マラソン大会当日、予報が雨だと少し気分が下がってしまうかもしれません。しかし、適切なマラソン レインウェアを準備していれば、雨の中でも体温を維持し、最後まで快適に走り続けることが可能です。雨のレースで最も怖いのは、濡れたウェアが風に当たって体温を奪われる「汗冷え」や「低体温症」のリスクです。
この記事では、初心者からシニアランナーまで、雨の日でもパフォーマンスを落とさないためのレインウェアの選び方や、大会で役立つ着こなしのコツを分かりやすく解説します。素材の特性やメンテナンス方法を知って、雨のレースを味方につけましょう。正しい装備があれば、雨の日ならではの集中力を発揮して、自己ベスト更新も夢ではありません。
マラソン用レインウェア選びで重視すべき3つの基準

ランニング中に着用するレインウェアは、一般的な雨具とは求められる性能が大きく異なります。ただ水を防ぐだけでなく、激しい運動量に合わせた機能性が重要です。ここでは、選ぶ際に必ずチェックしたい3つのポイントを整理しました。
最も重要なのは蒸れにくさを表す「透湿性」
マラソン中にレインウェアを着用すると、ウェアの内側は自分の汗で非常に蒸れやすくなります。そこで重要になるのが、内側の水蒸気を外に逃がす「透湿性(とうしつせい)」という機能です。透湿性が低いウェアを選ぶと、雨は防げても内側が汗でびしょ濡れになり、結局体が冷えてしまいます。
数値としては、最低でも10,000g/㎡/24h以上、できれば20,000g/㎡/24h以上のものを選ぶのが理想的です。この数値が高いほど、汗をかいてもベタつきにくく、ドライな状態を保ちやすくなります。長距離を走るマラソンにおいては、防水性能と同じくらい、あるいはそれ以上に透湿性が快適さを左右すると覚えておきましょう。
長距離走行でも負担にならない「軽量性と伸縮性」
フルマラソンは数万回という腕振りや足運びを繰り返すスポーツです。そのため、レインウェアが重かったり、生地が突っ張ったりすると、知らぬ間に体力を消耗してしまいます。ランニング専用のモデルは、軽量な極薄素材を使用しているものが多く、着用していることを忘れるほどの軽さが魅力です。
また、肩周りや腕の動きを妨げない「ストレッチ性(伸縮性)」も欠かせません。生地が伸び縮みすることで、ダイナミックなフォームでもストレスなく走り続けることができます。購入前には実際に腕を振ってみたり、肩を回したりして、突っ張り感がないか確認することをおすすめします。重さは150g前後のモデルが主流で、非常に軽量化が進んでいます。
持ち運びにも便利な「コンパクトな収納力」
レースの途中で雨が止んだり、体温が上がって暑くなったりすることも珍しくありません。そんな時に、脱いだウェアを邪魔にならずに持ち運べる「パッカブル(収納)機能)」は非常に便利です。多くのランニング用レインウェアは、手のひらサイズにまで小さく折り畳める設計になっています。
ウェア自体のポケットに収納できるタイプや、専用の小さなスタッフサック(収納袋)が付いているものがあります。コンパクトにまとまれば、ランニングポーチやタイツのポケットに差し込んで走ることができるため、状況に合わせた着脱がスムーズに行えます。天候が不安定な日の練習でも、お守り代わりに携帯しやすいのがメリットです。
快適さを支えるレインウェアの素材と機能

レインウェアの性能は、使用されている素材によって大きく決まります。専門的な用語も多いですが、基本を押さえておくだけで自分にぴったりの一枚が見つかりやすくなります。代表的な素材と、知っておきたい機能について見ていきましょう。
最高峰の防水透湿性を誇る「ゴアテックス」
アウトドア界で最も有名な素材といえば「GORE-TEX(ゴアテックス)」です。非常に高い防水性と透湿性を両立しており、激しい雨の中でも内側をドライに保つ能力に長けています。特にランナー向けに開発された「シェイクドライ」という技術を用いたモデルは、表面に水を含まないため、振るだけで水滴が落ちるほど撥水性が高く、超軽量なのが特徴です。
価格は高価になりがちですが、その分耐久性も高く、長く愛用できるのが魅力です。雨のレースを何度も経験するシリアスランナーにとっては、非常に頼りになる素材と言えるでしょう。ただし、非常に薄い素材なので、枝に引っ掛けたり擦れたりするトレイルランニングなどでは取り扱いに注意が必要です。ロードのマラソンであれば、その性能を最大限に享受できます。
知っておきたい「防水」と「撥水」の決定的な違い
レインウェアを探していると「防水」と「撥水(はっすい)」という言葉をよく目にします。これらは似て非なるものです。防水は、生地の隙間から水が入り込まないように加工された状態を指し、強い雨でも浸水しません。一方、撥水は、生地の表面で水を玉のように弾く加工のことで、小雨程度なら防げますが、時間が経つと染み込んでくることがあります。
本格的な雨のレースに備えるなら、必ず「防水」機能を備えたウェアを選びましょう。撥水のみのウィンドブレーカーは、短時間の小雨や防寒用としては優秀ですが、大雨のフルマラソンでは力不足になることが多いです。以下の表で、それぞれの目安となる数値をまとめましたので参考にしてください。
| 性能の種類 | 推奨される数値の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 耐水圧(防水性) | 10,000mm 〜 20,000mm以上 | 大雨でも水を通さない能力 |
| 透湿性(蒸れにくさ) | 10,000g 〜 20,000g/㎡/24h以上 | 汗の蒸気を外に逃がす能力 |
熱を逃がす「ベンチレーション機能」の有無を確認
素材の透湿性だけでは追いつかないほど汗をかく場合、物理的に空気を入れ替える「ベンチレーション(換気口)」が役立ちます。背中や脇の下、脇腹あたりにスリットやメッシュが配置されており、走りながら新鮮な空気を取り込んで熱を逃がす仕組みです。ジッパーで開閉できるタイプもあり、暑さに応じて調整が可能です。
ベンチレーションがあると、ウェアの内側の温度が上がりすぎるのを防げるため、夏場の雨レースなどでも快適に過ごせます。ただし、スリット部分から雨が入り込まないよう、フラップ(雨除けの布)が付いているものを選ぶのがポイントです。高機能なウェアほど、この換気システムが工夫されており、蒸れを最小限に抑える設計がなされています。
マラソン大会でのレインウェア着用マナーとコツ

練習とは違い、マラソン大会には独自のルールやマナーがあります。特に雨の日は、周囲への配慮やゼッケンの視認性など、気をつけるべき点がいくつかあります。大会当日をスムーズに迎えるための活用術を紹介します。
ゼッケンが見える「透明・半透明タイプ」の選び方
多くのマラソン大会では、安全管理や記録計測のために「ゼッケン(アスリートビブス)が外から見えること」がルールとして定められています。せっかく高性能なレインウェアを着ていても、ゼッケンが隠れてしまうとスタッフから注意を受けたり、応援の人があなたを見つけられなかったりします。そのため、透明や半透明の素材を使用したレインウェアを選ぶのが賢明です。
もし、お気に入りのウェアが不透明な場合は、ウェアの上にゼッケンを付け替える必要があります。しかし、防水生地に安全ピンで穴を開けるのは、防水性能を損なうためおすすめできません。ゼッケン留めクリップを活用するか、最初からゼッケンが透けて見えるクリアカラーのランニング専用モデルを用意しておくと、余計な手間がかからず安心です。
スタート前の冷えを防ぐ「使い捨てポンチョ」の活用
大きな大会では、スタートラインに並んでから号砲が鳴るまで30分から1時間ほど待機することがあります。雨に打たれながら立ち止まっていると、急激に体温が奪われ、走り出す前に体力を消耗してしまいます。こうした場面で役立つのが、100円ショップなどで手に入る「使い捨てのビニールポンチョ」です。
スタート直前までポンチョで体を守り、走り出して体が温まったタイミングで脱ぎ捨てるのが定番の対策です。ただし、脱いだポンチョはコース上に捨てず、必ずコース脇のゴミ箱や給水所のゴミ捨て場に捨てるのがランナーとしてのマナーです。足元が悪い中でコース上にビニールが落ちていると、後続のランナーが滑って転倒する恐れがあり非常に危険ですので注意しましょう。
走行中の体温変化に合わせた「着脱のタイミング」
走り始めは寒く感じても、数キロ走れば体温は上昇します。レインウェアを着たままだとオーバーヒートして大量の汗をかき、逆に脱水や冷えを招く原因になります。基本的には、「少し肌寒いかな」と感じるくらいが走るにはちょうど良い温度感です。雨が小降りになったり、体が温まってきたら、フロントジッパーを開けて風を通し、それでも暑ければ脱いで腰に巻くかポーチに収納しましょう。
逆に、後半になってペースが落ちてくると、再び体温が下がり始めます。疲労が溜まっている時に雨に打たれると一気に足が止まってしまうこともあるため、無理に脱ぎっぱなしにせず、冷えを感じたらすぐに再着用してください。このこまめな体温調節こそが、完走への近道となります。
レース当日の雨対策チェックリスト
・ゼッケンは外から見える状態になっているか?
・スタート待機用の使い捨てポンチョは用意したか?
・脱いだウェアを収納するポーチやスペースはあるか?
・ゴミは決められた場所に捨てる準備ができているか?
レインウェアと併用したい雨対策のサブアイテム

レインウェア単体でも十分な効果がありますが、他のアイテムと組み合わせることで雨の日の不快感をさらに軽減できます。頭から足先まで、細部にわたる対策を行うことで、集中力を切らさずに走り抜くことができます。
視界を確保するための「ツバ付きランニングキャップ」
雨の日のランニングで最もストレスになるのが、目元に雨粒が入ることです。特にコンタクトレンズを使用している方や、視界が遮られることを嫌うランナーにとって、「ツバ付きのランニングキャップ」は必須アイテムと言えます。キャップのツバが屋根のような役割を果たし、顔に直接当たる雨を防いでくれます。
レインウェアのフードを被る際も、その下にキャップを被ることでフードのズレを防止し、視界を広く保つことができます。キャップ自体も撥水性のある素材を選ぶと、水分を吸って重くなるのを防げます。最近では、後頭部がメッシュになっていて蒸れにくいタイプや、耳までカバーできる防寒性の高いモデルもありますので、季節に合わせて選びましょう。
指先の冷えと滑りを防ぐ「防滴仕様のグローブ」
雨で手が濡れると、指先がかじかんで補給食の袋が開けられなくなったり、スマートフォンの操作ができなくなったりします。また、冷えは末端から全身に伝わるため、手の保温は重要です。雨の日には、防水透湿素材を使用した「レイングローブ」や、濡れても保温力を失わないメリノウール素材のインナーグローブが役立ちます。
さらに、ビニール手袋を軍手などの上に重ねるだけでも、簡易的な防水・防風対策として効果を発揮します。雨がひどい時は、手が濡れたままだと皮膚がふやけてしまい、些細な擦れで痛みを感じることもあります。しっかり保護することで、後半の給水やエネルギー補給をスムーズに行えるようにしておきましょう。
肌の擦れと冷えを防止する「ワセリンやボディオイル」
ウェアの工夫だけでなく、肌そのものに保護膜を作ることも有効な雨対策です。雨でウェアが濡れると、肌との摩擦が強くなり、股擦れや脇擦れ、足のマメができやすくなります。これらを防ぐために、あらかじめ「ワセリン」や「スポーツ用皮膚保護クリーム」を念入りに塗っておきましょう。
また、脚や腕などの露出している部分にボディオイルを塗っておくと、水を弾く「油膜」ができて肌への直接的な浸水を防ぎ、気化熱による体温低下を緩やかにしてくれます。特に気温が低い冬の雨レースでは、このひと手間が大きな差となります。ドラッグストアなどで手軽に購入できるアイテムですので、ぜひ試してみてください。
雨の日は足元のマンホールや白線が非常に滑りやすくなっています。レインウェアで上半身を保護しても、足元で転倒しては元も子もありません。普段よりも歩幅を少し狭め、慎重な着地を心がけることが安全に完走するポイントです。
走行後のアフターケアでレインウェアを長持ちさせる

高機能なレインウェアは決して安い買い物ではありません。レースで酷使した後は、適切なお手入れをすることで、その性能を数年にわたって維持することができます。「雨で洗われたから大丈夫」と放置せず、正しいメンテナンスを行いましょう。
洗濯機で丸洗いしても大丈夫?正しい洗濯の手順
多くの人は「レインウェアは洗うと防水が落ちる」と考えがちですが、実は「こまめに洗うこと」が性能維持には不可欠です。ウェアの表面に付着した汗の塩分や皮脂、道路の泥汚れなどが、透湿性を妨げる原因になるからです。ほとんどのランニング用レインウェアは家庭用の洗濯機で洗えますが、必ず事前に「洗濯表示タグ」を確認してください。
洗う際は、ジッパーやベルクロ(マジックテープ)をすべて閉め、洗濯ネットに入れます。洗剤は香料や柔軟剤を含まない「液体洗剤」か「アウトドア専用洗剤」を使用してください。柔軟剤は撥水剤の性能を低下させてしまうため厳禁です。すすぎは念入りに行い、洗剤成分が生地に残らないようにすることが、高い機能を保つ秘訣です。
低下した撥水性能を復活させる「熱処理」の方法
使い続けているうちに、表面で水が玉にならなくなってきたと感じたら、それは「撥水性」が低下しているサインです。この撥水性は、熱を加えることで復活することがあります。洗濯して乾かした後に、「乾燥機に20分ほど入れる」か、「低温のアイロンをあて布越しにかける」のが効果的です。
熱を加えることで、生地表面の細かな樹脂の起毛が再び立ち上がり、水を弾く力が蘇ります。これでも撥水が戻らない場合は、市販の撥水スプレーや、つけ置きタイプの撥水剤を使用しましょう。ただし、スプレーを使用する際は必ず屋外で行い、吸い込まないように注意してください。メンテナンスをしっかり行うことで、雨の日でも常に新品に近い状態で走り出すことができます。
生地を傷めないための「陰干しと保管場所」の注意点
洗濯が終わった後は、直射日光を避けて「風通しの良い場所で陰干し」をします。紫外線は生地の劣化を早めるため、長時間外に干しっぱなしにするのは避けましょう。また、濡れたまま放置すると、生地の内側でカビが発生したり、防水コーティングが剥がれる「加水分解」という現象が起きやすくなったりします。
保管する際も、なるべく付属の収納袋に入れっぱなしにせず、ハンガーに吊るしてクローゼットなどの湿気の少ない場所に保管するのが理想的です。コンパクトに畳んだ状態は、生地に折り癖がつきやすく、そこから劣化が始まることがあるからです。次に使う時まで大切に保管しておくことで、いざという時のパフォーマンスを支えてくれます。
マラソン レインウェアを正しく選んで快適に走ろう
雨のマラソンを快適に楽しむためには、自分の走力や天候に合ったマラソン レインウェアを選ぶことが最初の一歩です。最も大切なのは、外からの雨を防ぐ「防水性」と、内側の汗を逃がす「透湿性」のバランスを見極めることです。さらに、レース当日はゼッケンの視認性やスタート前の防寒対策など、実戦的な工夫を組み合わせることで、どんな悪天候でも自信を持ってスタートラインに立てるようになります。
高機能なウェアは、単なる雨具ではなく、あなたの体温を守りパフォーマンスを最大限に引き出してくれる頼もしいパートナーです。使用後のこまめな洗濯と乾燥機やアイロンによる熱処理を忘れずに行い、お気に入りの一着を長く愛用してください。この記事で紹介した選び方と活用術を参考に、雨のレースも笑顔でゴールを目指しましょう。




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