも危険です。見た目は綺麗でも、クッション機能が失われたシューズは着地衝撃を吸収してくれません。走行距離500kmから800kmを目安に新調を検討し、常に足を保護できる環境を整えておきましょう。
ソールの減り方は人それぞれですが、極端な偏りは姿勢の崩れを意味します。整骨院などの専門家に見てもらうのも一つの手です。自分の足の癖を把握することで、適切なストレッチや補強運動のメニューを組み立てることができます。
理想的な着地を身につけるためのトレーニング

走りながら着地を直すのは難しいものですが、走る前のドリルや日常的なトレーニングを取り入れることで、無意識のうちにフォームが改善されていきます。足本来の機能を引き出すためのエクササイズをご紹介します。
体幹トレーニングで姿勢の土台を作る
着地が安定しない原因の多くは、実は足ではなく「上半身」にあります。体幹が弱く、走っている最中に腰が落ちたり体が左右に揺れたりすると、足はそれを補おうとして不自然な着地を強いられます。ブレない体幹こそが、安定した着地を生む土台となります。
おすすめは、定番の「プランク」や、片足で立ってバランスを取るエクササイズです。特にお尻の筋肉(大殿筋・中殿筋)を鍛えると、着地時のグラつきを抑える力が格段に向上します。週に2〜3回、数分程度の補強運動を行うだけで、走っている時の足の置きやすさが変わってくるはずです。
体幹がしっかりしてくると、腰の位置を高く保てるようになります。腰が高い位置にあると、自然と重心の真下で足を捉えやすくなり、意識しなくても理想的なミッドフット気味の着地へと近づいていきます。地味な練習ですが、その効果は絶大です。
縄跳びで「真下着地」と「バネ」を養う
着地の感覚を養うための最も手軽で効果的な方法の一つが、縄跳びです。縄跳びは、常に自分の重心の真下で接地し続けなければ跳び続けることができません。また、かかとをベタッとつけずに跳ぶため、自然と前足部から中足部での接地のコツが掴めます。
縄跳びを行うことで、足首やふくらはぎの「バネ」の機能を鍛えることもできます。着地した瞬間に地面の反発を捉え、それを上手に上に逃がす動きは、マラソンの効率的な走りにそのまま応用できます。1分間跳んで30秒休む、といったインターバル形式で取り入れてみてください。
最初は両足で、慣れてきたら片足ずつ交互に跳ぶのも効果的です。片足跳びは実際のランニングに近い負荷がかかるため、着地時のバランス感覚を研ぎ澄ますことができます。走る前のウォーミングアップとして数分行うだけでも、その後の走りの感覚が変わるでしょう。
裸足ランニングや坂道走を取り入れる
クッションの厚いシューズに頼りすぎると、足裏の感覚が鈍くなってしまうことがあります。芝生の上などの安全な場所で、たまに裸足(あるいは裸足感覚の薄いシューズ)で走ってみるのも良い経験になります。裸足でかかとから強く着地すると痛いため、体は自然に最も衝撃の少ない優しい着地を探し出そうとします。
また、坂道トレーニングも着地改善に有効です。上り坂では、物理的にかかとから着地することが難しいため、自然とフォアフットやミッドフットに近い形になります。一方、下り坂では衝撃をいかに逃がすかの練習になります。坂道は天然のコーチと言われるほど、フォーム改善に役立つ環境です。
ただし、裸足ランニングは急に行うと怪我の元になるため、あくまで「感覚を研ぎ澄ますためのドリル」として短時間にとどめてください。足裏が地面と対話する感覚を覚えることで、シューズを履いた時にもその繊細なコントロールが活きるようになります。
【着地改善ドリル集】
・プランク:体幹を安定させ、腰高フォームを維持する
・縄跳び:真下接地の感覚とリズム感を身につける
・片足立ち:着地時の左右のブレを抑える筋力を養う
・芝生ジョグ:足裏の感覚を刺激し、優しい接地を覚える
マラソン完走に向けたステップアップと着地の活用術

練習を積んでいくと、着地に対する意識も変化していきます。常に同じ着地を繰り返すだけでなく、状況に応じて使い分けることができるようになれば、完走や自己ベスト更新がグッと近づきます。
疲労が溜まった時の着地の乱れに気づく
マラソンの後半、30kmを過ぎてから足が動かなくなるのは、筋肉の疲労とともに着地が乱れることが一因です。疲れてくると腰が落ち、足が上がらなくなり、ベタベタとした「引きずり着地」になりがちです。これがさらに衝撃を増やし、悪循環を生んでしまいます。
苦しい場面こそ、一度深呼吸をして「着地位置」を再確認しましょう。少しだけ歩幅を狭めてピッチを上げ、足を体の真下に置く意識を持つだけで、足への衝撃がリセットされます。自分の足音が大きくなっていないか、耳を澄ませることも疲労時のセルフチェックとして有効です。
また、疲労を感じた時にあえて少しだけ着地のポイントをずらしてみる(ヒール気味からミッド気味へなど)ことで、使う筋肉の部位を微妙に変え、局所的な疲労を分散させるテクニックもあります。これは上級者向けですが、自分の体の声を聴きながら調整できるようになると、レース戦略の幅が広がります。
コースの状況に合わせて着地を微調整する
マラソンのコースは平坦な道ばかりではありません。上り坂、下り坂、急なカーブ、あるいは路面の硬さや滑りやすさなど、状況は常に変化します。どんな状況でも一定の着地を貫くのではなく、柔軟に対応することがエネルギーの節約になります。
例えば、急な下り坂では、ブレーキを最小限にするために普段よりやや後ろ重心を意識しつつ、足裏全体で路面を「撫でる」ような着地が適しています。逆に上り坂では、前傾姿勢を強めて前足部でグイグイと登る方が効率的です。こうした状況判断ができるようになると、無駄な消耗を避けられます。
路面が濡れていて滑りやすい時は、接地面積を広く取るミッドフット着地を意識すると安定感が増します。自分のテクニックの引き出しを増やしておくことで、どのような天候やコースであっても、自信を持ってスタートラインに立てるようになります。
自分だけの「心地よい着地」を最終目標に
世の中には多くの理論があり、「これが正解だ」と言われる手法も時代とともに変わります。しかし、最終的に一番大切なのは、あなたにとって痛みがなく、最も気持ちよく走り続けられる着地がどれか、ということです。骨格や筋力、体重、過去のスポーツ歴などは一人ひとり異なります。
理論を鵜呑みにしすぎて、自分の感覚を無視してはいけません。練習の中で「今日は足が軽いな」「今の着地はスムーズだったな」という感覚を大切に育てていってください。その感覚こそが、あなたにとっての正解への道標となります。
マラソンは長い時間をかけて自分と対話するスポーツです。着地の一つひとつを丁寧に感じることは、自分の体を知る素晴らしい機会になります。ぜひ楽しみながら、自分だけのベストな着地を見つけていってください。その先には、今まで見たことのない景色や、軽やかな走りが待っています。
マラソンの着地をマスターして完走を目指すまとめ
マラソンの着地は、ランニングのパフォーマンスと怪我の防止において極めて重要な役割を果たしています。ヒールストライク、ミッドフット、フォアフットと大きく3つのタイプがありますが、どれが絶対的な正解というわけではなく、自身のレベルや目的に合わせて選ぶことが大切です。
上達のポイントは、常に「重心の真下」で接地することを意識し、膝を柔軟に使って衝撃を逃がす姿勢を保つことです。また、体幹トレーニングや縄跳びといった基礎練習を積み重ねることで、理想の着地を支える体を作ることができます。焦ってフォームを改造するのではなく、日々の練習の中で少しずつ感覚を養っていきましょう。
自分の足裏の感覚を研ぎ澄ませ、シューズの摩耗などの客観的なデータも活用しながら、負担の少ない走り方を追求してみてください。正しい着地を身につけることができれば、マラソンはもっと楽しく、より充実したものになるはずです。一歩一歩の着地を大切に、素晴らしいランニングライフを送りましょう。



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