「フルマラソンに挑戦したいけど、どれくらいのタイムで走ればいいの?」「練習しても本当に42.195kmも走れるようになるか不安…」
マラソンへの挑戦を決意したものの、タイムに関する悩みや完走への不安を抱えている初心者ランナーは多いのではないでしょうか。初めてのフルマラソンでは、自分の実力がどの程度なのか、どのような目標を立てれば良いのか、見当もつかないのは当然のことです。
この記事では、そんなマラソン初心者の皆さんのために、平均タイムの目安から具体的な目標設定の方法、そして目標達成に向けた効果的な練習メニュー、さらには大会本番で力を発揮するための戦略まで、網羅的に解説します。この記事を読めば、タイムへの漠然とした不安が解消され、自信を持ってスタートラインに立つための具体的な道筋が見えてくるはずです。
マラソン初心者の平均タイムはどれくらい?

フルマラソンへの挑戦を決めた初心者がまず気になるのは、「他の人はどれくらいのタイムで走っているんだろう?」ということではないでしょうか。自分の立ち位置を知ることで、現実的な目標設定がしやすくなります。ここでは、マラソン初心者の平均的なタイムや、タイムよりも大切な目標について解説します。
まずは知っておきたい!マラソン初心者の平均タイム
フルマラソン全体の平均タイムは、男性が4時間37分前後、女性が5時間6分前後と言われています。 しかし、これは経験豊富なランナーも含まれた数字です。マラソン大会の制限時間は6時間または7時間に設定されていることが多く、まずはこの時間内での完走を目指すのが一般的です。
初めてフルマラソンに挑戦するランナーの多くは、5時間から6時間台で完走します。 そのため、初心者の場合、男性は5時間前後、女性は5時間30分前後を最初の目安と考えると良いでしょう。もちろん、これはあくまで目安であり、個人の体力や練習量によって大きく変わります。大切なのは、平均タイムに一喜一憂するのではなく、自分自身のペースで着実に力をつけていくことです。
【男女・年代別】マラソン初心者のタイム目安
マラソンのタイムは、性別や年齢によっても傾向が見られます。一般的に、男性の方が女性よりも平均タイムは速い傾向にあります。 また、年代別に見ると、意外にも市民ランナーの平均タイムのピークは40代前半から中盤というデータもあります。 これは、20代は楽しみながら走るファンラン層が多いのに対し、40代以上は自己記録の更新を目指して熱心にトレーニングに励むランナーが増えることや、仕事や家庭生活が安定し、トレーニングに時間を確保しやすくなることなどが理由として考えられます。
ある調査では、全年代の平均タイムは男性が4時間34分20秒、女子が4時間58分16秒でした。 年代別の平均タイムを見てみると、男女ともに40代が最も速いタイムを記録しています。 このように、年齢を重ねてからでも十分に記録を狙えるのがマラソンの魅力の一つです。自分の性別や年代に近いランナーのタイムを参考にしつつ、無理のない目標を設定しましょう。
タイムよりも大切な「完走」という目標
初めてのフルマラソンで最も重要な目標は、タイムを気にすることなく、まずは「完走」することです。 42.195kmという長い距離を自分の足で走り切るという経験は、何物にも代えがたい達成感と自信を与えてくれます。多くのマラソン大会では、制限時間が設けられており、その時間内にゴールすれば完走者として認められます。
特に初心者のうちは、タイムを意識しすぎて序盤からペースを上げすぎ、後半に失速してリタイアしてしまうケースが少なくありません。まずは制限時間内にゴールすることを目標に、余裕を持ったペースで走ることが大切です。 途中で歩いてしまっても構いません。大切なのは、最後まで諦めずにゴールを目指す気持ちです。一度完走を経験すれば、次はタイムを縮めようという新たなモチベーションも湧いてくるでしょう。
初心者向けマラソンの目標タイム設定のコツ

完走という大きな目標を立てたら、次に取り組みたいのが具体的な目標タイムの設定です。明確なタイムを設定することで、日々の練習計画が立てやすくなり、モチベーションの維持にも繋がります。 ここでは、初心者でも無理なく達成できる目標タイムの見つけ方や、一般的な指標について解説します。
無理なく達成できる目標タイムの見つけ方
自分に合った目標タイムを設定するには、現在の自分の走力を客観的に把握することが重要です。一つの方法として、10kmやハーフマラソンなどの短い距離のレースに出てみたり、自分でタイムを計測してみることが挙げられます。 例えば、ハーフマラソンのタイムを2.5倍から3倍したものが、フルマラソンの予測タイムの一つの目安とされています。
また、「クーパーテスト」と呼ばれる12分間走も有効です。 これは12分間でどれだけの距離を走れるかを計測し、その結果からフルマラソンのタイムを予測する方法です。 このように、短い距離での走力からフルマラソンの目標タイムを算出することで、現実的で達成可能な目標を設定しやすくなります。まずは無理のない目標を立て、達成できたら少しずつ目標を上げていくのが成功の秘訣です。
サブ4、サブ5とは?目標タイムの一般的な指標
マラソンの世界では、目標タイムを示す際に「サブ〇」という言葉がよく使われます。 これは「~より下」を意味する英語の「sub」に由来し、例えば「サブ4(サブフォー)」は4時間未満、「サブ5(サブファイブ)」は5時間未満で完走することを意味します。
多くの市民ランナーにとって、まず目指すべき目標とされるのが「サブ5」です。 サブ5を達成するには、1kmあたり約6分50秒~7分程度のペースで走り続ける必要があります。 さらに上のレベルである「サブ4」は、市民ランナーにとって一つのステータスとも言われ、達成するには1kmあたり5分30秒~5分40秒のペースが求められます。 このように、具体的なタイムの壁を目標にすることで、練習にもより一層熱が入るでしょう。
練習ペースから本番のタイムを予測する方法
日々の練習でのペースも、本番の目標タイムを設定する上で重要な指標となります。普段のジョギングが1kmあたり7分ペースで無理なく走れるのであれば、フルマラソンでは少しペースを落として、1kmあたり7分30秒~8分程度で走ることを想定し、そこから目標タイムを計算することができます。
例えば、1kmを8分ペースで走ると、42.195kmを完走するのに約5時間37分かかります。給水やトイレ休憩の時間も考慮すると、6時間以内での完走が現実的な目標となるでしょう。 逆に、目標タイムから逆算して、練習で維持すべきペースを把握することも大切です。例えばサブ5を目指すなら、1kmを6分50秒ペースで走る練習を取り入れるなど、目標と練習を連動させることで、より効果的に走力を高めることができます。
マラソン初心者がタイムを縮めるための練習法

目標タイムが決まったら、いよいよ本格的なトレーニングの開始です。やみくもに走るだけでは、効果的にタイムを縮めることは難しいだけでなく、怪我のリスクも高まります。ここでは、マラソン初心者が着実に走力をつけ、タイムを向上させるための基本的な練習方法を段階的に紹介します。
基礎を作る!ウォーキングとジョギングの始め方
普段運動習慣がない方は、いきなり長距離を走るのではなく、まずはウォーキングから始めるのがおすすめです。 30分程度のウォーキングから始め、徐々に時間を延ばしていきましょう。運動する習慣が身についたら、次はウォーキングとジョギングを交互に行います。 例えば、「5分歩いて5分走る」を数回繰り返すなど、体に過度な負担をかけずに走ることに慣れていくことが大切です。
ジョギングに慣れてきたら、30分間続けて走ることに挑戦してみましょう。 ここでのポイントは、息が弾む程度で、隣の人と会話ができるくらいの楽なペースを保つことです。 この段階ではスピードは意識せず、まずは長い時間動き続けるための基礎体力を養うことを目的とします。この地道な土台作りが、後のタイム向上に繋がっていきます。
距離を伸ばす「LSD(ロング・スロー・ディスタンス)」トレーニング
フルマラソンを走り切るためには、何よりも長い距離を走るための持久力が必要です。 その持久力を効率的に養うのに効果的なトレーニングが「LSD(Long Slow Distance)」です。 LSDはその名の通り、「長く」「ゆっくり」「距離を走る」トレーニングで、おしゃべりしながら走れるくらいの非常にゆっくりとしたペースで、90分から180分といった長い時間走り続けます。
このトレーニングの目的は、スピードを上げることではなく、長時間動き続けることで心肺機能を高め、マラソン後半でばてないための脚筋力(特に遅筋と呼ばれる持久力に優れた筋肉)を鍛えることです。 また、ゆっくり走ることで着地時の衝撃が少なく、怪我のリスクを抑えながらトレーニング量を確保できるというメリットもあります。 さらに、LSDは脂肪をエネルギーとして使う能力を高める効果も期待できるため、ダイエットにも効果的です。
スピードを上げる「ペース走」と「インターバル走」
持久力の基礎ができてきたら、次に取り組みたいのがスピード強化のトレーニングです。代表的なものに「ペース走」と「インターバル走」があります。
「ペース走」とは、目標とするレースペースか、それより少し速いペースで一定の距離を走る練習です。 例えば、サブ4を目指すなら、本番のレースペースである1km5分40秒よりも少し速いペースで5km~10km走ります。この練習により、目標ペースを体に覚えさせ、スピード持久力を高めることができます。
一方、「インターバル走」は、速いペースで走る「急走期」と、ジョギングやウォーキングで息を整える「緩走期」を交互に繰り返すトレーニングです。 例えば、「1kmを全力に近いペースで走り、その後3分間のジョギングで回復する」というセットを数回繰り返します。 この練習は心肺機能に高い負荷をかけるため、最大酸素摂取量(VO2Max)を高め、より速いスピードで楽に走れるようになる効果が期待できます。 ただし、体への負担も大きいため、週に1回程度、無理のない範囲で取り入れるのが良いでしょう。
継続は力なり!効果的な練習頻度と休息の重要性
マラソンのトレーニングで最も大切なのは、無理なく継続することです。週に2〜3回の練習を目安に、自分のライフスタイルに合わせて計画を立てましょう。例えば、「平日に1回30分〜60分のジョギング、週末に1回LSDやペース走」といった組み合わせが考えられます。
そして、練習と同じくらい重要なのが「休息」です。トレーニングによって傷ついた筋肉は、休息をとることで修復され、以前よりも強くなります。これを「超回復」と呼び、走力を向上させるための重要なプロセスです。疲労が溜まった状態で練習を続けると、パフォーマンスが低下するだけでなく、怪我の原因にもなります。 練習日だけでなく、しっかりと休息日を設けることを忘れないでください。体からのサインに耳を傾け、痛みや違和感がある場合は無理せず休む勇気も必要です。
大会本番で目標タイムを達成するための戦略

どれだけ念入りに練習を積んでも、大会当日の戦略次第で結果は大きく変わってきます。特に初心者は、レースの雰囲気や緊張感から、普段通りの走りができなくなることも少なくありません。ここでは、大会本番で練習の成果を最大限に発揮し、目標タイムを達成するための戦略を具体的に解説します。
失敗しない!レース当日のペース配分
フルマラソンで最も陥りやすい失敗が、序盤のオーバーペースです。 スタート直後は高揚感から周りのランナーにつられてペースを上げてしまいがちですが、これが後半の失速に繋がります。 理想的なペース配分は、最初から最後まで同じペースで走る「イーブンペース」か、前半を抑え気味に入り、後半にペースを上げる「ネガティブスプリット」です。
特に初心者の場合は、前半は目標ペースよりも1kmあたり10秒〜15秒ほど遅いペースで入るくらいの余裕を持つことをお勧めします。 体力に余裕を持たせておくことで、30km以降の「マラソンの壁」と言われる失速を防ぎやすくなります。 事前に自分の目標タイムから1kmごとの通過タイムを計算し、ペース表を作成して携帯するのも良い方法です。冷静に自分のペースを守り抜くことが、目標達成への近道です。
エネルギー切れを防ぐ給水・補給食のポイント
42.195kmを走りきるためには、約2500kcalものエネルギーが必要とされ、体内に蓄えられるエネルギーだけでは到底足りません。 走行中にエネルギーが枯渇してしまうと、「ハンガーノック」と呼ばれる低血糖状態に陥り、急に力が入らなくなってしまいます。 そうならないためにも、レース中の計画的なエネルギー補給が不可欠です。
ほとんどの大会では、コース上に給水所や給食所(エイドステーション)が設けられています。給水は喉が渇いたと感じる前、5kmごとなど、こまめに摂ることが重要です。 また、エネルギー補給には、吸収が速く携帯しやすいジェルタイプの補給食がおすすめです。 1時間に1回、または10kmごとなど、自分なりのタイミングを決めて摂取しましょう。 レース前にいくつかの種類を試しておき、自分に合ったものを見つけておくことも大切です。
当日のコンディションを整える食事と睡眠
レースで最高のパフォーマンスを発揮するためには、前日からのコンディション調整が非常に重要です。食事については、エネルギー源となる炭水化物を多めに摂る「カーボローディング」が有効です。 レースの3日前くらいから、ご飯やパスタ、パンなどの炭水化物を中心とした食事を心がけましょう。ただし、前日に食べ慣れないものや、消化に悪い脂っこいもの、食物繊維の多いものを食べるのは避けるべきです。
睡眠も非常に重要です。レース前日は緊張して寝付けないこともあるかもしれませんが、最低でも6〜8時間の睡眠を確保するようにしましょう。 質の良い睡眠は、疲労回復を促し、当日の集中力を高めてくれます。就寝前にスマートフォンやパソコンを見るのは避け、リラックスできる環境を整えることが大切です。 当日の朝食は、スタートの3〜4時間前までに、消化の良いおにぎりやパン、バナナなどを済ませておきましょう。
まとめ マラソン初心者がタイムを意識して楽しむために

この記事では、マラソン初心者がタイムとどう向き合い、目標を達成していくかについて、多角的に解説してきました。
まず、初心者の平均タイムは5時間から6時間台であり、性別や年代によっても目安は異なりますが、何よりも大切なのはタイムに捉われず「完走」を目指すことでした。
次に、具体的な目標タイムの設定方法として、短い距離のタイムから予測したり、「サブ5」といった共通の指標を参考にしたりする方法を紹介しました。 明確な目標は、練習のモチベーションを高めてくれます。
そして、目標達成のための練習法として、基礎を作るウォーキングやジョギングから始め、持久力を養う「LSD」、スピードを上げる「ペース走」や「インターバル走」を段階的に取り入れることの重要性を説明しました。
最後に、大会本番で力を発揮するための戦略として、冷静なペース配分、計画的な給水・補給、そして前日からの食事と睡眠がいかに大切かをお伝えしました。
マラソンは、自分自身と向き合うスポーツです。タイムはあくまで一つの指標であり、最も大切なのは、目標に向かって努力する過程を楽しみ、ゴールした時の達成感を味わうことです。この記事で得た知識を参考に、あなた自身の素晴らしいマラソンへの一歩を踏み出してください。



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